料理体験ゲーム『クッキングママ』シリーズが契約をめぐり泥沼。 権利元が海外メーカーを批判、低品質や契約違反を訴える


株式会社オフィス・クリエイトは4月15日、「『Cooking Mama: Cookstar』についての重要なお知らせ」を公式サイトに掲載した。同社は料理体験ゲーム『クッキングママ』シリーズの権利元。その最新作である『Cooking Mama: Cookstar』は、アメリカのパブリッシャーPlanet Entertainmentから今年3月に海外でリリースされたが、その販売活動において契約違反行為がおこなわれていると主張している。

オフィス・クリエイトによると、Planet EntertainmentとはNintendo Switch向けの『クッキングママ』作品を米国・欧州にてリリースするために2018年8月にライセンス契約を締結。これを受けて、Planet Entertainmentは『Cooking Mama: Cookstar』の開発をスタートしたが、そのゲームの品質はオフィス・クリエイト自身が手がけるシリーズ作には遠く及ばず、「到底お客様にご満足頂けるものではない」と判断。ゲーム内容の修正を再三指示してきたものの、Planet Entertainmentはそれに従うことのないまま、同作の製造・発売をおこなったという。

レビュー集積サイトMetacriticを見てみると、サンプル数は少ないもののメタスコアは40と、同シリーズ作の中でもとりわけ低評価となっている。シリーズの過去作と比較して目新しい要素が実質的に何もないことや、不愉快な吹き替え、使い勝手の悪いモーションコントロールなどが評価を下げた理由として挙げられている。

さらに、両社の契約では上述したとおりNintendo Switch版の開発を対象にしていたが、Planet Entertainmentおよびその欧州販売代理店は、欧州にてPS4版の販売・宣伝をおこなっていることも判明。確かに、流通大手Koch Mediaには本作のPS4版のページが用意されており、また一部販売店では予約受付も開始している。オフィス・クリエイトはPS4版の発売については一切許諾していないとし、一連の違反行為を受けて3月30日、Planet Entertainmentに対してライセンス契約の即時解除を通知したとのこと。ただ、『Cooking Mama: Cookstar』の販売・宣伝は現在も継続されている状態である。

『Cooking Mama: Cookstar』のNintendo Switch版を巡っては、今年3月末に発売されたものの、ニンテンドーeショップから突如姿を消し話題となった。理由は定かではないが、タイミングとしてはオフィス・クリエイトが契約解除を通知した時期と重なっており、同社から任天堂に申し立てがおこなわれたのかもしれない。

また今回の件とは直接関係ないと思われるが、Planet Entertainmentは当初、本作には暗号通貨の取引にも利用されているブロックチェーン技術を導入し、ユーザーごとに異なるゲーム体験を届けると謳っていたものの、製品版にはそうした技術は一切実装されていないことが、開発を担当した1st Playableによって明らかになっていた。ニンテンドーeショップから取り下げられた際には、Planet Entertainmentの過去の宣伝文句から、本作を通じて暗号通貨のマイニングをおこなっていたのではとの噂まで流れたが、結果的にそうした事実はなかったことがわかったと同時に、本作の特徴的な機能はコンセプトのまま終わったことが判明した形だ(関連記事)。

https://twitter.com/CookstarMama/status/1249035216129163264

Planet Entertainmentは、オフィス・クリエイトからライセンス契約の解除を通告された後も『Cooking Mama: Cookstar』のパッケージ版の販売を継続。ニンテンドーeショップのダウンロード版は販売停止されたままだが、同社は現在世界が直面している苦境に関連づけて、販売再開が遅れているという旨の発言をしている。またアップデートの配信もおこなっており、契約解除を受け入れている様子は見られない。

今回の発表の中でオフィス・クリエイトは、同社の重要な資産である「クッキングママ」シリーズの保護などを目的に、Planet Entertainmentに対して法的措置を講じるべく検討中だとしている。一方のPlanet Entertainmentは、これに対して現時点では反応を示していない。

【UPDATE 2020/4/16 9:50】

https://twitter.com/CookstarMama/status/1250507324596211713

Planet Entertainmentは4月16日、『Cooking Mama: Cookstar』の公式Twitterアカウントを通じて声明を発表し、今回のオフィス・クリエイトの主張に反論した。まず本作の開発時に、オフィス・クリエイトは品質の低さからゲーム内容の修正を再三指示していたという点について。Planet Entertainmentは、本作のゲームデザインの詳細は2019年に承認を得ており、同社および開発元1st Playableはそのとおりに制作したと主張。Nintendo Switch向けに発売された本作は、まさにそのゲームデザインを擁しており、さらにオフィス・クリエイト側からのゲームプレイの価値を高める多くの提案も盛り込んであるとしている。

一方で、本作が完成に近づいた段階において、クリエイティブ面での意見の相違が存在したことは認めている。ただし、それは両社の合意の範囲外のことであり、ゲームデザイン自体はオフィス・クリエイトが承認した内容であるとのこと。Planet Entertainmentは、本作は非常に好評であり、ベジタリアンモードやユニコーンフードなどの新要素にクッキングママファンは夢中になっていると主張した。

PS4版の発売は許諾していないと指摘された点については、Planet Entertainmentは『Cooking Mama: Cookstar』を販売する権利を完全に保有していると反論。現時点では訴訟は起こされておらず、本作の販売を妨げるものはないとした。同社は、オフィス・クリエイトを全面的に尊敬しているとし、感謝の言葉にて声明を締めくくっている。