うんこで救える命がある。ガチャ代わりの排便でプレイヤーを健康に導く、日本うんこ学会と『うんコレ』の石井洋介氏。GTMF 2016 Meeting-Ups

7月15日、「秋葉原UDX GALLERY NEXT THEATER」にてGTMF東京が開催された。大阪会場に引き続き、プレゼンイベント「Meet-Ups」に登場したプレゼンターへのインタビューを掲載する。第13弾は、日本うんこ学会を率いる人物であり、消化器外科医でもある石井洋介氏。

7月15日、「秋葉原UDX GALLERY NEXT THEATER」にてGTMF東京が開催された。大阪会場に引き続き、プレゼンイベント「Meet-Ups」に登場したプレゼンターへのインタビューを掲載する。第13弾は、日本うんこ学会を率いる人物であり、消化器外科医でもある石井洋介氏。

 

「うんこ」が人の命を救う

昨年の4月から5月にかけて「うんこ」の検索キーワード数が上昇したのなら、それは『うんコレ』と「日本うんこ学会」のせいだろう。同時期に多数のメディアに取り上げられた『うんコレ』は、消化器外科医である石井洋介氏らが中心となって開発を進めているスマホゲームだ。ゲームの舞台である「ウントピア*」の平和を守るため、美少女化された腸内細菌と共に戦う。プレイヤーがうんこをしてそれについてゲーム内で報告すれば、いわゆるガチャをせずともカードを入手できるというシステムがある。

「課金するかうんこするか」。どう見てもネタゲームに見えるかもしれないが、実は大腸がんなどの早期発見を目的にした作品だと石井氏は説明する。外科医であり大腸がんの手術も経験してきたという石井氏は、若くして症状が進行した状態で見つかった患者を何度も見つけ、悲しい思いをしてきたという。日本の検診率が低いことを克服し、大腸がんを早期に発見してもらうため、国内で流行っているBuzzワードの1つ「うんこ」をテーマにしたコンテンツ『うんコレ』が生まれたという(もう1つのBuzzワードは「おっぱい」)。

『うんコレ』では、プレイヤーが排便してそれを報告する際に、どういった状態の便だったかを伝えることになる。そうしてなにか問題があった場合には、ゲーム側から警告がでるというわけだ。

また石井氏は『うんコレ』のマネージメントコストについても語る。たとえばキャラクター製作は、石井氏が腸内細菌の論文を読むところから始まり、キャラクターの素材を作ってボランティアを中心とした絵師たちに提供している。エクセルで工程管理をしていたものの、この方法は非常にコストがかかり、そこでパートナー企業である「MUGENUP」のツール「Save Point」を使って開発を進めているという。

 

本当の学会をやりたい

――ご挨拶させていただいた時、「うんコレ」と「日本うんこ学会」をしっかり発音していたので、少しびっくりしてしまいました。

石井洋介氏:
ああ(笑)

――いつも「うんこ」としっかり言われるんですね。

石井:
そうですね。

―「うんこ学会」は、組織としてはどういう区分になるんでしょうか。

石井:
任意団体ですね。これから財団化とかを考えているんですけど、まだ今のところは。

――最近ではニコニコ超会議などに出展されているようですが、若い年代の方々からの反応はいかがでしょうか。なかなかよさそうに見えます。

石井:
そうですね。普段だったら医療情報が入らないような人たちというか、そういう方々に医療の話を提供できてるんじゃないかと。実際に検診を受けてくださった方もいるので。

――検便とかもされていましたよね。

石井:
そうですね。無料検便とかもしていて、若い人もやってくれたり。

――逆に今回のGTMFでは、若者ではなく業界に関わっている大人の方々が多かったと思います。会場での反応はいかがだったでしょうか。

石井:
プレゼン面白かったですとか言われましたね。

――Meets-Upsはかなり受けていましたね。僕も笑わせていただきました(笑)

石井:
ありがとうございます(笑)みなさん、凄いことしてますねとか言ってくれましたね。

――今回Meets-Upsに参加されたのは、やはり開発におけるパートナーシップ企業を探すためでしょうか。

石井:
そうですね。あとはパートナー企業の「MUGENUP」さんの「SAVE POINT」を実際に進捗管理なんかで使わせてもらっていて、それも含めてですね。

――なにかいい出会いはありましたか。

石井:
何社かからお声をかけていただいて、一緒にデバイスを作らないかとか、そういうお話を少しいただけましたね。

――業界全体のお話をさせてください。任天堂がエンターテイメントとQOL(クオリティオブライフ、生活の質)に着目した事業を進めていますが、そういったものは近年増えつつあるんでしょうか。

石井:
おっしゃる通りだと思います。やはり世の中すべてが健康というものに興味を持ってきているなという印象はあります。ゲームに限らず、経営者層も企業すべてが健康というものに注目して、ゲーム業界も例外ではなかったのかなと思っています。

――「うんコレ」がゲーム業界におけるそういった動きの第一号になる?

