「日本ゲーム業界よ、開国してくださいよ~」DDM日本取締役Ben Judd氏。GTMF 2016 Meet-Ups

7月5日にグランフロントで開催されたGTMF 2016 大阪。プレゼンターと開発企業をマッチングするMeet-UpsでプレゼンをおこなったDDM日本取締役Ben Judd氏にお話をうかがった。

ゲーム開発ツール&ミドルウェアの祭典「GTMF(Game Tools & Middleware Forum)」2016が7月5日にグランフロント大阪にて開催された。なお東京会場は7月15日に秋葉原UDX GALLERY NEXT THEATERにて開催される。事前登録も受付中なので、興味のある方は参加してみてはいかがだろうか。

会場では数々のセッションがおこなわれ、タイムテーブル(大阪/東京)をごらんいただくとわかるとおり、業界人にとってはとても興味深いものばかり。このセッションがメインではあるのだが、じつはGTMFにはもう一つ面白い企画が存在する。それが、自社のスキルをアピールしたいプレゼンター(企業・団体)と、優秀な開発企業を探しているプロデューサー・ディレクターをマッチングするMeet-Upsだ。ひとりのプレゼンターに与えられた時間は約5分。短時間だからこそ凝縮された話を聞けるということで、なかなか好評のようである。

今回AUTOMATONはMeet-Upsだけにフォーカスし、GTMF 2016 大阪会場のプレゼンターにさまざまなお話をうかがった。まずはDIGITAL DEVELOPMENT MANAGEMENTの日本取締役Ben Judd氏のお話からお届けする。

日本ゲーム業界よ、開国してくださいよ~

DIGITAL DEVELOPMENT MANAGEMENT日本取締役Ben Judd氏
DIGITAL DEVELOPMENT MANAGEMENT日本取締役Ben Judd氏

「みなさま、元気ですかー?」という声でプレゼンをスタートさせたのは、DIGITAL DEVELOPMENT MANAGEMENT(以下、DDM)の日本取締役Ben Judd氏。“夏い暑”といった定番の大阪ジョークを交えながら阪神タイガースの応援衣装に着替えるなど、貴重なプレゼンの時間をおよそ1分ほど無駄にしながらも、来場者の心をしっかりつかむうまさはさすがの一言。

DDMはゲーム業界をリードするグローバルエージェンシー。エージェンシーとは自分の力を補ってくれる存在であり、それはミドルウェアのようなものだとBen氏は説明した。自分のゲームの企画を世界に向けて展開したいとき、そして“ボロ儲け”したいと思ったときに、DDMが世界中のネットワークを使い、欧米はもちろんのこと中国・韓国・ロシアなどのパブリッシャーに売り込んでくれるというわけだ。またパブリッシャーだけでなく、開発や翻訳の会社の紹介もできるという。とくにこれから中国向けにモバイルゲームの展開を考えている企業にとって、DDMの存在は大きいはずだ。GTMF東京でもプレゼンがおこなわれるので、興味のある方はぜひ会場へ足を運んでほしい。

[パートナー企業: Epic Games Japan]

誰もが失敗して失敗して失敗して、やっと成功する

――DDMさん。

Ben Judd氏:
いかにも。

 
――いままでたくさんのプロジェクトを成功させてこられましたが。

成功例も失敗例もたくさんあります。

 
――成功させてきたということは、「これは確実に失敗するだろう」というのが見えるようになるものですか。

なくはないんですけども、勘ですかね。勘がだんだんついてきます。野球の経験がない人が初めてボールを受けようとしたら、感覚がわからなくて落とすことが多いんですけど、何度もするとなんとなくここに落ちてくるんじゃないかという勘がついくるんですよ。「経験がものをいう」。

gtmf-2016-osaka-meet-ups- digital-development-management-003

 
――プロジェクトの相談がきても、内容によっては断ることも。

あります。クライアントが作りたい企画書がすでにあって、こういうのを海外パブリッシャーに売り込みたいといった場合、まずその内容を見ます。エージェンシーにはいろんな情報が入ります。たとえばNXのスペックとか、まだ公開されていないけど知ってます。そういう極秘の情報までわかっていて、これからソニーはどういうゲームに対してフォーカスを置いているのかとか、中国パブリッシャーはどのようにシフトしているのかとか、すべてを把握しているわけですよね。なのでとてもドライな――客観的な意見を出せるんです。でもそれをクライアントに伝えても理解してもらえない場合は、わたしたちの出番がないので、どうぞ自分で頑張ってくださいとしか言えないです。

なかなか実現できなさそうな会社もいっぱいあります。クオリティが低すぎるとか。また、3DSでゲームが作りたい、そして海外パブリッシャーと組みたいと言われても、いま海外では3DSが売れておらずソフトのセールスがとても悪いので、いくら頑張っても、いくら(DDMの)ネットワークが強くても、らちあかへんというか、おすすめできませんと言う場合もあります。たとえば自分が70歳で300kgの体重のおじいさんだとして、18歳の巨乳のべっぴん女性を口説こうとしても、ちょっと無理があると思うんですよね。

 
――なるほど……。今日のMeet-Upsの説明書きに「日本のゲーム業界よ、開国してくださいよ~」とありましたが、なぜそう思われますか?

