ご当地キャラクター「京町セイカ」をどう守り続けるのか、京都府精華町役場西川和裕氏が語る。GTMF 2017 Meet-Ups
ゲーム開発ツール&ミドルウェアの祭典「GTMF(Game Tools & Middleware Forum)」内で開催される「Meet-Ups」の登壇者にフォーカスを当てインタビューするこの企画。第九弾は京都府精華町役場の西川和裕氏にお話をうかがう。
京都府の最南西端、学研都市の中心にある精華町は「京町セイカ」というイメージキャラクターを創り出し、存在感を見せている。「京町セイカ」は単なるご当地キャラクターに収まらず、MMD対応データが配布され、クラウドファンディングによりVOICEROID化するなど、インターネット上で幅広い分野で活躍を見せる。今回はその仕掛け人ともいえる西川氏に、「京町セイカ」に携わるなかでどのような点に気をつけているかについて語っていただいた。
――自己紹介をお願いします。
西川和裕氏(以下、西川氏):
京都府精華町役場の企画調整課にいます。西川と申します。
――GTMFのMeet-Upsではおなじみとなりつつあります。
西川氏:
そうですね。もう(GTMFに登壇するようになって)三年目ということなので、もうそろそろ町の紹介やキャラクターの紹介はもういいかなと思っていました。なので、今回はキャラクターを中心とした取り組みとか、いろんな方とのコラボができつつあるので、その辺をお話できたらなと。
――あらためて「京町セイカ」について説明してだけますか。
西川氏:
万葉の時代からの地名が残る歴史の深さと、けいはんな学研都市の両面をイメージした、「過去」「現在」「未来」を行き来する未来からの使者というコンセプトでキャラクターを作りました。
――そんな設定だったんですか。
西川氏:
そうなんです。そういうテーマでウェブテクノロジさんを通じて、グランゼーラさんにキャラクターデザインをしていただきました。そのあと名前募集して決まった名前が「京町セイカ」です。おかげさまで、今年で四周年を迎えました。
――最近ではマンガジェネレータも発表されていましたね。
西川氏:
マンガジェネレータでは、人がマンガの中に入ることができるんですよ。モニターにカメラがついていて、モニターの前に立つと漫画のコマがでてくる。そのコマの状況に合わせてポーズを取ったら写真がとられて、コマの中に自分が入った状態で完成するんですよ。それを共同開発という形で、コンテンツに「京町セイカ」を出させていただきました。
――それはどちらからオファーされたんですか。
西川氏:
実は、昨年のGTMF東京会場で、このシステムの開発をしておられる大学の先生をご紹介していただいたのがきっかけで、開発会社の方からお話をいただき、そういうことになりました。
――話題性はありますよね。その流れでいうと「京町セイカ」というキーワードをGoogleトレンドで調べると、実は話題性が昨年と比べてもあまり落ちてないんですよね。そこがなかなか面白いなと。
西川氏:
そうですね。はじめはクラウドファンディングのときに、すごく応援していただきました。それをもとに作ったVOICEROIDが次の年の6月に出て、昨年にはマンガジェネレータ―ネーターのお話しがありました。結果的には切れ目なく色々なことをやり続けてくることができたのかなと。
――「京町セイカ」のTwitterを見ても、それほど頻繁ではなく、かつでも放置しすぎずに更新されているじゃないですか。運営は西川さんがやられているんですか。
西川氏:
もちろん、本人が喋っています!
