弾を斬って撃ち返せ、SFアドレナリン全開の2Dアーケードアクション『UBERMOSH』

「One Coin Gamer」は、1コインつまりは定価500円以下で購入できるゲーム(ただしモバイル向けを除く)を紹介する連載企画。第1回目は、『UBERMOSH』を紹介する。価格は198円。

インディーゲームの流行により多数の作品が生まれ、Steamで配信されるゲームの本数は爆発的に増加している。Steamキュレーターなど作品を紹介してくれるシステムは誕生しているが、それでも注目されないゲームは地下へ地下へと沈んでしまう状況だ。その中には低価格の作品も数多く存在するが、学業や仕事や家事に従事している一般的なプレイヤーなら、全てをプレイし切ることは難しいだろう。

One Coin Gamer」は、1コインつまりは定価500円以下で購入できるゲーム(ただしモバイル向けを除く)を紹介する連載企画。サクッとプレイできる良いゲームを求めている人、馬鹿馬鹿しいゲームを求めている人、とにかくお金を節約したい人たちに向け、低価格のゲームをピックアップしてゆく。第1回目は、『UBERMOSH』を紹介する。現在Steamにて早期アクセスを利用して配信されており、価格は198円。


ビーム長刀で戦う女戦士と血のアリーナ

 

飛び交う弾丸のなか戦う女戦士
飛び交う弾丸のなか戦う女戦士

『UBERMOSH』は、Walter Machado氏が開発しているアーケード2Dアクションゲームである。Machado氏は、ほぼ無名のインディーデベロッパーだが、『GEARCRACK Arena』の開発者と言えばピンと来るごく少数の人もいるかもしれない。『GEARCRACK Arena』は2014年5月に98円でリリース、さらにセール時には9円で販売されていたタイトルだ。敵にただ突撃するだけの酷いゲーム内容とあいまって、「格好良いサウンドトラックとSteamトレーディングカードが9円で買える作品」などと揶揄され、一部コアなプレイヤーやSteamユーザーから認知されていた。開発者自らがFacebookの公式ページのジャンルを”おふざけ”とも設定しており、ジョークに近い形で販売されたタイトルなのかもしれない。

では『UBERMOSH』はどうだろうか。価格以上の価値があるとは断言しづらいが、これが意外にも遊べる作品に仕上がっている。世界観はサイバーパンク、ストーリーは不明だ。プレイヤーはビーム長刀と銃を操る謎の女戦士となり、周囲360度から襲い来る敵を殲滅してゆく。ゲームはライフ制(ゲーム中では”Respawn”と表記されている)であり、敵の撃ったビーム弾に触れる度ライフが減少してゆく。ライフがゼロになることなく90秒間生き延びれば無事クリアだ。90秒間で何体の敵を倒すことが出来るか、スコアアタックの要素もある。

女戦士の初期武器はビーム長刀のみであり、右クリックでマウス照準のある方向へ振り回すことが出来る。敵を斬り殺すだけでなく、敵が放った弾丸を切り裂き、さらには跳ね返す特殊能力があるのが特徴である。また、倒した敵が落とす銃に触れることで、その銃を装備し、左クリックで撃つことができる。現状では一種類の銃を除き、触れると自動的に銃を持ち替える仕様だ。残弾設定などはなく、好きに撃ちまくればよい。

 

熱い2Dアクション、まだまだ改善できるはず

 

トップビューの2Dアクションと言えば、流行りは『Hotline Miami』だが、『UBERMOSH』の構造は『Geometry Wars』に近い。周囲に敵がリスポーンし、大挙して押し寄せてくるので、それを避けつつ倒してゆく。刹那の緊張感が連続し、ヤミツキのゲームプレイとなる。
トップビューの2Dアクションと言えば、流行りは『Hotline Miami』だが、『UBERMOSH』の構造は『Geometry Wars』に近い。周囲に敵がリスポーンし、大挙して押し寄せてくるので、それを避けつつ倒してゆく。刹那の緊張感が連続し、ヤミツキのゲームプレイとなる。

開発者が「ピンボールテーブルやコインアーケードマシンのように、『UBERMOSH』は数分でアドレナリンをぶちこむ」と伝えるように、本作はわずか90秒ながらも熱く濃厚な2Dアクションが楽しめるタイトルだ。『Risk of Rain』に似て、ステージ上に登場する敵は時間経過と共に増加し、後半にもなると銃火の嵐が巻き起こる。敵に撃たれる前にこちらが敵を撃ち抜き、弾丸が自分の身に迫る場合はビーム長刀で撃ち返す、刹那の戦いが連続して続く。激しいのがお好きなアクション愛好家なら、ヤミツキになってしまうだろう。弾丸の嵐をくぐり抜けハイになる感覚と、何度もプレイし直してしまう中毒性の高さは、『Geometry Wars』を思い起こさせるところだ。BGMも前作『GEARCRACK Arena』に続き、サイバーパンク臭でむせ返るほど格好良い。

早期アクセスタイトルであることを改めて明記しておくが、本作はまだまだ面白い作品となれるはずである。現時点でコアのゲームプレイは完成しているが、最大の問題はグラフィックが異なるだけで、ほぼ同じような敵や武器が並んでいる点だ。小さな人型の敵も大型の敵も一撃で死んでしまい、武器も多少の違いはあるものの、ほぼ同じ感がある。銃や敵キャラクターの差別化は必須で、例えばショットガンやマシンガンのように武器を特色づけたり、巨大で固いが足は遅い敵を用意するなどして、より多様な戦略を用いるようプレイヤーに強要すべきだ。敵側にもヘルス制を導入したり、武器にダメージ値を設定することも必要だろう。

インターネットの海から探し出せば、『UBERMOSH』と同じような内容で、かつコンテンツが豊富であり面白い2Dアクションゲームは多々あるかもしれない。『UBERMOSH』のステージは自動生成されるが代わり映えはせず、クリア時に登場するイメージも虚しく、ユーザーインターフェイスも酷い。だが、198円で本作を購入し、2時間ほど遊んで、開発者が本作を完成させてくれることを願うのも悪くはないだろう。ビーム長刀と銃を操る女戦士と、血肉と銃弾が吹き荒れるアリーナ、ヤミツキの2Dアクションがプレイヤーを待ち受けている。

 

Shuji Ishimoto
Shuji Ishimoto

初代PlayStationやドリームキャスト時代の野心的な作品、2000年代後半の国内フリーゲーム文化に精神を支配されている巨漢ゲーマー。最近はインディーゲームのカタログを眺めたり遊んだりしながら1人ニヤニヤ。ホラージャンルやグロテスクかつ奇妙な表現の作品も好きだが、ノミの心臓なので現実世界の心霊現象には弱い。とにかく心がトキメイたものを追っていくスタイル。

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