「京町セイカが精華町にもたらしたものとは」精華町役場 西川和裕氏。GTMF 2016 Meet-Ups
引き続きGTMF 2016大阪会場Meet-Ups特集をお届けする。第8弾は精華町役場 総務部 企画調整課 課長補佐(企画係長事務取扱)西川和裕氏にフォーカス。東京会場は明日、7月15日開催。
広報キャラクター「京町セイカ」と地方創生
Meet-Upsの大トリを飾った精華町役場 総務部 企画調整課 課長補佐(企画係長事務取扱) 西川和裕氏は、「なんだか場違いで……」と恐縮しながらもテンポの良い話術で会場を大いに沸かせた。西川氏は、精華町の知名度を大きく上げた「京町セイカ」の生みの親。
まず西川氏はスライドを使って精華町がどこにあるのかを説明。そして文化学術研究都市ということで、国立国会図書館の関西館、情報通信研究機構、国際電気通信基礎技術研究所などがあり、さらにサントリーと日本電産の誘致が決まったことをアピールした。
つづいて西川氏は、じつは過去に健康づくりのキャラクターが存在していたことを明かし、ゆるきゃらとしては少しリアルすぎていたり分野が限定されていたことから、あまり広く出せなかったと語った。そこで維持費がかからなくてインパクトのあるキャラクターを作れないかと考えているときに、コミPo!の存在に気づき、株式会社ウェブテクノロジに相談をして「京町セイカ」が誕生したという。
そして、「京町セイカ」が地方創生にどのようにかかわりがあるのかを説明し、西川氏はプレゼンを終えた。地方創生についてはインタビューでも触れているが、詳細は会場で聞いていただきたい。
[パートナー企業: 株式会社ウェブテクノロジ]
京町セイカが精華町にもたらしたものとは
――今日は京町セイカさんの誕生日ですね。おめでとうございます。プレゼンはすごく盛り上がりましたね。
西川和裕氏:
ありがとうございます。最近ようやく京町セイカの話を聞いてもらえる機会が増えてきて、そういうのもあって場慣れしてきたというのもあるんですけど(笑)
今年で3年目を迎え、最初の1年はひとりでさみしく鬱屈としたなかで活動していたんですけど、2年目に入るぐらいから特に町外の方、関東圏など遠方の方からTwitterとかで応援してくださる空気が流れてきて、そのおかげでなんとか続けてこられました。
――関東からですか。
というのも「ゆるきゃら」と違って2Dで活動するキャラじゃないですか。逆に町内よりも町外の方のほうが目につきやすかったんですよ。ネットを介してというのもあるので。
――たしかに「ゆるキャラ」ですと、そのキャラが県外まで行かないといけないですもんね。
そうなんですよ。やっぱり着ぐるみがメインになりますので、そうなると行動範囲が狭いのと地元密着になるんです。けれども京町セイカの場合は2Dが出発点なので、知名度でいうとSNSなどを通じて、先に町外で盛り上がった感があります。むしろ町外の方からの影響で町内へも広まるという結果になりました。
――ほかの自治体から「萌えキャラを作りたいんだけど」というような相談を受けることはありますか?
萌えキャラを作りたいというのは、他団体の議会議員さんが参考に聞いてこられるのはいくつかあったんですけど、自治体のほうからは「よくやったな」という反応のほうが多いです。「大丈夫か?」みたいな意味ですけど(笑)
どちらかといいますと、京都府はまだ敷居が低いほうです。たとえば舞鶴市さんですと『艦これ』とかでイベントやったりとか、市内ですと「京まふ」とかをやっておられたりとか、また漫画ミュージアムとかもありますので。そういう意味ではわりと土台はあるのかなと思っています。自治体はまずそんなところに手を付けなかったですからね。プレゼンでも言いましたけど、ゆるキャラはもう埋まっている状況で、いまさらゆるキャラグランプリで500位とかになっても意味がないですよね。だったら萌えキャラでいこうかなと。
――なるほど。効果はあるんですか?
外の方に知っていただくプロモーションという意味ではすごく効果がありまして、昨年末にやったクラウドファンディングでも97%ぐらいが町外からの寄付でお金が集まりました。これは大きいですよね、自治体としては。ふるさと納税というのは自治体間のお金の取り合いになるので、海もないし山もないし、マツタケやカニなど特別な特産品があるわけではない町ですから、ふるさと納税の返礼品で競っても負けちゃうわけなんですよ。
それに、もともと返礼品で競うということ自体が変な考え方だなって思いが精華町にはあったんです。まず最初に「何をしたいか」があって、そのためにはこれだけ必要なんです、という寄付募集をしたいと思っていました。今回は、広報キャラクターとしての京町セイカがもっと活動範囲を広げるために声や衣装を作りたいという思いを伝えて、そのために必要なお金をくださいとやってみたら、すごく応援してもらえまして、目標の約2倍の寄付をいただきました。すごく有難かったかったです。
――精華町を訪れる人の数も増えましたか。
去年ぐらいから「SEIKAサブカルフェスタ」というイベントを開催していまして。
――ええっ?!
