「開発からプロモーションまですべておまかせ」つくる女・統括ディレクター澤江美知さん。GTMF 2016 Meet-Ups
いよいよ明日はGTMF 2016が秋葉原UDX GALLERY NEXT THEATERで開催される。どのようなプレゼンを聞けるのか、どんなセッションがあるのか、気になる方は公式サイトをご覧いただきたい。事前登録も受付中だ。
それではGTMF 2016大阪会場Meet-Ups特集の第6弾をお届けする。今回は、謎が多いクリエイター集団「つくる女」の統括ディレクター澤江美知さんにフォーカス。
つくる女と仕事をするメリット
Meet-Upsのトップバッターを飾ったのは、女性プロクリエイター集団「つくる女(つくるじょ)」の統括ディレクター澤江美知さん。ちなみにMeet-Upsの司会を務めるアナウンサーの大河原あゆみさんも「つくる女」のメンバーである。
澤江さんはプレゼンの冒頭で、有限会社フナコシステムについての説明をし、ゲームに特化している、3DCGに特化している、などなど複数のグループ会社があることをアピールした。そして社内には「つくる女」以外にも動画やサウンドデザインなどのチームがあり、幅広いスタッフをかかえていることも付け加えた。
「つくる女」は、イラスト・3Dモデリング・衣装・ヘアメイク・シナリオなどなど幅広いジャンルのクリエイティブに対応できるという。実績としてSEGAの『モンスターギア』を紹介し、メンバーそれぞれのスキルを活かし、オープニングムービーやメインビジュアルなどを手がけたそうだ。
ほかにも、Autodeskの「Road To Stingrayプロジェクト」にアートディレクターとして参加しているなど、さまざまなお話があった。「つくる女」と仕事をするメリットを知りたい方は、東京会場にて直接話を聞くことをおすすめする。
理想は開発からプロモーションまでワンストップで
――「つくる女」とはいったい何なのでしょうか?気になって公式サイトを見ましたが、それでもわかりませんでした。
澤江美知さん:
ホームページを見てもわからないですよね(笑)
――アナウンサーさんがいたり、スタイリストさんがいたり、ますますわからなくなりました。
「つくる女」を簡単に説明すると、企画制作集団です。もともと個々に活動していたクリエイターたちが集まって作られました。コンテンツ制作やPRのやり方などでクライアントが困っていることを手助けするのがお仕事です。私達のようなモノ作り側からしか出ない新鮮な発想と同時に、プロとしてシッカリ仕事をこなす土台のある施策の両方を提案してます。見た目と違って意外とガチで総合制作をしているので、そのギャップでお客さんの満足度上がってるんじゃないか?みたいな疑惑がありますね(笑)そうやってコミュニケーションを取っていると「自分たちがやりたい事」を入れ込める余裕が出てきます。やっぱり制作は楽しくしたいので、そこを見出せるようにいつも意識しています。また、結果的に「やりたい事」が一番評価されるケースも多いです。今後は自分たち自身のコンテンツも、もっと作っていきたいです。とはいえ、ゲーム等の大規模制作になると全てを自分たちだけで作るのは難しいので、周りの大きな会社さんと一緒に今やっている事をレベルアップさせていくのが良いことなのかなとも思っています。
前置きが長くなりましたが、つくる女はまとめると「作り手の顔が見える制作会社」ですかね。野菜に農家の方の写真があったりするじゃないですか、やっぱり安心しますし、その野菜(コンテンツ)食べてみたいなって会社さんもユーザさんも思ってくれるかなって、代理店とか制作会社って自分たちがやりましたって言わないじゃないですか。それをあえて言って、その工程も見せることでそれもコンテンツ化しています。
――メンバーを集めるときは、自分たちから声をかけるんですか?
