アンリアルのバーチャルビーチでUE4新機能で遊ぼう!GTMF 2017大阪、Epic Games Japanセッションレポート
2017年6月30日、ゲーム向けのミドルウェアやツールをテーマにした「Game Tools & Middleware Forum 2017」(以下、GTMF2017)が大阪にて開催された。本稿ではUnreal Engine 4(以下UE4)の開発元でもあるEpic Games Japanのテクニカルアーティストのロブ・グレイ氏が講演した「アンリアルのバーチャルビーチでUE4新機能で遊ぼう!」についてを取り上げる。
より改良されたVRモード
まずロブ・グレイ氏は、UE4のVRモードについてを解説を行った。VRモードとは、UE4のエディタの操作がOculus RiftやHTC ViveといったVR専用ヘッドマウントディスプレイを用いることでVR上で利用できるというものである。VRモードはこれまでのUE4でも利用できていたものだが、最新バージョンであるUE4.16からは更なる改良が加えられている。以下よりVRモード=VRエディタとして解説していく。
VRエディタのUI表示は改善され、より直感的に操作が可能となった。ロブ・グレイ氏によると、VRモードを使用するユースケースとして最も考えられる例となるのがレベルのレイアウトやプレイテストをしながら編集、そして最終的な調整をするために用いることがあるとのこと。
VRモードを利用するには新たにツールバーへ追加されている「VR Mode」ボタンを押すことで開始が可能で、キーボードショートカットによるトグル切り替えも可能とのこと。
更にエディタ設定から設定することにより、HMDをかぶることで自動的にVRモードとデスクトップモードへ切り替わる機能も搭載されている。HMDをかぶるだけで自然とVRモードへ切り替わるので、煩わしい操作も必要なくなり、より開発に専念できる。
実演によるVRモードでのデモ
ここからロブ・グレイ氏実演によるVRモードのデモが入るが、デモに入る前にロブ・グレイ氏から注意が行われた。VRは実際にVRにいない人がその画面を観ているだけでも十分に酔ってしまう可能性があるからである。デモする側もなるべく頭を動かしすぎないなどの配慮があるが、それでも酔う人は酔ってしまうのである。
ここからは実際にロブ・グレイ氏がVRモードでUE4のエディタを操作し、さまざまな実演を行ってくれた。ちなみに公演中は当然HMDをかぶっているので、周りの姿も見えない状態で講演が進む。もし講演の最中に突然トラブルが起きてもそれに気づけないので、当然実演を行っている本人も相当ハラハラとしていたはず。
実際にVRモードを起動し、まずロブ・グレイ氏はVRモードの基本操作を説明していた。今回利用していたのはOculus RiftとOculus Touchの組み合わせとなっている。Oculus Touchを両手に広げ、トリガーを押しながら引いたりといった操作を行うと、VR空間全体に対して自分の大きさが変わる。これによりVR空間全体をすぐに把握することが可能で、ミニチュアのような世界を見ている気分となる。
自分の大きさを自由に変更することで、より空間を高速に移動できる。細かく移動したい場合には自分が小さくなることでより細かい単位での移動も可能となる。またテレポートによる瞬間移動も可能で、VR空間内を自由に移動できるよう、さまざまな手段が用意されているようだ。
この後はVRモードでのターゲット選択の改善についてのデモが行われた。以前のVRモードではポインタが常に一定の向きを向いており、手ブレの発生により細かい調整が行いにくかった。それをゴムのようにしなるようなポインタにしたことで、細かい手ブレが発生しても位置調整などが行いやすくなった。基本的にはひとつのポインタを操作するが、操作によってはふたつのポインタを同時に出現させて、操作を行う場合もあるとのこと。また左利きユーザーのために、設定から左利きモードも用意されている。
次にVRモードでの選択動作や移動操作の改善について。以前はトリガーの半押しを行わないと選択できなかったのが、今は普通に押すと選択、更にもう一度押すと移動を行うことができる。更にUndoとRedoといった比較的よく行う操作についてはスティックを左右どちらかに倒すだけで可能となっている。
この後にVRモード上でコンテンツブラウザを表示し、そこから取り出されたのがロブ・グレイ氏を実際に3Dスキャンして取り込んだと思われる3Dモデルが配置され、会場内も笑いの渦に包まれた。ロブ・グレイ氏は過去にも自身をスキャンした3Dモデルをデモ中に登場させたりと、常にウケを狙う関西人のようなところがあり、聴いている側としても非常に楽しい。
次はポップアップメニューについて。このポップアップメニューの特徴として、UE4のエディタのさまざまなツールにすぐアクセスできるようにさまざまな配慮が行われている。またそれぞれのツールのウィンドウはVR空間上の好きな位置に配置することができるので、現実のPCのように沢山ウィンドウを表示させても360度どこでも配置できるので、あまり邪魔にならない。このポップアップメニューに対して実際に絵を描くアーティストのパレットのようだとロブ・グレイ氏も語っていた。
