任天堂に訴訟されている海賊サイト運営者は、身を守るための資金を募り続ける。閉鎖ではなく戦う道を選ぶ
任天堂の米国法人ニンテンドー・オブ・アメリカは9月10日、カリフォルニア州中央地区連邦地方裁判所にて海外ROM配布サイトRomUniverseの運営者Matthew Storman氏らを相手に訴訟を起こした。RomUniverseでは、さまざまなゲームのROMやISOファイル、映画、電子書籍などが会員向けに配布されており、任天堂ハード向けのゲームは特に多い。同サイトには37万5000人の会員が存在するとされており、極めて規模が大きい(関連記事)。
ニンテンドー・オブ・アメリカはROM配布による著作権侵害について、一件あたり最大15万ドル(約1600万円)、RomUniverseのウェブサイトや海賊版ゲームによる商標権侵害について一件あたり最大200万ドル(約2億1500万円)の損害賠償を支払うようRomUniverseに対して求めていた。
こうしたケースでは、過去にも同じような事例が散見され、たとえばLoveROMS.comとLoveRETRO.coを運営していたJacob Mathias氏は、即座にサイトを閉鎖し、任天堂のROMやその他の素材の共有・配布を今後行わないことに同意。さらには、任天堂に対し1223万ドル(約14億円)を支払うという条件に合意している。そのほかにも訴訟されたサイトはいくつか存在するが、どの運営者も選ぶ初手は該当サイトの閉鎖である(関連記事)。
しかしながら、RomUniverseは訴訟されてから2週間が経過しても、閉鎖されていない。実は運営者のStorman氏らは、サイトを閉鎖せずに戦う道を選んだのだという。公式サイトにはデカデカと「訴訟について聞きましたか?」「RomUniverseとあなたの権利を守りたくはないですか?募金を検討してください。」といった文言が並んでいる。Discordでも「ROM、全部隠したら?」という提案に対し管理者が「隠す代わりに、立ち上がって戦うための募金はどうだ?」とコメントするなど、降参するつもりがないことを強調。運営者であるStorman氏はTorrentFreakに対し、閉鎖せず戦うというのは過去にないことであるとコメント。同時に、任天堂の脅威から身を守りきることに自信を見せていた。
そしてStorman氏はついには、自身を守るための資金を得るべく、クラウドファンディングキャンペーンを開始した。GoFundMeでは、まず10万ドル(1080万円)の資金を募る。キャンペーンの概要文では、自身が強欲であったりペテン師であることを否定。自身やそのほかの人々の権利を守るために戦っていることを強調している。資金の具体的な充てる先は不明だが、高額な訴訟費用のためだと考えられるだろう。
Discordでは、RomUniverseの姿勢を支持する声援が飛んでいるが、GoFundMeはキャンペーン開始から2日が経過しても募金はないまま。そして本日9月27日には、GoFundMeのキャンペーンサイト自体も削除されている。「ひとりの男が、世界有数のゲーム企業を相手に戦うと思いますか?戦うんですよ」と豪語していたStorman氏。RomUniverseと“自身の権利”を守るべく、このまま戦い続けるのだろうか。