『System Shock 3』にはやはりテンセントが関与。一方権利元は「テンセントがIP獲得」という報道にお怒り
『System Shock 3』開発元のOtherSide Entertainmentは5月20日、『System Shock』シリーズの開発に中国テンセントが関与していると発表した。具体的にどのように関与しているかは不明で、「シリーズを前進させてくれる」「小さなスタジオなので自分たちだけでプロジェクトを続けていくのはかなり大変であるが、テンセントの能力と専門知識はフランチャイズをさらなる高みに引き上げてくれる」と語っている。先日テンセントが「SystemShock3.com」および「SystemShock4.com」のドメインを取得したことが報じられていたが、どうやら開発もしくは販売に何かしら絡んでいるようだ。一方で、『System Shock』シリーズのIPを取得したわけではないという。
『System Shock 3』は、人気シリーズ『System Shock』最新作。初代に関わったスタッフも在籍するOtherSide Entertainmentのもと、アメリカにて開発されている。しかしながらパブリッシャーを務める予定だったStarbreezeグループが経営不振に陥った関係で、開発途中でかわりのパブリッシャー探しに奔走することに。その後、主要スタッフの離脱やゲームエンジン変更による開発難航などが報じられ、さらにパブリッシャーも見つかっておらず、新作のリリースそのものが危ぶまれていた。
そんな中テンセントによるドメイン取得が報じられ(関連記事)、この度正式にテンセントがシリーズに関与していることが明らかになった。テンセントといえば、潤沢な資金を保有する巨大企業であり、前途有望なゲーム会社と資本提携をすることも多い。つまるところ、今回の発表は『System Shock 3』においてOtherSide Entertainmentへなんらかの資金提供がなされていると解釈できる。今後テンセントが『System Shock 3』の権利を購入し、パブリッシャーを務めるという可能性もあるだろう。
メディアやインフルエンサーが「テンセントがIPを獲得か」と報じたが、この報道に怒れる会社があった。権利元のNightdive Studiosである。Nightdive Studiosは『System Shock』シリーズのIP(権利)を保有している会社で、現在『System Shock』リメイクの開発を進めている。OtherSide Entertainmentは、Nightdive Studiosの許可を得て、『System Shock 3』を制作しているという背景がある。Nightdive Studios のCEOであるStephen Kick氏は、今回の件を受けて「テンセントがSystem ShockのIPを獲得か」というツイートをしたインフルエンサーのNibel氏に対し「フランチャイズとIPはNightdiveが保有している、誤った情報を流さないでくれないか」とチクリ。Nibel氏は謝罪し、当該ツイートは削除された。
考えられるパターンとしては、OtherSide EntertainmentはNightdive Studiosから許諾を得て『System Shock 3』開発を進めており、OtherSide Entertainmentとテンセントが資本提携をした、といったところだろうか。ただし、タイトル名のドメインを保有するという点では、単なる協力関係以上の影響が見て取れる。OtherSide Entertainmentはテンセントとの関係性についてはっきりと言及しない以上は、踏み込んだ予想はできないが、ともかく『System Shock 3』の開発は大きく動き出すと思われる。
なおOtherSide Entertainmentの今回の発表に対しては、喜びの声と中国企業が関与することへの失望の声が入り混じっている。テンセントやNetEaseなど資金力のある中国企業が、ゲームスタジオに投資する流れはここしばらく続いている。ゲーム業界における中国企業の影響力は、もはや無視できない段階にある。