更に次はVRモードでのシミュレートについてを解説。VRモード上でUE4のシミュレートモードで実行した際、そのまま物理シミュレーションによる物理演算が働き、その結果で動いたものを実際に配置した結果をそのまま保存できるというもの。つまりVRモードで適当に投げたアクタが自然な動きをしたままそれがそのまま結果として反映できるのである。これにより細かい調整を行わなくても自然な配置ができるので、手間が省けるというもの。
今度はスマートスナップという機能についてを解説する。これはオブジェクトに存在するバウンディングボックスを利用することで、オブジェクトの境界に合わせて配置してくれるという機能。つまり同じパーツを配置する際に、いちいち細かい調整をしなくても自動的に同じサイズで配置してくれるのでかなりの手間が省ける。階段などの建物のパーツでは非常に有効に働く。またグリッドという単位ではなく、オブジェクトのサイズで測れるので、あらゆるサイズのオブジェクトに対して有効である。
シーケンサーを使ったリアルタイムのカットシーン編集
ここからはシーケンサーというツールを使ったVR空間上でのリアルタイムのカットシーン編集が行われた。シーケンサーは少し前のUE4に追加された、主に映像編集ソフトのような操作感でリアルタイムのカットシーンが作れるツールである。これがVRモードで追加されたというのはとりわけ大きいトピックとなっていた。
ロブ・グレイ氏はこのシーケンサーを使って簡単な動きをサクっと作成していた。ボートと先ほども登場したロブ・グレイ氏の3Dモデルが登場し、シーケンサーへと動きが追加される。
選択や移動など非常に細かい操作となるのだが、このような操作もVRモードではより自然に行えるというのは実際にデモを見ていても感じることができた。
あっという間にロブ・グレイ氏がボートに襲いかかるという演出が作られた。途中、UE4のエディタがクラッシュするなどのトラブルにも見舞われたが、その状況でもしっかりと冷静に対処し、やり遂げるのがロブ・グレイ氏のすごいところ。最終的には音声やエフェクトまで入り、非常に見ていても面白い内容となった。
メッシュペイントやモデリングといった新機能
更に話は進行し、次はメッシュペイント機能が解説された。メッシュペイントは以前のUE4にも存在していた機能ではあるが、以前はスタティックメッシュというボーンが入っていないメッシュ専用になっていたが、UE4.16からスケルタルメッシュにもペイント可能になった。また最大の違いとしてはペイントした結果はレベルに配置したアクタ単位ではなく、ベースアセット側に保存される。これにより、汎用的にメッシュペイントが利用できるようになったのだ。
実際にメッシュペイントした結果が、UE4標準で用意されたマネキン(通称Grayマン)に適用されたところ。もちろんこのままキャラクターのアニメーションを行うことも可能。VR空間でペイントしているのは、見ているだけでも楽しい。実際にペイントするだけのライブイベントがあってもいいのではないかと筆者は思う。
更に次はVR空間でのモデリング機能について。これはUE4.17のリリース版で使えるようになるかもしれない機能で、実際に簡単な3Dのモデリングを行うことが可能となる。これまでUE4にはジオメトリブラシという機能を使うことで簡易的なモデリングが可能だったが、今回は更に実用的なモデリングが可能となった。
3Dモデリングに必要な基本的な頂点編集や、挿入、押し出しといった簡単なものであるが実際に使用することができる。またサブディビジョンサーフェスによるポリゴンメッシュの規則的な面分割を行い、曲面にすることが可能となり、幅広い表現が作りやすくなる。
これらの機能はけしてMayaなどの3DのDCCツールの代わりになるものではないとのことだが、ゲームジャムやプロトタイピングといったところで短時間で作成できるのが魅力とのこと。確かにゲームジャムではプログラマーが多く、簡単にモデリングができる機能が追加されるだけでもありがたい。またこれはVRモード専用の機能ではなく、デスクトップモードでもちゃんと利用可能とのこと。
VRモードの将来の予定
最後にロブ・グレイ氏はVRモードの将来の予定について語ってくれた。最終的にはHMDを使いながら、マウスとキーボードの操作が全てできるようにしたいとのころ。逆にデスクトップモードでもOculus Touchのようなモーションコントローラーを使った操作ができるようにして、直感的な操作ができるようになればよいとのこと。
VRモードでの使用可能ツールを増やし、メッシュ編集やキャラクターのアニメーション付けを行うためのコントロールリグ機能、更にマテリアルとブループリントといったノードベースツールがVRでどのように操作するのがよいか現在も模索しているらしい。
VRモードの最終的な目標は全ての操作ができるようにしていきたいとのこと。これはEpic Gamesのボスでもあるティム・スウィーニー氏も言っている言葉である。最後にロブ・グレイ氏はVRデモをする時のアドバイスを残していたので、普段からVRでデモをしている方はぜひ参考にしていただきたい。
GTMF(Game Tools & Middleware Forum)はアプリ・ゲーム開発・運営に関わるソリューションが一堂に会するイベント。2003年にスタートし、今年で15年目。大阪会場は2017年6月30日、東京会場(事前登録受付中)は7月14日に開催。