『Berlin’82』カーチェイスゲームの皮をかぶった巧妙なイライラ棒
『Berlin’82』は強盗犯であるプレイヤーが警察に捕まらないよう車で街中を逃げ回り、道路に落ちている札束を集めてスコアを伸ばすゲームだ。どこかで聞いたことがあるテーマのような気もするが、本作はあくまで車と警察者のプレイヤーの追いかけっこに焦点が絞られている。アクセルが常に踏みこまれた状態で減速手段はハンドブレーキのみという一台の車を操作し、猛スピードでカーチェイスを繰り広げるのだ。Unityで開発されている個人制作のゲームであり、itch.ioにて無料でダウンロードできる。
上記トレイラーからは赤い車が次々と交差点を曲がり走っている様子が見て取れる。しかしこのような爽快感あふれるプレイはこのゲームにおいてかなりの修練を積んだ人でなくては不可能だ。ゲームを起動し、名前を入力するとタイトル画面が現れる。Startを押してみると3つの難易度から1つを選択することになる。初めて本作をプレイする人ならもちろん最低難易度のTrainingを選ぶことだろう、選ぶべきだ。マップ画面が現れカウントがゼロになると、いざカーチェイスの始まりだ。
おそらくほとんどの人は、覚えたての操作を駆使して加速ボタンを押してスピードを上げたり、対向車がいないからといって蛇行運転してみたりもするだろう。さあ交差点に進入、方向キーを入力してハンドルを切り……そう思ったころにはきっとあなたの車は壁かもしくは信号機に衝突しゲームオーバーとなっているに違いない。そう、このゲームは爽快感あふれるカーチェイスゲームという仮面をかぶった激ムズ障害物アクションゲームなのだ。交差点を曲がるときには早めに方向キーを入力し、さらに曲がった先でオブジェクトにぶつからず進んでいくにはキーを押している長さを適度に調節しなければならない。絶妙なテクニックを要するゲームなのである。
ハンドルを切りながらハンドブレーキを引くことでレースゲームではおなじみのドリフトを披露できるが、独特の慣性がはたらき手こずるに違いない。プレイヤーのうちどのくらいの人がこのテクニックを会得できるかは不明だ。操作に慣れないうちはぶつからないように走り続けることだけで精一杯になってしまいがちなので、警察の姿が見えるとむしろ喜びを感じてしまうかもしれない。しかし忘れてはいけない、これは警察からの華麗なる逃走劇を繰り広げるゲームなのだ。唯一の希望は、マップが固定であり、徐々に道順を覚えていけば攻略の糸口が見えてくるというところだ。筆者は本作をプレイしていて一世を風靡した“イライラ棒”の感覚を思い出した。だが、イライラ棒にはゴールが存在するが本作にゴールは存在しない。あくまでプレイヤーが納得する記録を叩き出すことがゴールだ。そう考えるうちに頭痛がしてきたので、コントローラーを置くことにした。
マップは1種類のみで、範囲外へ行くと対応したトンネルから元のマップへと接続する。カーチェイスもとい障害物競走をおこなう街は、同じくUnityで開発されている『Hitman GO』にも似たミニチュアのような可愛らしい見た目となっている。なお開発者はこのグラフィックを「角ばったひどいグラフィック」と表現し、自虐的な様子だ。難易度は易しいものから順にTraining、Normal、Hardとなっており、難しくなるにつれて車のスピードが速くなり、衝突の危険も増していく。これにたいし開発者は「Hardはクソすぎる。冗談だよ。ただ練習が必要だ!」と語っている。また、条件は明らかになっていないが隠しモードも搭載されているようだ。本作はXboxコントローラーにも対応しておりさまざまな操作のニーズにも対応している。「自分に合う操作方法がない」といった必要のないイライラにかられることはない。存在するのは自分の腕前によって発生するイライラのみだ。慣れるまでは数秒でゲームオーバーになってしまうものの、慣れてくれば高得点を目指すこともできるのでぜひ挑戦してみてほしい。ポップな見た目に反した容赦のないドライブのなかで、あなたは新たな感覚に目覚めるかもしれない。