父と娘のあいだで語られる3D飛翔アクション 『A Story About My Uncle』

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週刊で複数のタイトルを取りあげていくIndie of the Weekに対し、Monthly Indieは毎月1本のインディーゲームに深く切りこむ姉妹企画です。6月のE3 2014では、『No Man's Sky』がGame Critics Awardsに初めて設立されたインディーゲームアワードを受賞しました。また2Dアクションの芸術性を開花させた『Limbo』の開発スタジオPlaydeadから新作『Inside』が発表されています。しかし今回は、そのE3からおよそ2週間前ほど前にひっそりとリリースされた『A Story About My Uncle』をピックアップしましょう。

『A Story About My Uncle』は1人称視点のグラップリングアクションゲームです。プレイヤーの視点はある1人の父親に設定されており、夜になってもなかなか寝つかない娘に「なにかお話を」とせがまれるシーンから物語は始まります。父親は若き日を思い出しながら、少年の頃に冒険家であった叔父Fredが失踪してしまったこと、そして彼を探すため今度は自身が異世界で大冒険を繰り広げたことを語りかけてゆきます。プレイヤーは父親と娘のナレーションを聞きつつ、現実に存在するとは思えないような奇妙で美しい世界を、父親の記憶という形で追体験するのです。

暗闇のなかを多数の電飾がいろどる地下世界、見たこともないようなクリスタルが量産されている浮き島、謎の刻印と建造物が散りばめられた氷世界など、ゲーム内では次々と奇妙な舞台が登場します。世界観は地球の中心を目指すジョージ・ヴェルヌの小説『地底旅行』のようです。冒険譚でありつつもサイエンス・フィクションの要素もあり、力強い世界観描写を取り入れている点は、昨年リリースされた名作3Dアクション『ブラザーズ:2人の息子の物語』を想起させます。

プレイヤーは失踪した父親を探すなかで特殊なスーツを手に入れ、スーパージャンプやグラップリングフックといった様々な機能で異世界を進んでいきます。チャージ式のスーパージャンプは、そのまま発動すると上方向に、また走りながら使用すると軽く50メートルは前方向へ飛翔できる代物です。グラップリングフックは手の平から伸縮性のビームフックを放出する機能で、空中にいるあいだ3回まで岩肌や地面に放ち、自身を引き寄せつつスパイダーマンのごとく移動します。プレイする感触を例えるならば、1人称視点にした『バイオニックコマンドー』、あるいは『海腹川背』が最も近いでしょう。

 

 

プレイメカニックでの魅力は独特の浮遊感を持つ移動アクションに集約されています。同じ一人称視点の移動アクションゲームには『Mirror's Edge』が存在しますが、同作のようなタイトな感触ではなく、むしろ爽快感重視。たとえ背景の単なるイメージに見えるような風景も、スーパージャンプで空中へ飛び出し、グラップリングフックで空飛ぶ岩を捕まえ振り子運動でさらに加速すれば、ものの数秒でたどり着いてしまいます。ゆるやかながらも雄大で自由度が高い『A Story About My Uncle』の移動アクションは、あらたな世界観を次々と発見しワクワクするゲーム序盤から中盤の興奮とよく馴染みます。

このややゆるい展開が最後まで続くわけではありません。ゲーム中盤から後半にかけて、空中でさらに加速できるシューズ型の新装置や、ビームを放てばグラップリングフックの制限回数を回復することができるクリスタルと、新しいメカニックが導入されます。後半はチャレンジングな場面が連続し、3Dジャンプアクション好きでもそれなりに楽しめる難易度にしあがっています。また多くの装置が登場しレベルデザインがより複雑になると、それにともないストーリーやプレイヤーが進む舞台も厳しさを増していくのです。

ただし1ステージが冗長であり、とくに後半では難易度もあいまって終盤やや飽きを感じてしまう点は同作最大の問題です。レベルデザインは歯ごたえがあり凝っている場面もあるものの原則的に長い長い1本道にすぎません。2周目や既存のステージを使いまわしたタイムトライアルに挑戦する気にはなりません。またプレイヤーが世界へと干渉できず、ただ綺麗なワールドを通りすぎてゆくにすぎない点も感じられ、本作の世界観を活かしきれていないように思えます。素晴らしいメカニックや世界観はあるものの、それを調理しきれていない。大きな可能性が感じられるも、現時点での本作への評価は「ちょっといい小粒のインディーゲーム」にとどまります。

 

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とは言え、スウェーデンのストックホルムに位置する小さな開発スタジオGone North Gamesは、この雄大なワールド描写とメカニックを第1弾タイトルにして築きあげました。スタジオは9人の情熱にあふれた学生開発者で構成されています。『A Story About My Uncle』に関してはグラップリングアクションと謎を含んだストーリーが魅力であると解説しており、「同作は1人称視点ゲームだが、非暴力的なゲームプレイと印象的なストーリーおよび雰囲気で引っ張っていく作品だ」とアピールしています。

学生たちがこのような雄大な世界観を生み出したのと同等に、同作のパブリッシングを同じくスウェーデンに位置するCoffe Stain Studiosが担当しているのも興味深い点です。Coffe StainはタワーディフェンスFPS『Sanctum』、ここ最近はヤギシミュレーターこと『Goat Simulator』でも名を広めたスタジオです。後者はともかくとして、思い返してみると『Sanctum』も独自のSFワールドと雰囲気を築いた作品でした。スウェーデンのインディーといえば『Minecraft』を開発したMojangの名がまず挙がりますが、彼らとは異なる独自の魅力がある素敵なゲームを今後も輩出してくれそうな予感がします。

『A Story About My Uncle』は、現在Steam公式サイトなどで発売中です。

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Shuji Ishimoto
初代PlayStationやドリームキャスト時代の野心的な作品、2000年代後半の国内フリーゲーム文化に精神を支配されている巨漢ゲーマー。最近はインディーゲームのカタログを眺めたり遊んだりしながら1人ニヤニヤ。ホラージャンルやグロテスクかつ奇妙な表現の作品も好きだが、ノミの心臓なので現実世界の心霊現象には弱い。とにかく心がトキメイたものを追っていくスタイル。

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