「テンプレート対応ではないカスタマーサポート」「チャットBotによる効率化」、マーケティングアソシエーション飯塚氏に訊く。GTMF 2017 Meet-Ups

マーケティングアソシエーション株式会社は、東京千代田区に位置するカスタマーサポートの代行業務を担う会社だ。名古屋にも支店が存在しており、24時間体制でのカスタマーサポート対応などを特色としている。

7月14日、大阪北区で開催された「GTMF2017 OSAKA」に引き続き、東京秋葉原にて「GTMF2017 TOKYO」が開催された。同イベントでは「Meet-Ups」と呼ばれるマッチング企画が実施されており、プレゼンターたちが自社のスキルを5分間の短い時間で矢継ぎ早にプレゼンテーションしていく。ここでは「GTMF2017」に参加しなかった業界人向けにプレゼンテーション内容を紹介、さらに5分間では語りきれなかった話をプレゼンターたちに聞いていく。

マーケティングアソシエーション株式会社は、東京千代田区に位置するカスタマーサポートの代行業務を担う会社だ。名古屋にも支店が存在しており、24時間体制でのカスタマーサポート対応などを特色としている。昨年度の「GTMF東京」の「Meet-Ups」では、カスタマーサポートだけでなくQAやデバック業務も請け負っており、各業務を連携させることができる点が同社の強みであるとアピールしていた(関連記事)。

今回の「GTMF東京」の「Meet-Ups」には、昨年に引き続き同社の営業課の課長である飯塚慶太氏が登壇。テンプレート返答に頼らないユーザー目線のカスタマーサポートや、新たな取り組みである「チャットBot」について解説した。ここではカスタマーサポート業務を代行するゲームに関して、「プレイ会」ややり込みを通じて対応スタッフが知識を蓄積するという独自の社内体制などについてさらにお聞きする。

――昨年も登壇していただいたのであらためてとなりますが、マーケティングアソシエーション株式会社がどういった業務をおこなっているのか、教えていただいてもよろしいでしょうか。

飯塚氏:
弊社はゲーム会社向けのアウトソーシングのサービスを提供しております。アウトソーシングというのは、カスタマーサポートやデバックの代行ですね。また当社は24時間の稼働体制を持っておりますので、障害検知を夜間帯でもおこなうことが可能です。「カスタマーサポート」「デバック」「監視業務」のサービスを提供させていただいております。

――今年の「GTMF東京」の「Meet-Ups」では、ユーザー目線に関するお話をされていました。

飯塚氏:
カスタマーサポートの代行会社を使っているゲーム会社は、現在たくさんいらっしゃいます。ただ、長く遊んでいるユーザーさんに対して、テンプレート対応や機械的なメール返答で困っているという話をよく聞くようになりました。そういったことがあると、ユーザーの離脱を招いてしまうんですね。弊社ではテンプレートを対応しないで欲しい、ユーザーの状況を見て対応して欲しいといったご相談をいただいています。

――テンプレート対応をしない、というのはとても難しそうですね。対応するスタッフのスキルにもよると思いますが、社内ではどのような対応を?

飯塚氏:
弊社ではゲーム会社からカスタマーサポートの仕事をいただいた時に、当たり前ですが前提として、そのゲームの知識が無いと駄目だと思っています。なので対応スタッフはゲームをやり込んで、ユーザーさんと同じ知識、同じレベルの情報を持てるようにしているんです。

――ゲームのやり込みというと、会社からプレイするように指示が下るんでしょうか?

飯塚氏:
弊社は「プレイ会」という、月に3回ほどゲームをプレイする時間を取っていますね。あと、弊社でカスタマーサポートを対応するスタッフは、基本的にゲームが好きな人材を揃えております。自分が対応するプロダクトの内容については把握しなければならないというところで、みんな自発的にやっている感じですね。

――ものによっては、かなりやり込む必要がありますよね。大変そうです。

飯塚氏:
そうですね(笑)。ただ、ユーザーさんは当然ゲームをしっかりとやり込んでいらっしゃるので、対応スタッフもそれと同じレベルではないと、なぜユーザーさんがこういうことを言っているのか、裏側を理解できないですよね。一辺倒な対応をしてユーザーが離れてしまうのは駄目なんです。ユーザーさんに遊んでもらう、定着してもらうために、ユーザーさんのお問い合わせ内容や温度感を理解して、しっかりと返答する。大変ですけど、ゲームの知識をつける、ゲームをプレイするというのは、しっかりやっています。

――ほかには、カスタマーサポート業務において大事にしているポイントは?