いろんな理由がありますけども、ひとつは、政府からのサポートが少ない。イギリス・カナダなどの国は、ゲームの開発会社の税金を減らすようなサポートプログラムがあります。また日本の銀行は、ゲーム企業に対してお金をなかなか貸してくれない。海外にあるようなチャンスが、日本にはないんですよ。

もうひとつは、日本は保守的な国ですよね。鎖国になりやすい国だと思いますので、ちょっとぐらいは海外に手を伸ばして頑張ってみるんですけど、失敗するとすぐ亀みたいに甲羅の中に隠れるような国民性がありますね。ただ言わせてもらうと、誰もが失敗して失敗して失敗して、やっと成功するんですよ。それが普通なんです。失敗したときの諦めの早さが問題かなと思ってます。

 
――大手さんとお仕事されることが多そうですが、インディーなど小さな会社ともお付き合いはあるのでしょうか?

付き合いはありますけども、問題は、いかに効率よくインディーチームと付き合えるかどうかです。ためしに2年前ぐらいにインディーのチーム2~3社をサポートしようと頑張ったんですけど、やっぱりインディーに対して投資してくれるパブリッシャーさまは少ないですし、ソニーさまとかマイクロソフトさまは、「インディー!インディー!」と言っているけど、あまりお金は入れてくれない。開発キットをあげるからとは言ってくれるけど。(インディーの)みんなは仕事をしていないから、給料がないと生活ができないということなので、お金が必要。ただ、日本の中ぐらいの開発会社も、インディーのパブリッシングに手を出そうとしていて、だんだんと増えてきています。

Indie MEGABOOTHのそれぞれのゲームを大きなイベントに出展してくれたり、アドバイスしてくれたりするところと、DDMは今コラボレーションしているんです。そこが仲介のような役割をしてくれていて、各インディーに対して、投資金が必要ならエージェンシーにつなげますよと。なのでそこが数社ピックアップしてくれて、そのなかから私たちは決めます。

 
――Kickstarterでは大きなプロジェクトをふたつ成功させてらっしゃいます。成功させる秘訣のようなものがありそうですね。

みなさんわかってらっしゃらないのは、ゲームは発表するまで1~2年間かけて開発してきているわけですよね。Kickstarterというのは言ってみれば発表までの3か月の期間で必要なものをすべて作らなければいけない。なので『Bloodstained』のときはアート素材を作ることに必死でした。なぜ必死だったかというと、ページに載せるアートもそうですし、Kotakuなどそれぞれのウェブサイトに提供する独占素材を作らなければならないし、本当に普通のゲームの発表と同じくらいの量が必要でした。普通は1~2年ぐらいで準備することを3か月に縮小しているので――秘訣はとりあえず「死ぬ気でやる」しかないですね。

gtmf-2016-osaka-meet-ups- digital-development-management-002

 
――日本国内でDDMさんと同じようなエージェンシーはあるのでしょうか?

ありますね。ただし、おそらく誰も聞いたことがないような小さなエージェンシーだと思います。過去にパブリッシャーで少し働いたことがある人が、小さな開発会社のサポートをやっているとかですね。聞いているかぎりでは、2社ぐらいあるそうです。ただ、うちはプロ野球です。あちらは……

 
――……えっと、DDMさんがお仕事をしたい会社とは。

クライアントにフロムソフトウェアさんがいます。それはすごく嬉しくて、なぜかというとパブリッシャーさまから「組みたいんですけど」とアプローチが来るんです。こんどはDDMが18歳の巨乳のべっぴんになってるわけなんです。
あとは、Kickstarterを一緒にやってビッグなこと、しかもDDMの力がなければできないことっていうのは、自分自身のプライド、個人的な気持ちも盛り上がります。
インディーを助けるというのも好きです。なんてったって面白いプロジェクトですから。

 
――会社の規模は関係ない?

『Axiom Verge』は一人がずっとプログラミング・アート・サウンドすべてやっているわけですよね。なのに良いゲームです。『Papers, Please』も一人で作ってますし、人数は関係ないんですよ。ただ、でかいチームが30億円かかるタイトルを作るときは、弊社の手数料も大きくなるので、もちろんビジネスとしては大喜びですよ。

 
――海外展開を検討している会社さまからのコンタクトがあるといいですね。ありがとうございました。

[聞き手: Shinji Sawa / Minoru Umise]

[写真: Mon Gonzalez]

gtmf-prof
GTMF
GTMF(Game Tools & Middleware Forum)はアプリ・ゲーム開発・運営に関わるソリューションが一堂に会するイベント。2003年にスタートし、今年で14年目。大阪会場は2016年7月6日、東京会場(事前登録受付中)は7月15日に開催。

 

 
Shinji Sawa
Shinji Sawa

ゲームはジャンルを問わず遊びますが、1回のプレイ時間が短いものが好きです。FPSやRTSは対戦モノを積極的にプレイします。しかし緊張するとマウスを持つ手が震えるタイプでもあります。

記事本文: 141