石井:
むしろ「うんコレ」は医療者側から発信しているので、医療の本場からやってきているというのが特徴だと思いますね。健康というよりも、もろに医療の部分をゲームでというかたちで。そこが少し違うというか、変なところだと思いますね(笑)

――「うんコレ」は昨年4月から5月ごろに大きな注目を浴びていましたが、それ以降、開発はどのように進んできましたか。

石井:
いまは実装を粛々と進めているところです。もともとボランティアベースでやっているものなので、何か月後にバンと出るようなものじゃないと思っています。同人ゲームというかたちなんで。

ただ、今年もイベント毎には出展する予定ではあります。ぼちぼちいい形にもなってきたので、今年中か年明けぐらいのイベントでクラウドファンディングを始めて、ランニングコストを集めようかなあとも考えています。そしてリリースができればなと。

――「日本うんこ学会」さんの話になりますが、公式サイトでは「うんモレ」なども連載されていますね。

石井:
いまは出版とかもやっていますね。ようするに、排便に関わる医療情報や啓発とかを全般的にやっているんですね。

――今後「うんコレ」や「うんモレ」以外で新たな動きはありますか?

石井:
1つはリアルイベントですね。いまは超会議に出させていただいてますけど、単独のイベントをやってみたいなと思っていまして。

――単独の「うんこ」イベント、インパクトが凄い。

石井:
(笑)もちろん医療情報を提供することも大事なんですけども、腸内細菌に関連する企業さんも増えてきているので、それが一堂に会したらけっこう面白いんじゃないかなと、1つ野望を抱いています。もう1つはリアル学会ですね。本当に学会をやるというのが1つ目標ですね。

――なかなかぶっ飛んでいると思います。トイレなどもそうですが、「うんこ」にそこまで注目する姿勢というのは、日本ならではという気もしますね。

石井:
はは(笑)でも確かにそう思いますね。Japan Timesという海外のメディアにも取材してもらったことがあるんですけど、やっぱり特殊だとみなさん言いますね。こういうところに着目するのは日本だけだと。

――今回、GTMFでお会いできなかった方もいると思います。どういうパートナーを求められているのか、あらためてお聞かせいただけますか。

石井:
基本的にはゲーム開発に関わるすべての会社を求めているんですが、ボランティアベースということもあるので。どちらかと言えば、健康に興味を持っていただいている会社はすべてウェルカムという感じです。ただとりわけ求めているものとなると、イラストレーターとか声優さんとか、近々では成果物に関わるパートナーが一番欲しいところですね。

――「うんコレ」を待っているユーザーにもメッセージをお願いします。

石井:
お待たせして申し訳ありません。趣旨としては、共感を呼んで皆さんに健康になっていただいたり、医療業務に興味を持ってもらうというものになります。ゴリゴリ大手の企業と組むとかではなくて、のんびり仲間内や協力してくれる人たちの善意でできたゲーム、それがどういう結果を残すのか僕も楽しみにしています。なので、もう少しだけ待って頂ければなと思っています。急いではいるんですが、あまりこう慌てず……とりあえずなる早で頑張ります(笑)

――ありがとうございました。

 

[聞き手・写真撮影 Shuji Ishimoto]

gtmf-profGTMF
GTMF(Game Tools & Middleware Forum)はアプリ・ゲーム開発・運営に関わるソリューションが一堂に会するイベント。2003年にスタートし、今年で14年目。大阪会場は2016年7月6日、東京会場は7月15日に開催。

 

Shuji Ishimoto
Shuji Ishimoto

初代PlayStationやドリームキャスト時代の野心的な作品、2000年代後半の国内フリーゲーム文化に精神を支配されている巨漢ゲーマー。最近はインディーゲームのカタログを眺めたり遊んだりしながら1人ニヤニヤ。ホラージャンルやグロテスクかつ奇妙な表現の作品も好きだが、ノミの心臓なので現実世界の心霊現象には弱い。とにかく心がトキメイたものを追っていくスタイル。

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