Ludum Dare 34の最優秀作品は『Slash Quest』と『Frank & Stein』。制限時間内に完成した奇抜なゲームを紹介
すこし日数が経過してしまったが、昨年の12月に開催されたLudum Dare 34の結果が現地時間の1月5日に発表された。エントリー総数は2870タイトル。Ludum Dareは制限時間内に決められたテーマに沿ってゲームを制作するイベントである。34回目は「Two button controls」と「Growing」というふたつのテーマが投票によって選ばれ、どちらか片方、または両方のテーマ沿ったゲーム制作がおこなわれた。
Slash Quest(Jam)
Jam(チーム参加可能・72時間)の最優秀には『Slash Quest』が選ばれた。開発を手がけたのは、昨年Curve Digitalが主催した「OlliOlli SkateJam」にて『Manuel』を制作したLudum Dare常連のBig Green Pillowと、『Tiny Empire』などモバイルゲームを中心に展開するMother Gaia Studioのタッグ。
『Slash Quest』は、「Two button controls」と「Growing」ふたつのテーマに沿って制作された回転切りアクション。キーボードの「A」を押せば剣を左回転、「D」なら右回転させることができる。といってもその場から微動だにせず回転しつづけるゲームではなく、不気味な植物が生息する湿地帯を歩き、ゴールを目指すアドベンチャーゲームである。ふたつのボタンが攻撃に割り当てられているので、移動方法をイメージできないかもしれないが、実際にプレイしてみるとその方法はすぐにわかる。「A」と「D」両方のキーを同時に押すことで、キャラクターは前進できるのだ。しかしそれでは行きたい方向に移動できないのではないかという疑問が発生するだろう。そこで本作は、剣が向いている方向のみに前進できるという仕組みになっている。また、キーを2回連続で素早く入力することで、短距離のダッシュも可能だ。「Two button controls」を最大限活用した操作方法は見事である。
前述したように、『Slash Quest』はふたつのテーマに沿って制作されている。残りの「Growing」はどうなっているのかというと、それは剣の成長である。かわいらしいモンスターを切ると、剣はどんどん長く成長していく。剣が長くなればモンスターを倒しやすくなるだけでなく、となりの島へと移るための橋を出現させることができるようになる。しかし良い点ばかりではなく悪い点もある。岩などの障害物に剣がぶつかりやすくなり、剣自体がダメージを受けて短くなってしまうのだ。剣の長さが足りなければとなりの島へ移動することはできず、時間をかけてモンスターを狩りなおさなければならない。
残念なのは短時間でゲームが終了してしまうという点だろう。Big Green PillowがLudum Dare 28で制作した『Porcunipine』は、のちにitch.ioやSteamで正式リリースされたので、もしかすると本作もステージ数を増やした製品版が登場するかもしれない。
Frank & Stein(Compo)
Compo(ひとりで参加・48時間)の最優秀に選ばれた『Frank & Stein』は、京都在住のフランス人Thomas Olsson氏によって制作された。氏のLudum Dare 33作品である『Back for Dinner』もなかなか楽しいので遊んでみてほしい。
『Frank & Stein』は、伸縮するチューブのようなものでつながったふたりの男をゴールへと導くパズルゲーム。ふたりが離れすぎるとチューブがちぎれてゲームオーバーとなってしまうので、Frankの「F」とSteinの「S」キーを駆使して距離を考えながら進んでいかなければならない。どちらか片方が死んでしまってもゲームオーバー。ステージ上の仕掛けを解くためにふたりを別々に行動させなければならない場面では、どちらのキャラクターも前にしか進めないという点に気をつけて遊んでほしい。
ふたりのキャラクターには特徴がある。Frankはショットガンを使った攻撃(FとSを同時押し)で奇妙な敵を倒したり、壁を破壊したりできる勇敢な性格の持ち主。Steinは臆病で、攻撃などはできないのだが……ネタバレになるので説明はやめておこう。まずは遊んでみてほしい。
各ステージにはFrankとSteinを引き離そうとする、または即死させようとする仕掛けがいくつか登場する。それらは、目を見張るほど斬新というわけではないかもしれない。しかし、短時間で作り上げたことを考えると驚くだろう。ゲームの進行ペースに緩急をつける工夫もあり、最優秀に選ばれたことに納得できる出来栄えだ。