先日やっと予算も目途が立ちまして、第二回の開催もできそうです。「キャラサミ」という萌えキャラの集まりがあるんですがいまいち萌えない娘さんや東北ずん子さんをはじめ、今では80を超える萌えキャラが参加しているんですけど、恐らく自治体が直接参加しているのはうちぐらいかも。そのキャラサミから去年は9運営ほどに出展してもらい、コスプレイヤーさんにも10人ほど来ていただいて、町のお祭りなのにすごい光景で盛り上がりましたね。
――ちょっと想像できないです(笑)
会場が混乱したらどうしようかなという不安も少しありましたが、来場者とコスプレイヤーさんで写真を撮ってもらったり、わきあいあいとできました。そういった誘客効果も出てきまして、1000人単位で観客数も増えていきました。ご当地アイドルライブも開催したんですが、普通の町のイベントだとしませんよね(笑)
――しないですね(笑)
ただそういうところで、キャラクターのおかげでコネクションができたりもするんです。
――予想以上の効果があったんですね。ただ萌えキャラということで、初めのころは町内で反発があったのでは?
最初、確かに懸念はありましたよ。でも、結果的には思ったより問題はありませんでした。但し、元々そこまでキャラクターに関心がなかったということもあると思います。むしろ関心を持ってもらうほうが大変で、広報の挿絵で使うなどの露出の努力をしました。基本的には大多数の方にかわいいと言ってもらえて、町議会でも好評価をいただきました。
――ところで京町セイカちゃんのキャラクター設定は何なのでしょうか?
京町セイカは広報キャラなんですよ。口ぐせが「お知らせします」で、基本的に敬語ですし、高飛車に出ることもないまじめなタイプです。
――そういえば精華町の公式サイトを見て思ったんですが、セイカちゃんを強く推しているわけではないんですね。
そうですね。あまり出すぎずという感じです。自治体のホームページ全体がキャラクターで埋まっているというのは、私でもどうかと感じますし(笑)そこはバランスを取りながらですね。
――今後は姉妹が登場したり?
同僚とかは作っていて、コミPo!用データで公開しています。それでマンガを作ってもらったりもしています。
――セイカちゃんが支持される理由は何だと思いますか?
こちらで勝手に思っているだけかもしれませんけど、3Dモデルなどのデータを行政の限界なぐらいまでオープンにしていることかもしれないです。それらを自由に使ってくださいという形で出したんですよ。公序良俗に反するとか第三者の権利侵害になるような使い方はやめてくださいとは伝えていますが、最初はどきどきしていました。でも意外とみなさん自治体のキャラクターであることを認識して、マンガや動画でちゃんと使ってくれるんです。かわいがってもらっているなと感じます。ありがたいです。
――セイカちゃんの効果はすごいですね。精華町の知名度も高くなってそうです。
それまでは京都府にそんな町があることを知っている人が少なかったですが、最近は徐々にですが「学研都市精華町」のことを認識してもらえていると感じています。
――京都精華大学は別ですよね。
みなさん精華大学が精華町にあると思われるんですけど、ありません(笑)あまりにもそう思われている方が多いので、逆にそれがご縁となって、今年4月に連携協定を結びました。お互いで盛り上げていこうと。
京都精華大学の先生方には、「コミPo!」を考えられた漫画家の田中圭一先生や、京町セイカの名前を決めるときに選考委員をやっていただいた竹熊健太郎先生(当時)がいらっしゃいます。この間は、ゲームセンターあらし等で有名な、すがやみつる先生にも協力していただき京町セイカのイラストコンテストをしました。連携協定を結ぶ前から、京都精華大学とは京町セイカ絡みでつながっていたんです。
――キャラクターを作ると、そんなにたくさんの効果があるんですね。
また、バーチャルなキャラクターなので維持費があまりかかりません。「コミPo!」のモデルと3Dモデルを作ってもらったときも、初期費用だけなんですよ。あとはパンフレットの画像などはぜんぶ職員で作っています。それに実は京町セイカのコミPo!用データには、6種類のカラーバリエーションがあります。フォーマル風とか、防災などの広報のときはレスキュー風、予防接種など健康関係ではナース風、防犯ならポリス風などなど…。
――自治体主導で進められているんですか?
基本的に精華町が主体的に企画をしています。ただ、内部でも説明しにくいことも多いですね。3Dモデルを作ると言っても、着ぐるみを作ると思われることもありますし(笑)でも、ようやく最近は、町長の名刺にも京町セイカのイラストが入るまでになりました。
――キャラクターを作ると町に訪れる人が増えるという効果だけだと思っていたので、とても驚きました。
そうですね。最近になって、特産品のラベルデザインやクラウドファンディングの返礼品など、お金の面での効果も出てきました。やはり税金でやっていることなので、費用対効果を考えることは大事だと考えています。
――京町セイカちゃんの3Dデータをダウンロードしてみます。ありがとうございました。
[聞き手: Shinji Sawa / Minoru Umise]
[写真: Mon Gonzalez]
GTMF(Game Tools & Middleware Forum)はアプリ・ゲーム開発・運営に関わるソリューションが一堂に会するイベント。2003年にスタートし、今年で14年目。大阪会場は2016年7月6日、東京会場(事前登録受付中)は7月15日に開催。