――(笑)ですよね。あくまで「セイカちゃん」が喋っていますもんね、失礼しました。
西川氏:
ただし、運営方針としては、おっしゃるとおり、なるべく間をあけないようにしています。かといって日常会話をひたすらつぶやきまくるのは、やっぱり行政のキャラクターとしてもちょっと違うかなと思うので、その辺はバランスをとっています。
――たとえば、キャラクターとかブランディングする際にSNS運営を外注することも選択肢としてあると思います。
西川氏:
それしてしまうと、うちとしてはもうダメかなと思っています。町の情報を発信するためのキャラクターなので、自らで発信しないと意味がないと思っています。もともとのキャラクター運用コンセプトとしても、自分達で描けるからコミPo! を導入したということもあるので、手作り感は残しておきたいんです。
――「京町セイカ」ははっきりとしたパーソナリティはなくて、それでも色付けしたキャラクターみたいな人気があるのは不思議ですよね。
西川氏:
データをはじめから公開しているということもあって、いろんな人に漫画にしてもらったりとか、最近はボイスロイドを使ってニコニコ動画とかにも出してもらうことが多くなってきましたが、いつのまにか酒飲みキャラになっていたりとかいろんなキャラ感がでていますね(笑)。でも根っこの部分では皆さん同じものを感じていただいているとも思いますし、大事にしてもらっているのかなとは思います。
――それは、こういう性格であるという共通認識を提示したわけじゃないんですよね。
西川氏:
そうです。こちらから押し付けたものは全くないんですけど、自然に作り上げられてきたように思います。
――二次創作という点では、ベースとなるキャラクターに色がついてないのは創作者にとって楽しい反面、魅力を感じにくいと思うユーザーもいるのかなと。
西川氏:
確かに、色がついてないというのはTwitter上で言われたりしますね。難しいところですよね。色つけすぎてしまうとまた幅が狭まってしまうし。でも精華町はクリエーター支援を頑張りたいって思っているのもあるので作りやすさは重視したいです。だから位置付け的にはそちら側ですね。
――なんというか、西川さんは運営者とか、保護者の前に、まず手厳しいファンであると感じさせられます。
西川氏:
それもよく言われますね。きっとそうじゃないと、やっていけないんですよ。やっぱり自分でも作っているからだと思いますよ。自分も作っているから、少しは作り手の方の事も感じられるのかもしれないですね。
――そろそろ精華町民にもセイカちゃんがいることになじまれてきましたか。
西川氏:
少しずつですね。まだまだ私たちが思う形まで…周知できているかというと、まだまだやっていかないといけない部分があるのかなと思います。
――逆に目指すところはどこなんですか。「セイカちゃんランド」のようなものを作りたいとか。
西川氏:
もっと街中で色んなことを京町セイカがお知らせしているという雰囲気が出せるといいなと思います。あくまでお知らせキャラですので。
――そうですよね。キャラクター性ではなくて、精華町があってそのなかの役割を担ってるというところがありますよね。
西川氏:
まさにそうです。これは最初から申し上げているんですけど、キャラクターで何とかしようと思っているわけではないんですよ。そう思ってしまうと多分失敗しちゃうだろうなと考えています。あくまでも「京町セイカ」というのはツールのひとつなんです。
――逆にいえば「セイカ君」でもよかったと
西川氏:
極端なことを言うとそうなんですけど…。
――愛されているキャラクターだけに、そうは言えないですよね。やはり女の子だからこそという魅力もありますし。一方で、女の子ありきでもないと。
西川氏:
それはもちろんそうだと思います。「ゆるキャラじゃなかったら萌えキャラ」という選択肢から生まれただけで、別にそれはおっしゃるとおり「セイカ君」でも別によかった。結果的にはゆるキャラだった方がよかった、そういう可能性もあったかもしれない。
――逆に美少女キャラだからこそ、好かれない部分もあるとも思います。でも、“そういう目的”では作られていないんですよね。
西川氏:
目的ははっきりしていて、萌えキャラとして売り出したいわけではないです。ただ現時点では「京町セイカ」というものがここまで形作られたので、今の姿がベストなんだと私は思っています。もちろん、さまざまな方々のご意見もありますし、そういうものは真摯に受け止めていきたいと思っています。
――運用の仕方的に、慎重さがあるように思います。
西川氏:
そこはそうですよね。やっぱり行政のキャラクターとして守るべきものはあるので。
――セイカちゃんがいきなり脱ぎだすというのはないんですよね、しっかりとした運営方針があってよかったです。
西川氏:
どういう運営なのかと問われると、肌で感じてとしか言いようがないんで難しいですね。言葉では表現しにくいんですけど、微妙な感覚を守りながらやっていますね。
――それはすごくわかります。微妙なバランスのなかで上手く成り立っている。
西川氏:
それを何とか守り続けていきたいと思ってます。
――今後も「京町セイカ」のご活躍を期待します。
西川氏:
実は、今年はコミケも出ようと思っているんです。
――コミケにも出られるんですか。
西川氏:
企業ブースとして出展予定(西3ホール・企業ブースNo.3342)です。たくさんの人にブースにきていただけると嬉しいです。
――期待しています、ありがとうございました。
[聞き手: Minoru Umise]
GTMF(Game Tools & Middleware Forum)はアプリ・ゲーム開発・運営に関わるソリューションが一堂に会するイベント。2003年にスタートし、今年で15年目。大阪会場は2017年6月30日、東京会場は7月14日に開催された。