そのほか、個人的に気になった作品を紹介しておこう。
MILK TEETH(Jam)
残酷さを売り物にしたゲームはたくさん存在するが、自身が体験したことがない、またはしようがない残忍なシーンを見ても、実感できないから怖くないという人もいるだろう。『MILK TEETH』は、多くの方が経験する抜歯を、ふたつのボタン操作のみで楽しむ(?)ゲーム。作品ページのコメントにあるように、まさしく歯医者のトラウマ・シミュレーターである。ただ乳歯を抜くだけなのだが、今にも自分の歯がうずきだしそうな嫌な気分を存分に味わえる。いたた……。
Sprout(Jam)
『Sprout』はスライムのような異形のキャラクターが主人公のパズルアドベンチャー。序盤は「A」と「D」で左右に転がることしかできないが、アイテムを入手することで成長していき、ほかのアクションが可能になっていく。つねに液体を垂れ流していたり、水に飛び込むと溶けそうになったりと、ビジュアル面でも楽しませてくれる。
Ogre Smash(Jam)
『Ogre Smash』は、双頭のオーガが主人公のアドベンチャーゲーム。オーガが草原を歩いていると、スクリーンショットのようにさまざまなイベントが発生し、そのたびに選択肢が表示される。オーガといえば“間抜け”であり、ゲーム内でもそれがうまく表現されている。あなたは最後までたどりつけるだろうか。ちなみに、オーガの名前は自分で設定できるので、あなたがBlizzardファンなら「Cho」と「Gall」にして遊ぶのもあり。
Swamp Witch(Jam)
『Swamp Witch』は、カーソルキーの上下のみでプレイするシューティングゲーム。プレイヤーである魔女は自動で射撃と前進しつづけ、キー入力では左右への旋回しかできない。よって、敵を狙って撃ったり、攻撃を避けたりといった基本動作が難しく作られている。集めたコインを使って魔女をパワーアップさせるという要素もあり、リプレイ性も高めだ。作者のRhys Davies氏は、Ludum Dare 28で制作した『Fort Meow』をPCとiOS向けにリリースした経歴を持っている。
The Temple of Horyuji(Jam)
『The Temple of Horyuji』は、法隆寺の建設と防衛を楽しむストラテジーゲームである。2013年にフラッシュゲームとしてリリースされた『Kingdom』にインスパイアされた作品。左右のカーソルキーを使って移動し、左右同時押しで木を伐採したり岩を採掘して資源を獲得できる。法隆寺だけでなく、防衛のためのタワーなども建設できる。なぜなら、夜になると恐ろしいモンスターが法隆寺を破壊しにやってくるからだ。建設と防衛のタイミングを考えて効率よく進めていかなければならない。
Rebuild / Resist(Compo)
上で紹介した法隆寺と同様に、『Rebuild / Resist』は『Kingdom』フォロワーである。操作に使うキーはカーソルキーの左右か「A」と「D」のどちらかのみ。プレイヤーは真夜中の森を舞台に、木を伐採して材木を集め、壊れてしまった建築物の修繕し、さらなる性能の向上を目指してアップグレードしていく。あなたは、命を狙いにやってくるゴーストから身を守りつつ、キャンプファイアーを最大までアップグレードすることができるだろうか。
Hybris(Compo)
なにかに感染し、触手のようなものを成長させていく細胞を、すべて破壊すればステージクリア。『Hybris』は、1981年のアーケードゲーム『Spiders』の影響を受けたシューティングゲームである。作者は、すっかり「PICO-8」の魅力にとりつかれてしまったBenjamin Soule氏。
The Fastest Trigger In The West(Jam)
『The Fastest Trigger In The West』はガンマンによる早撃ちの決闘をテーマにした、反射神経が試されるアクションゲームである。ユニークなのは、敵の弾を撃ち消せるという点。上段と下段に撃ち分けながら攻撃を防ぎ、相手がリロードをするタイミングにあわせて弾を撃ち込んでいくと勝利しやすい。対戦プレイができれば、より楽しくなりそうだ。
次回Ludum Dare 35は2016年4月15日(現地時間)から開催予定。それまでに、世界規模のゲームジャムがあることを忘れてはいけない。1月29日(金)から31日(日)にかけて開催されるGlobal Game Jamだ。参加してみたいという方は、こちらから日本国内の会場を探してほしい。