飯塚氏:
基本的にテンプレート対応はしないということで、対応スタッフがしっかりと文章を考えて返答するようにしていますね。ご案内する内容を間違えるのはもちろん駄目なんですが、多少の口調の違いなどは個人差で良いと思っています。あまりかしこまらずに、機械的ではない対応をすれば、ユーザーさんにも誠意を持って対応しているのがわかってもらえるのではないかなと。多少の文面の違いは問題はないと思っていますね。

――もう1つ話されていた「チャットBot」のサービスに関してはいかがでしょうか。

飯塚氏:
すでに「チャットBot」を運用している他社さんもいらっしゃるんですが、弊社はゲームメーカーさん向けに特化したものを作り込んでいます。「チャットBot」というのは、チャットウインドウに質問を入力すると、自動的に答えが返ってくるというものですね。たとえばゲームが動かないとユーザーが入力したら、「◯◯を確認してください」と自動的に返答してくれる。自動で返答する内容をしっかり作り込まなければならないですし、ゲームユーザーさんってこういったサービスにはとりあえず書き込んで遊ぶという方もいらっしゃるので、その辺りもふくめて対応できるシステムを設定するのはすごく難しいんですね。

ただ、弊社は長年カスタマーサポートをやっていますので、こういう問い合わせが来たらこういう風に返答するというノウハウがあります。ゲームメーカーさん向けの「チャットBot」の設定ができるという点では、他の会社さんとは違うところになるんじゃないかなと思いますね。

ほかにも「チャットBot」のメリットとしては、機械的に答えを返すので、お問い合わせに対する作業工数やコストが減る点が挙げられます。ユーザーさんがゲームがプレイできないというトラブルに見舞われたときも、機械的に返答する「チャットBot」なら、レスポンスが早いんですよね。早く返答する、早く解決するという点もメリットで、ユーザーさんの離脱を抑えるための大事なサービスになると考えています。

――具体的に「チャットBot」でコストの低減はどれくらい見込めるでしょうか?

飯塚氏:
システム費だけで言えば、月額1万円ほどから使っていただけます。ただ、弊社はもともとカスタマーサポートの代行会社なので、「チャットBot」のみの提供というよりは、「チャットBot」も一緒にしたカスタマーサポート体制をご提供させていただくのが基本となりますね。

――「チャットBot」は今後、ゲーム業界におけるカスタマーサポートのスタンダードになるんでしょうか?

飯塚氏:
弊社の方で言うと、「チャットBot」サービスはリリースしてまだ間もないので、実際の採用例は徐々にという感じですね。ご興味があるお取り引き様との取り組みでやっているので、少しずつ増えています。ご相談をいただくということも増えていますね。ゲーム業界では「チャットBot」を使ったカスタマーサポートはまだまだ少ないんですけど、今後はどんどん増えていくと思います。コストカットもありますし、メールよりも自動返答チャットで返す方が早い。困っているユーザーさんの問題を早く解決できれば、ユーザーさんはすぐにゲームに戻ることができますし、満足度にも繋がる。

――カスタマーサポート業界全体は、近年どうなりつつあるでしょうか。

飯塚氏:
弊社のサービスベースの話にはなるんですが、やはりカスタマーサポートに求められる品質が高くなっていると思います。お客様の質問にテンプレートで返すという対応はめずらしくなかったんですが、最近はユーザーさんをより大事にしていて、いかに継続していただけるか、離脱せず長く遊んでいただけるのかというのが重要になっている。ユーザー目線で対応して欲しい、運営チームと同じ意識レベルで対応して欲しいというご相談が増えてきています。

――最後に、マーケティングアソシエーションがどういった企業との出会いを求めているのか、メッセージをお願いします。

飯塚氏:
カスタマーサポートの改善でユーザーの離脱を減らしたい会社さんや、「チャットBot」を活用して、新しいことにチャレンジしてみたい会社さん、興味がある方がいらっしゃいましたら、ぜひお話させていただきたいなと思います。

――ありがとうございました。

[取材・撮影・執筆 Shuji Ishimoto]

GTMF
GTMF(Game Tools & Middleware Forum)はアプリ・ゲーム開発・運営に関わるソリューションが一堂に会するイベント。2003年にスタートし、今年で15年目。大阪会場は2017年6月30日、東京会場は7月14日に開催された。
Shuji Ishimoto
Shuji Ishimoto

初代PlayStationやドリームキャスト時代の野心的な作品、2000年代後半の国内フリーゲーム文化に精神を支配されている巨漢ゲーマー。最近はインディーゲームのカタログを眺めたり遊んだりしながら1人ニヤニヤ。ホラージャンルやグロテスクかつ奇妙な表現の作品も好きだが、ノミの心臓なので現実世界の心霊現象には弱い。とにかく心がトキメイたものを追っていくスタイル。

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