実際に仕事をして腕前が立つ女の子がいた時に「よかったら、つくる女で一緒にやってみる?」って誘う感じはあります。もちろん相性もありますし、お互いに確認してから良さそうだと感じたら・・・となんとも女の子っぽい選び方をしています。
また、青二プロダクションに所属していて「つくる女」の一員とか、つくる女という組織が軸になっているけど、別の軸もあるという子もいます。
――メンバーのみなさんを見ると、だいたいほかの仕事もされていますね。
そうそう。コミュニティみたいな感じって言うんですかね。それの半分ぐらいが、フナコ事務所にいつもいるメンバーです。
――恥ずかしながらフナコシステムさんを存じ上げておりませんでした。
そうですよね。母体はまったく関係のない会社なので。もともと10年ぐらい前に今の社長が通信系企業のインフラを整えたり、人事関連の仕事を請ける会社として立ち上げたんです。エンタメとはぜんぜん違う業務ですが、もともとクリエイターになりたいという願望があった代表(有限会社フナコシステム代表取締役 舟越靖氏)が、自分がクリエイターになれないなら、その手助けができる仕事をやりたいということで、手を差し伸べてくれました。そして人が集まってきて、今の形になりました。
――会社の規模も大きそうですね。
そうですね。社長が持つグループ企業の全貌は専門外なので把握できていませんが、社内のエンタメチームだけなら数十名、制作系全体だと結構な数いると思います。TVCMや大型イベントのような大きな仕事が入ると、それぞれの企業同士が組んだりして対応しています。
――つくる女のみなさんが仕事をするときはフナコシステムさんで?
基本はフナコシステムで請けて、同事務所内で業務をします。自宅に環境がある子はSkypeつないでやっている場合もあります。けっこうバラバラですね。常駐メンバーと言われている子はほぼ会社に来ますけど。
――『League of Legends』のアニーのMMD動画を見ました。再生回数すごいですよね。
ありがとうございます。初期で何万回とか再生してもらえましたね。
――クオリティも高くてファンの反応も良かったと思います。どれぐらいの期間で制作されましたか?
あれはファンアートなので趣味の一環で作ってるんです。なので仕事の合間合間で作ったのでたぶん3か月くらいでしょうか。途中忙しかったりしたので全体で考えると+1ヶ月くらいですかね。
――あの動画を見た会社さんから仕事の依頼がきたことは?
おかげさまで、国内だけでなく海外の大手企業からも仕事のご相談がきました。『LoL』にかんして言うと、あれを皮切りに紹介動画を作ったり、フナコのサウンドチームが「LJL」のサウンドを作らせてもらったりとかをしています。
アニーちゃんを作るまえに、プロ動画みたいなのを作ってるんですよ。つくる女のメンバーが出演して――
――実際にプレイされる動画ですね。
めっちゃ弱いのにちょっとかっこいい動画みたいな(笑)
それがきっかけで、日本ローンチがあるからアニーちゃんの動画作ろうよってなったんです。
――『LoL』をやろうと思ったきっかけは何ですか?
プロデューサーさんから「面白いよ」って教えてもらったことがきっかけです。もともとみんなゲーム好きなんで、PCもモバイルも家庭用も。最近だと『Overwatch』とか、みんな夜な夜な遊んでますね。わたしのお姉ちゃんでイラストレーターのさわえみかが一番ゲーム好きです。
――アニメとゲームのお仕事が多いようですが、CYBERJAPAN DANCERSとのお仕事があったり、なんでもされている印象が強いです。一番得意なお仕事は何ですか?
一番得意なもの……なんだろう。そこも二軸になってしまうかもしれないんですけど、開発部分のアートディレクション、UI設計、イラストからCG、アニメーション含むデザイン全般は強いですね。最近だと大型ゲームの企画から入らせてもらって、ありがたい事にヒットも出してもらっていますし、それが会社の強みになっていて別会社さんに紹介してもらったりしています。そこからつながるプロモーション、開発から入っているからコンテンツの良さが凄く良くわかるんです。私達。なので他では出せないプロモーションが合わせて出来ている所かなぁ。開発者としては適当なプロモーションをされたから売れなかったとか、逆にプロモーション側も開発者との意見が合わずに本来やりたかったプロモーションができないとかっていう問題も、私達のような「間」がいると解決できるんじゃないかなと思っています。なのでできればワンストップでやらせてもらうというのが理想で、一番強みを発揮できる状態になりますね。
――開発からプロモーションまですべて「つくる女」におまかせということですね。
そうですね。開発はお姉ちゃんの美香が立って、プロモーションはわたしが立ちます。つくる女の中でも、開発とプロモーション部隊に分かれています。
――お姉さんと喧嘩することってありますよね?
