あなたの総合的な”FPS力”が試される地獄のFPS『Devil Daggers』が熱い、襲い来る大量の悪魔を死の闘技場で蹴散らせ
オーストラリア・メルボルンのインディーデベロッパーSorath氏は、2月19日にFPS『Devil Daggers』をリリースした。価格は4.99ドル、公式サイトやSteamにて購入可。昨年10月にSteam Greenlightへと登録されて以降、1990年代のFPSに影響を受けたというミニマルなコンセプトや特徴的なビジュアルでひそかに注目を集めてきた本作だが、発売後もその”悪魔的な熱さ”で一部のプレイヤーやメディアから高い評価を獲得しているようだ。
『Devil Daggers』は非常にシンプルなデザインのアーケード的なFPSである。地獄の闘技場に送りこまれた主人公は、目の前にある不思議な力を持ったダガーを手に取り、無限に襲い来る13種類の悪魔たちと死闘を繰り広げてゆく。ストーリーが語られる場面やカットシーンなどは一切無し。マップはまっ平らな円形の闘技場1つだけ。単純明快にスタートボタンを押し、四方八方から現れる敵を相手に「どこまで生き延びられるか」を目指せばいい。生存した時間がそのままスコアとなり、世界中のプレイヤーたちとリーダーボードで競い合うことになる。実績すら1つしか無く、開発者が「御託はいいからさっさと戦え」というメッセージを投げかけているようにすら感じる。
御託はいいからさっさと戦え。『Quake』などを思い出す1990年代FPSのビジュアルで地獄の戦いが描かれる
ミニマルで野性的な操作感
プレイヤーは右手の人差し指と中指の先からダガーを放つことが可能で、マシンガンのような連射攻撃とショットガンのような拡散攻撃、2種類の攻撃方法を使用することができる。この2つの攻撃はテンキーやマウスホイールではなく、”マウスの左ボタンの操作1つで切り替える”ことができる。左ボタンを押しっぱなしにすればダガーは連射され、左ボタンを「タンッ」とクリックするように叩けば拡散して発射される。このほか、特定の敵を倒すと落とす赤いクリスタルを集めると武器がアップグレードされてゆき、最終的にはマウスの右ボタンでホーミング式のダガーを放つことができるようにもなる。
また『Devil Daggers』にはオールドクラシックなFPSの移動テクニックも搭載されている。連続でジャンプしながら前進すると加速し、左右へと速度を失うことなく曲がることができる「バニーホップ」。下向きに拡散攻撃を放ちつつジャンプすると空高く舞い上がれる「ロケットジャンプ」風のアクション。このほかにも「スピードブースト」と「ダブルジャンプ」、合計で4種類の移動テクニックがある。
“オールドクラシックな移動テクニック”なんて書くと、「なんだ難しいスポーツ系FPSか」と敬遠する読者が居そうだが、『Devil Daggers』の操作方法はシンプルで馴染みやすく、それでいて爽快感は抜群だ。これらの攻撃や複雑なテクニックは、すべて”WASDキーとマウスの左右ボタン”のみで完結しているし、それほどタイミングがシビアというわけでもない。ただ、『Devil Daggers』にはチュートリアルすら無いため、自分でインターネット上のガイドを調べる必要はあるが……。
ともかく、ちょっとコツを掴めばすぐにそれぞれの攻撃方法とテクニックが手に馴染み、ミニマルで野性的な操作感に酔いしれることになるだろう。地獄の闘技場を華麗に舞い、近寄ってくる敵を力強く撃ち倒す。わずか498円ながらも、『Devil Daggers』は『Doom』や『Quake』といった名作に匹敵するぐらいの「動いて撃って楽しいFPS」を実現している。
地獄の名がふさわしい難易度
『Devil Daggers』の操作方法はそれほど難しくないと言っておいてなんだが、『Devil Daggers』自体は間違いなく難しいFPSだ。プレイヤーが操作する主人公にライフの概念など無く、悪魔に一度でも接触すればそこでゲームオーバー。おそらく最初のプレイでは30秒も生き延びられればいい方だろう。闘技場に現れる敵の順序はランダムでは無く緻密にデザインされており、エイムが乱れたり処理の順番を誤って一手を誤ると、どんどんと不利な状況に陥ってゆく。13種類の敵には固有の行動パターンがあり、プレイヤーはそれぞれの敵の特性を覚え、そして最善の対処を続けてゆかなければならない。
まずこのゲームでの死にパターンは、ほとんどが「大量に出現した悪魔を捌き切れずに圧死する」というものだ(なにせ開発者のSorath氏は、数百体の敵が同時に出現できるようなカスタムビルドエンジンを本作のために構築している)。敵の悪魔には小型の悪魔を次々と生みだす「親型」が存在しており、小型悪魔を処理しつつこれらを優先的に倒さなければならない。たとえばトーテム型の悪魔は空飛ぶ髑髏を放出し、蜘蛛型の悪魔は卵を産んで地を這う大量の子蜘蛛の悪魔を出現させる。こいつらを放置しておくと、大量の悪魔が次々と生みだされ、最終的に処理しきれなくなり圧死させられる。
どの敵を先に倒すかといった戦略だけでは無い。ふわふわと浮遊したり、弱点が現れたり消えたりする敵を確実に処理できるエイム力。次々と出現する敵の位置を正確に覚えておく空間把握能力。どうすれば敵の大群に囲まれないかを瞬時に考えられる判断能力。『Devil Daggers』の攻略にはこれらの能力が、総合的な”FPS力”が求められる。時に自分の腕前に絶望するかもしれないが、そのチャレンジングな壁にぶつかり、何度も玉砕しつつ上手くなってゆく感覚はとても楽しい。なおRボタンでゲームは即座にリスタート可能で、1プレイは1分前後なので何度もトライできる。
弾幕シューティングのような”見る”楽しさ
さてここまで『Devil Daggers』を紹介してきたが、「やはり難しいのなら自分には向いてない」と感じている読者もいるかもしれない。確かに本作はFPS初心者にはとても推薦できるタイトルではないが、それでも購入すればそれなりに楽しむことはできると断言する。本作にはランキングシステムと共にリプレイ共有機能が標準装備されており、これを通じて人外魔境の域にたどり着いたプレイヤーたちの熾烈な戦いを見ることができるのだ。初心者はこれを見るだけでも「どうなってんだこれ」と楽しいだろうし、中級者は出現する敵の順序やパターンを習熟することができる。まるで「弾幕シューティング」の高難易度リプレイを共有しているような感覚だ。
2月22日時点で最高記録に君臨しているb0necarver氏のリプレイ。強化されてゆく攻撃と次々に現れる大量の敵に思わず燃える(The video by PC Gamer)
抜群の操作性と爽快感、地獄のようなチャレンジングな難易度に、見る楽しさを備えたリプレイの共有機能。地獄への片道切符はわずか498円。『Devil Daggers』は、もしかしたら今年一番オススメのFPS作品となるかもしれない。