2002年に発売された自主制作ゲーム『Funny Pizza Land 3D』ピザ屋が見る汚泥の悪夢
「One Coin Gamer」 は、1コインつまりは定価500円以下で購入できるゲーム(ただしモバイル向けを除く)を紹介する連載企画。サクッとプレイできる良いゲームを求めている 人、奇天烈なゲームを求めている人、とにかくお金を節約したい人たちに向け、魑魅魍魎の低価格帯ゲームを実際にプレイし、紹介してゆく。第5回目は 『Funny Pizza Land 3D』をピックアップする。現在はitch.io.にて販売されており、価格は4.99ドル。
『Funny Pizza Land 3D』は、ドイツ人のインディーゲームデベロッパーStefan Roman Hosch氏に よって「3D GameStudio」で開発された。2002年にCD-ROMを介して販売されていたという作品で、当時の言い方に習うならば、自主制作ゲームといった ところだろうか。推奨ハードスペックには「Pentium III 500 MHz」や「128 MB RAM」が並び、対応OSは「Windows 98/ME/2000/XP」である。Windows 7上で起動すると、カットシーンが再生されないバグが存在するが、データフォルダ内から視聴することができる。あるいは開発者が公開しているプレイ映像を 見るといい。
2002年の自主制作ゲームとしては珍しく、本作は全編3Dグラフィックを採用したアクションアドベンチャーゲームだ。プレイヤーは小さなピザレストラン のオーナー「ペドロ」となり、金欠状態から脱するため、懸賞金がかかっているという頭がテレビの「グローバル・メディア・モンスター」を倒すことになる。 ピザレストランが登場するゲームと言えば最近では『Five Night at Freddy’s』が人気だが、本作はより奇っ怪だ。
この皮を剥かれたワニのような頭をした小太り男がペドロだ。前述したように、プレイヤーはペドロを操作してグローバル・メディア・モンスターを見つけ出 し、倒さなければならない。序盤は基本的にノーヒントであり、Iキーで表示されるマップも1枚絵のアートワークで、一体自分がどこに居るのかもわからな い。アローキーで移動、Homeキー(pos1キー)でジャンプという謎の操作設定に苛立ちながら、街の中央にある免税店の女性に会いに行こう。彼女が言 うには、ピザランドの地下墓地深くに住んでいるモンスター「モラク・マム」が、彼の居所を知っているそうだ。
石像が歩く森を抜け、地下墓地へと到達すると、胎児とイモ虫を融合させ尻にドライヤーを突き刺したようなモラク・マムと出会う。彼女はグローバル・メディ ア・モンスターにかつて戦いを挑んだそうで、5年前に敗北を喫し、子供たちをすべて失ったそうだ。グローバル・メディア・モンスターに囚えられたという彼 女の最後の息子を救うため、次にペドロは城へと向かうことになる。
モラク・マムの息子を救いだすと、ペドロは「エクストラ・ピザ・パワー」を手に入れる。モラク・マムの友人であるという「スペンサー」の導きのも と、ついにグローバル・メディア・モンスターと対峙したペドロは、パワーによって”拳銃を持ったまったく別のおっさん”に生まれ変わる。ペドロは無事グ ローバル・メディア・モンスターを倒し、免税店の彼女と結婚し、ハッピーエンドを迎える。
……と思いきや、エンディングが終わったあと、ペドロが砂嵐の音を出すテレビの前で飛び起きるプレイシーンが始まる。どうやら本作は、ペドロが見た一夜の悪夢ということだったようだ。
あまりにも奇っ怪な世界観に閉口するかもしれないし、実際に購入したのならば、そのイマイチな操作感にプレイを放り出すかもしれない。UIが常に画 面右側にデカデカと表示され、一部のSEやBGMは妙に大きく耳が痛くなり、スタックといったバグがいくつもある。現代のプレイヤーが触れたのなら、本作 はまるで汚泥で描かれた悪夢といったところだろう。
しかし意外にも、『Funny Pizza Land 3D』は奇妙な3Dアクションアドベンチャーを”やろう”としている作品だ。スイッチで動作するオブジェクトやジャンプアクション、情報を集めてゲームを 進めていく進行デザインなど、この作者が3Dアクションアドベンチャーが好きなことが伝わってくる。タイトルについた「3D」は『スーパーマリオ3D』へ の敬意の現れなのかもしれない。2002年にこのゲームに触れていたのならば、きっと「1人で作ったのかよ!」と驚いたことだろう。
『ゼルダの伝説 風のタクト』が同年発売されたことには目を瞑ろう。もちろん悪夢のような強烈な世界観とビジュアルも本作の魅力であり、『アリス・イン・ナイトメア』など が好きなのならば、プレイ映像を見るだけでも十分に価値はある。ゲームプレイはわずか30分で終わるので、薄い雑誌を買うか短編映画でも見るつもりで、 4.99ドルを支払うのもいいかもしれない。