バーニー・サンダースとなり、共和党議員を蹴散らすマリオ風無料ゲーム『Super Bernie World』Steam/itch.ioで配信中。ラスボスはトランプ
米国大統領選挙に向けた民主党予備選が繰り広げられる中、Steam/itch.ioにて『Super Bernie World』という「政治的レトロゲーム」が無料配信された。『Super Mario World』……ではなく『Super Bernie World』は、やたらと跳躍力の高い「Bernie」というキャラクターを動かす2Dアクションゲーム。「USA」にある11州およびコロンビア特別区を旅し、コインのかわりに票を集め、城に住まう4人の共和党員を倒し国を解放するのだ。4人の共和党員とは、テッド・クルーズ、ジム・ジョーダン、ミッチ・マコーネル、そしてワシントンD.C.で待ち構えるドナルド・トランプ大統領のことである。
赤い帽子をかぶったトランプ支持者らしきクリボー風の敵や、ミッチ・マコーネル上院院内総務風のノコノコらしき亀、ICE(Immigration and Customs Enforcement:米国の移民・関税執行局の略と思われる)キラー。そして、どうみても悪だくみしていそうな顔つきの共和党員らを踏み倒しながらステージを突き進むBernie。バーニー・サンダース上院議員が代表するバーモント州の名産チェダーチーズ(効果:巨大化)や、社会民主主義の象徴でもある赤薔薇(効果:火の玉……ではなく薔薇を投げる)、サンダース議員のスローガン「Not Me. Us」の力(効果:一時無敵化)を借り、大統領の座を奪取せよ。全12ステージから構成されており、プレイ時間は30分~1時間ほど。全8種類の敵が登場する。
ゲームを立ち上げると、真っ先に「このゲームは投票を促すために作られたものです。有権者を教育し、政治的活動に関心を抱いてもらうため、著名政治家の描写および彼らの実際の発言を含んでいます。ゲームを楽しんでくれたあとには、あなたの選んだ候補者を現実世界でサポートしてください」というメッセージが表示される。とはいえ、ゲーム内で「バーニー・サンダースに投票をお願いします」とも明記されているように、収録されている発言はバーニー・サンダース議員を支持する意向で取捨選択されたものと捉えてよいだろう。作中での共和党員やドナルド・トランプ大統領の扱いはひどいものだ。
本作を制作したのは、「LGBTインクルーシブなゲームスタジオ」を称するKitsune Games。2月には、スタジオとしてバーニー・サンダース議員を支持するとの声明を出している。サンダース議員が掲げるユニバーサルヘルスケア(国民皆保険)は、フリーランスや自営業としてゲーム開発に従事している者、ヘルスケアを受けづらいLGBTQ+コミュニティの者まで、幅広い層にとって重要な政策であるとKitsune Gamesは賛同の意を示していた。そのほか、学生ローンの免除、貧富格差是正、トランスジェンダーの権利保護、地球温暖化対策としてのグリーン・ニューディール法案支持といった、サンダース議員の主義・政策を広く支持している。
ゲーム内では、そうしたサンダース議員の主張に関連した共和党員の発言が盛り込まれている。テッド・クルーズ議員の「国民のためにヘルスケアを届けることは政府の仕事だとは思いません。それは各個人の仕事だと考えています」という発言であったり、上院多数派のリーダーであるミッチ・マコーネル議員の「私のことは死神だと思ってくれ」という発言であったり(*ユニバーサルヘルスケアやグリーン・ニューディールなどは、マコーネル議員いわく“社会主義”法案であり、大統領選挙のある2020年以降も自身が多数派リーダーの座に残っているのであれば、そうした法案は上院を通ることはないという発言意図)。そうした発言と対比するように、サンダース議員の「国民皆保険は、米国におけるヘルスケアのコストを年間4500億ドル削減し、6万8000もの人々の命を救います」「たわごとを我慢するのは得意ではありません」といった発言がピックアップされている。
"I don't tolerate bullshit terribly well" – @BernieSanders #TheWeeklyNYT pic.twitter.com/SKN48EkAPv
— People for Bernie (@People4Bernie) January 20, 2020
バーモント州選出のバーニー・サンダース議員は、中道左派の民主社会主義者としてミレニアル世代、ジェネレーションZ、ヒスパニック系、都市労働者など、幅広い層から支持されており、アーティスト・俳優の支持者も多い。小口献金を中心とした資金集めにも成功。民主党予備選ではネバダ州、カリフォルニア州で勝利したほか、ニューハンプシャー州、コロラド州、ユタ州、地元ヴァーモント州と、3月10日時点で合計6州で首位に。中道派の支持を揃えスーパー・チューズデーを征したジョー・バイデン前副大統領に比べて劣勢気味ながらも、マイケル・ブルームバーグ氏やエリザベス・ウォーレン氏が撤退したことを受け、一騎打ちの状態になっている。
若者やマイノリティ層からの支持が厚く、先日には、ノンバイナリーであることをカミングアウト済みの“SonicFox”ことDominique McLean氏が、『Mortal Kombat 11』の大会で勝利した際に「バーニーに一票を」とのコメントを残していた(Kotaku)。サンダース議員自身もTwitchチャンネルを設けたりと、支持層がいるプラットフォームに活動の範囲を広めている。ゲーム関連の話で言うと、昨年ゲーム業界の合同労組発足を支持する旨のコメントを発信していた。主張が明確であり、熱烈な支持基盤を有するがゆえに、同議員を支持するゲーム開発者が選挙支援のためにゲームを作るというのは、決して不思議な話ではないだろう。ただ、ゲーム自体はあくまでもサンダース陣営側に偏った内容であることには留意が必要だ。
バーニー・サンダース議員の支援目的で作られた『Super Bernie World』はSteam/itch.ioにて無料配信中。Windows/Mac/Linuxに対応している。