押井守の『Fallout 4』通信
第8回 「アトムキャッツの馬鹿ものたち」

押井監督が『Fallout 4』のプレイ状況をお伝えする隔週連載「押井守の『Fallout 4』通信」。ついにアーマーの置き場が無くなりつつある押井監督、モチベーションを取り戻すため新たなプレイングを模索中(編集部)。

押井監督が『Fallout 4』のプレイ状況をお伝えする隔週連載「押井守の『Fallout 4』通信」。ついにアーマーの置き場が無くなりつつある押井監督、モチベーションを取り戻すため新たなプレイングを模索中(編集部)。

※本連載は押井守メールマガジン『押井守の「世界の半分を怒らせる」』にて掲載された内容を再編集したものです。

【URL】http://ch.nicovideo.jp/oshimag
【Twitter】@oshimaga


現在レベル122です。

相変わらずB.O.S.との個人的戦争を繰返していますが、その戦利品であり戦歴の記録でもあるPA(パワー・アーマー)の置き場所が遂になくなりました。おそらく二百数十体はあるであろうT-60bですが、これと個人的に収集したT-45、51およびX-01を併せると三百は越えるPAが拠点であるRRTSの敷地内はもちろん、コンコードに連なる緩やかな丘陵地帯に列線を成しています。重装歩兵の軍団、というかほぼ師団規模のPA二個大隊です。

まあ、着用に及べるのは私とケイト姐さんだけですけど。

その置き場がもうありません。
やたらに密集して置けば勇壮な光景が台無しですし、万が一にもメンテが必要な時に不自由をきたすことになりかねません。現状でも拠点を繋ぐプロビジョナーのバラモンが立ち往生しているくらいですから、もはや限界を超えています。

そこで、ゲームメーカーに勤務する友人の希望を入れて、RRTS前の道端に並べることにしました。コンコードからRRTS、そこからサンクチュアリを結ぶ「PA街道」です。田舎道に威嚇的に並ぶPAの列線は、これはこれで不思議な眺めで、新たな主題の出現によって失せかけていたモチベーションも回復したのですが、別の問題が発生しました。

1)B.O.S.のPAを回収する(スリ→射殺→奪取)ことは難しくないが、ベルチバードを視認して駆けつけると交戦状態であることが珍しくなく、なにしろB.O.S.はその見掛けによらず劣弱なので、スーパー・ミュータントや人造人間、殊にもコーサーあたりと交戦すると壊滅することが通例である。そのフルセットを回収するよりも、スクラップからパーツを回収するケースの方が圧倒的に多い。

2)したがって、T-60のパーツのストックに較べて、そのフレームが圧倒的に不足をきたすことになる。

3)この状況を改善する方法は二つしかない。

4)即ち、レイダーの装備するアーマー(所謂レイダー・アーマー)を強奪するか、市場で入手するかの二択となる。

5)がしかし、レイダーはB.O.S.に比較して警戒心が異様に強く、その出現場所は三箇所程度しか確認できず、しかもリスポーンに時間を要するし、B.0.S.のように不期遭遇を期待することもできない。

6)市場で入手する資金に事欠くことはないが(現在20万キャップ所有)なんでもかんでも暴力で手に入れることがポリシーなので「現金で買うのは悔しい」し、現に「市場で物を買った記憶が無い」。しかも殆どの商店がフレームしか扱っていないので、パーツの不揃いな旧型を修復できない。

そういうわけで二日と措かずに通うようになったのが、ボストン市街から遥か南西の沿岸部にある「アトムキャッツ・ガレージ」なのでした。 ここは謂わば私設PA故買所であり、フレームだけでなくパーツも扱う、連邦で唯一の交易所でもあるのですが、ひとつだけ問題があります。

経営している若者たちが馬鹿なのです。

派手な皮ジャンを着て、「アトムキャッツ仕様」と称する派手な塗装を施したPAをバイク替わりに乗り回して大言壮語を繰返す、謂わば「変則的バイカー集団」であり「ロックンローラーPA版」であり、要するに「馬鹿ものたち」なのですが、その馬鹿ぶりはといえば初見から殺意を抱くレベルなのでした。

いつ殲滅しても惜しくないような連中です。

惜しくはありませんが、PAの装甲パーツを入手できる場所は連邦内に此処しかありません。しかも、そのパーツはB.O.S.からの略奪品と違って、型番はランダムですが、常に工場出荷状態にメンテされている無印良品です。

殺意を堪えて交易しています。

 

但し、決して馴れ合っていないことの証明として、現金を一切支払わないことにしました。と言って略奪に及んだのでは元も子もありませんから、つまり物々交換です。

このガレージ周辺にはPA目当てに田舎レイダーの屑どもが出現し、頻繁に襲撃事件が発生するのですが、これを悉く殺戮し、身ぐるみ剥いではパイプピストルから下着まで、その装備品の全てをガレージのロッカーに投げ込みます。これを繰返すと、およそ一個分隊の武器装備品でフレームの購入資金に充当します。当地の近辺には、夜ごとに地元勢力とB.O.S.小隊の死闘が繰り広げられるコンバットゾーンもありますから、戦闘後の回収で装備品が大量に回収できますが、これも残らず放り込みます。ミニガンやランチャー等の高額装備品から汚染された菓子パンまで、なんでもかんでも放り込みます。購買担当のスカした姐ちゃんは、なにしろレイダーのバッチイ下着まで売りつけられるのですから、先端をいくアーマーライダーとしてのプライドを傷つけられるでしょうが、委細構わず投げ込みます。

実に心地よく、かつ爽快な気分です。

がしかし、好事魔多し。

私は略奪したパーツは、常に最高のレベルにメンテしてから並べることをポリシーとしているのですが、このメンテのための資材が半端でない物量になっています。殊にも「鉄」「アルミニウム」の需要が急増して財政を圧迫し始めています。もはや廃墟からの回収品を解体することでは到底その需要を満たすことは出来ません。各地の拠点とはプロビジョナーのネットが確立されているのですが、資材のストックを共有化できるのは拠点のクラフトに限定されていることを失念していました。

市場で資材の「注文票」を購入することは出来るのですが、これも「現金払いが悔しくて」大量の装備品を持ち込むしかありません。

かくて略奪とジャンク回収とPA改修のバランスシートは常にマイナスに傾斜し、その傾向は襲撃の頻度を上げることによってしか回復できない状況にあります。

がしかし、それもまたスカベンジャーの宿命なのです。

物は売っても、物は買わない。

スカベンジャーは独立独歩の個人事業主であり、戦士でも商人でも、まして正義の味方でもありません。その持てる欲望の全てを、自力で賄う「例外者」でなければならないのです。

T-60やT-51、T-45が街道を埋め尽くす日が早いか。

『DQ11』の発売日が来るのが早いか。

それまで襲撃と略奪とジャンク漁りの日々は続くのです。

いやあ、愉しいなあ。

Oshii Mamoru
Oshii Mamoru

1951年生まれ。映画監督。代表作に『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』劇場版「機動警察パトレイバー」2部作、『GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊』などがある。また「機動警察パトレイバー」シリーズを完全オリジナルの新作としてドラマ版+劇場版の全7章で実写映像化した「THE NEXT GENERATION パトレイバー」シリーズの総監督を務める。最新作は「GARM WARS The Last Druid」。

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