ダンジョン探索型RPG『The Enchanted Cave 2』 安全第一でいくか、それとも挑戦するか


「One Coin Gamer」 は、1コインつまりは定価500円以下で購入できるゲーム(ただしモバイル向けを除く)を紹介する連載企画。サクッとプレイできる良いゲームを求めている人、奇天烈なゲームを求めている人、とにかくお金を節約したい人たちに向け、魑魅魍魎の低価格帯ゲームを実際にプレイし、面白い面白くないに関わらず紹介してゆく。

第8回でピックアップする『The Enchanted Cave 2』は、マウスだけで遊べるダンジョン探索型RPG。Steamでの定価は498円。タイトルに「2」とあるように、2010年に無料のブラウザゲームとして公開され、2014年にはiOS/Android向けにも発売された『The Enchanted Cave』の2作目である。開発を手がけるのはDustin Auxier氏。

 

ワンコインローグライク

新要素のひとつである「町」が今作の拠点となる。ただしそれほど重要ではない。
新要素のひとつである「町」が今作の拠点となる。ただしそれほど重要ではない。

開発者によると、『The Enchanted Cave 2』はRPGにローグライクとパズルの要素をミックスしたものだという。毎回ランダムに生成されるダンジョンを探索し、行く手を阻むモンスターを倒し、人目をはばからず床に落ちている小銭が入った巾着を拾い、どのようなアイテムが出現するか期待に胸をふくらませながら宝箱を開け、地下100階で待ち構えるボスの討伐を目指す。これは前作と同じで、基本的な部分はそのままといったところだ。ダンジョンの途中で死を迎えると、拠点である小さな町に戻され、手に入れたアイテムなどはリセットされる。キャラクター自体が削除されるというようなペナルティはない。町は新要素であり、数名のNPCが登場し、クエスト報酬を受け取ることができる。ただ、一般的なRPGの町やNPCほど重要な役割を担っているわけではなく、ほとんどおまけといった感じである。

 

一度攻撃をスタートさせると、どちらかが死ぬまで戦い続けた前作とは違い、途中で何もない床をクリックすることで「逃亡」が可能になった。
一度攻撃をスタートさせると、どちらかが死ぬまで戦い続けた前作とは違い、途中で何もない床をクリックすることで「逃亡」が可能になった。

ダンジョンに出現するモンスターは、その場に固定されており移動することはない。『Desktop Dungeons』をイメージしてもらうとわかりやすいだろうか。こちらからアクションを起こさない限り、プレイヤーの身に危険が及ぶことはない。事前にモンスターの強さを知ることはできず、実際に攻撃をしかけないとステータスは表示されない。攻撃は自動でおこなわれ、途中で逃げなければどちらかが死ぬまで戦い続ける。戦ったモンスターの特徴(基本能力や弱点属性など)を覚え、いま攻撃すべき相手を考えながらダンジョンを進めていく。この部分が、本作が持つパズル要素なのだろう。

 

Escape Wings
Escape Wings

ダンジョンから町に戻る手段は二つある。一つは「死」だ。もう一つは「Escape Wings」で脱出することである。この「Escape Wings」は、ダンジョン内の宝箱から入手できる。使用すれば、それまでに手に入れた高性能の装備品(Artifact)、基本能力を上昇させる数種類のGem、拾い集めたコインを持ったまま町に戻れるのだ。とても貴重で出現率の低いアイテムのように感じるかもしれないが、ダンジョン探索をスタートさせて数分で手に入ってしまう。もしかすると次の戦闘で死ぬかもしれないというプレッシャーを感じながら次の階へ進み、レベルを上げて獲得したポイントをスキルツリーに割り振り、基本能力や特殊なボーナス(獲得コイン増加)などをアップグレードし、それまでの戦利品を引き継いだまま「Escape Wings」で町に帰還し、再びダンジョンへ挑む。

 

レベルアップで得られるスキルポイントは「3」
レベルアップで得られるスキルポイントは「3」

『The Enchanted Cave 2』に登場するダンジョンは一つのみだが、10階ごとにフロアの雰囲気と出現するモンスターが変化する。基本的には10階進むたびに(特定の階を除く)、アイテムの売買が可能な商人や、装備のエンチャントやポーションを作成できる「Forge」が出現する。そして、次回ダンジョン探索を開始するときに、フロアを選択できるようになる。たとえば25階まで進み、「Escape Wings」を使って生きたまま町に戻ることができれば、次回は20階からスタートできる。もちろん1階や10階からでも可能。チェックポイントだと思えばいいだろう。「死」のペナルティは緩いものの、100階を目指すとなるとチェックポイントはとても重要である。

黄金に輝くレアアイテム「Artifact」。出現率は高く簡単にそろう。
黄金に輝くレアアイテム「Artifact」。出現率は高く簡単にそろう。

ローグライクと聞けば、ゲーム難度が高いものをイメージするだろう。たとえば、現在Steamでサマーセール対象になっている『Dungeonmans』や『Sproggiwood』などもマウスだけで気軽に遊べるのだが、ダンジョン内での一歩には重みがある。生と死は、つねに隣り合わせだと感じるはずだ。しかし本作『The Enchanted Cave 2』は、ゲームの難度調整に疑問を抱いてしまう。シンプルに言うと、「終盤のボス戦までは、ただマウスの左ボタンをクリックし続けるだけ」である。当たり前のように強力な装備が出現し、わずか数時間で伝説の英雄になったかのように強くなる。30階あたりまで進めば、モンスターの強さを事前に知ることができなくても、何も恐れずに左クリックするようになるだろう。それを良い意味で裏切るような工夫もないのだ。もし同じような不満を感じたのであれば、遊び方を変えてみるといい。

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適当に左クリックを連打し、ある程度先に進めば「Escape Wings」を使って脱出する。この安全第一なゲームプレイは、『The Enchanted Cave 2』の本来の遊び方ではない。極端なことを言えば、本作は一度も町に帰還することなくクリアを目指すゲームなのである。それを目指すとなると、過去に戦ったモンスターがまとめられているBestiary(モンスター図鑑)を確認してから戦うべき相手を慎重に選び、敵の弱点をつけるように複数の属性を持った装備を集め、できる限りポーションを温存しながら、先を見てスキルツリーを伸ばしていかなければならない。ゲーム開始時に難易度を選択するのではなく、どのように遊ぶかで難度が変化していくのだ。

1作目と同じように、『The Enchanted Cave 2』にも無料のブラウザ版(Kongregate/Armor Games)が存在する。有料版との違いは、フロアやアイテムの数などが中心で、無料版はお試し版といった位置づけのようだ。上記のフリーゲームサイトで軽く遊んでみて、何かひかれるものを感じたのであれば購入を検討するといいだろう。早くクリアすることを意識しなければ、約10時間ほどで地下100階にたどりつけるはずだ。

ちなみに、ゲーム内の音楽はGrant Kirkhope氏が作曲したものである。