めっちゃします。
――それが仕事に影響することはないんですか?
それはまったくしないですね。つくる女みんなそうなんですけど、喧嘩というか言い合うことはよくあります。作品を作るってなったときに、あーでもないこーでもないというクリエイターのこだわりから意見が飛び交うんです。それがまとまらないこともあるけど、スケジュールをわかっているプロの女性達ばかりなので、じゃあどうやったらクライアントさんが喜んでくれて、かつ自分たちが納得できるのかをいつも話し合ってます。
――みなさん個性が強そうですね。
強いです。とっても(笑)
――Meet-Upsのプレゼンで伝え切れなかったことはありますか?
声優LINEスタンプは自分がいまメインで力を入れているコンテンツです。もともとディズニーさんのイベントの仕事をやらせてもらったんですけど、ニコニコ生放送に声優さんが登場してCDのプロモーションをするというような内容だったんですね。顔を出すコンテンツはよくあるから、ちょっと変わったことをやりたいよねってなって、そのときに声優さんの似顔絵を描かせてもらったんです。200枚ぐらいパラパラ漫画みたいに感情をぜんぶ描いて、生放送なのでこの人が笑ってこの人が怒ってるっていうのをスイッチングでやったんですよ。それがすごく評価高くて、数回で終わる予定だったのが何回も続 いて、超会議でイベントやりますとかになって。そのときの声優さんに緑川光さんがいて、イラストをすごく気に入ってくれて、天板が本人のデザインの声優パソコンを出すっていう話がきたときにイラストを描いてほしいといわれて、それだったらせっかく気に入ってくれているイラストだからいろいろな展開やっていきましょうよって話をしたのがキッカケでLINEスタンプになったんです。
それで第一弾で緑川光さんと古谷徹さんを出させてもらって、第二弾で神谷浩史さんと小野坂昌也さん、そして第三弾・第四弾と広がっていって、ようやく去年の年末にグッズ販売をして、7月からカフェをスタートしました。
――トントンという音が聞こえてきそうです。
ありがたいことに、Autodeskさんの「Stingray」で作ったゲームがあるんですけど、元ディズニーのトップモデラーで『アナと雪の女王』の3Dモデルを作った糸数弘樹さんとかハリウッドで活躍されているクリエイターさんたちと一緒に制作したんです。そういうつながりもあって、ワールドワイドで有名な声優さんたちだし、いろんな展開をしていこうよという話をしています。
――つくる女はこれから世界へ?
世界も見たいですね。アメリカ、台湾、中国、タイからのオファーも増えはじめていますので、もっと海外のお仕事も増やしたいです。単に海外行きたいっていう声も(笑)
ランキングで1位になっています。TVでもニュースで何度か紹介されました。最初はクリエイターズで出したんですけど、LINEさんが一緒にやりましょうと声をかけてくれて公式スタンプになりました。
――Meet-Upsで説明しきれなかった、つくる女のアピールポイントがあればお願いします。
イラストやデザインをはじめ、作る事に沢山の調整がいりますよね、ゲームって。クライアントサイドで上手くいかない事も多くて、せっかく一緒に作っているから待ってるだけは嫌だなって思っています。なので、私達の取りえのひとつ「コミュニケーション能力」的な所を最大限に活かし、例えばアートのディレクションが回らない!なんて時にはディレクション業務ごと相談してもらったり、今もらってるものと全然関係ない仕事でも困っていたらクリエイターの広いネットワークがあるので必ず役立てると思うから、まず相談して欲しいと思います。もうひとつは自社IPの声優スタンプというコンテンツでいろんな会社さんから声をかけていただいてます。それでゲーム展開とかアニメ展開とかいろいろとやっていきたいです。その辺りに興味を持っていただける企業さんがいれば嬉しいです。
――今後も魅力的な活動を続けてください。ありがとうございました。
[聞き手: Shinji Sawa]
[写真: Mon Gonzalez]
GTMF(Game Tools & Middleware Forum)はアプリ・ゲーム開発・運営に関わるソリューションが一堂に会するイベント。2003年にスタートし、今年で14年目。大阪会場は2016年7月6日、東京会場(事前登録受付中)は7月15日に開催。