「インディーゲームの移植ならまず相談してほしい」プログラミングオフィスたすや立石義人氏【GTMFミニインタビュー】

ゲーム開発ツール&ミドルウェアの祭典「GTMF2018」が6月27日にグランフロント大阪にて開催された。今回AUTOMATONでは、各企業の最近の動向や、少し変わった個人開発者のお話をコンパクトにお伝えしていく予定だ。第一弾となるのはプログラミングオフィスたすやの立石義人氏。

ゲーム開発ツール&ミドルウェアの祭典「GTMF(Game Tools & Middleware Forum)2018」が6月27日にグランフロント大阪にて開催された。東京会場は7月13日に秋葉原UDX GALLERY NEXT THEATERにて開催される予定だ。

会場ではゲーム業界向けの充実したセッションがおこなわれ、業界人にとって抑えておくべき必須の話から、普段あまり知ることができない専門的な話など、幅広い講演を聞くことができる。今回AUTOMATONでは、各企業の最近の動向や、少し変わった個人開発者のお話をコンパクトにお伝えしていく予定だ。

第一弾となるのはプログラミングオフィスたすやの立石義人氏。名古屋を拠点にしてゲーム・VR・遊技機開発を主におこなっている。Meet-Upsのインタビューを控える氏に、お話をうかがった。
https://www.unrealengine.com/ja/blog/ue4-udemy-umg

――自己紹介をお願いできますか。また、業務内容を教えていただけますか。

立石氏:
立石です、「たす」という名前でツイッターをしています。基本的にはフリーランスのゲームプログラマーで、最近だとNintendo Switchのゲームなどの業務を受託しています。

――タイトル名を言っても大丈夫ですよね。

立石氏:
言える範囲では『L.F.O. -Lost Future Omega-』ですね。

あとはUnreal Engineを使ったVRゲームやコンテンツづくり、コンサルティングの仕事まで、エンタメに関わる全体的な開発業務をやっています。

――Unreal Engineを使ったプロジェクトのヘルプが多いのでしょうか。

立石氏:
そうですね、どちらかというとヘルプの方が多いですね。自分でガッツリつくることもありますが。たとえば、VRだと私ひとりで開発することが多いです。Unreal Engineを使ってVR作品をつくりたい、という案件だとよく私に声をかけてもらえます。

――なるほど。立石さんはフリーランスになる前、どのようなキャリアを送られてきたのでしょうか。

立石氏:
2002年にパチスロメーカーに就職して、そこで3年ほどパチスロをつくっていました。その後は名古屋に引っ越し、名古屋の受託系のゲーム会社に5年ほどいました。パチスロメーカーにいたころからゲームをつくりたくて、縁があった名古屋に移ってゲーム会社に入ったのですが、受託かつパチンコ・パチスロの経験があるとなると、どうしてもそちらの仕事にまわされてしまって。

どうせパチンコ・パチスロの仕事をするなら実機に戻ろうと、パチンコメーカーに移りました。もう俺はパチンコで生きるんだと。ですが2年が過ぎ、やっぱり違うなと思ったのです(笑)。かといって会社に入るとパチンコ・パチスロの仕事にまわされてしまう。これはもう独立するしかないということで、2012年にフリーランスになりました。自分でゲームの仕事を取りにいけばゲームの仕事ができるということで、それから6年はフリーランスで活動しています。

――会社に所属されているときは、プログラマーをやられていたのですか。

立石氏:
そうです。ずっとプログラマーですね。

――担当分野としては受託開発されている業務と、会社在籍時代の経験がリンクしているのですね。

立石氏:
そうですね、もうずっとプログラマーとしてやっています。今も業務のメインとなるのはプログラミングです。

――たとえばどういう内容、どういう形でお仕事をすることが多いですか。

立石氏:
ほとんどは名古屋や東海圏でできる案件しか、やはり取れないです。名古屋で活動しているという関係上、通いでの仕事がしづらく、東京や大阪の会社さんに対してもリモートか名古屋でできる仕事をください、と伝えています。

業務の内容としては移植系が多いですね。すでにあるプロジェクトを一式もらって別のハードに対してプログラムをつなぎ変えて戻すというものです。また「こういうゲーム、こういうVRをつくりたいんだけど」と依頼をもらって、「わかりましたつくります」「つくりました」と、1からステージをつくったりもします。

――先ほどお話した『L.F.O.』の場合はどうでしょうか。

立石氏:
少し特殊なパターンです。『L.F.O.』はもともと私の友人が個人制作でつくっていた作品でした。これからゲームを展開できるのならしていきたいという話だったので、では一緒にやっていきましょうと、こちらからお声がけしました。そこからパブリッシャーさんにつないで、個人制作タイトルなのでNintendo Switchの移植版は、私がかわりにつくりましょうかと話を持ちかけました。

――『L.F.O.』に関しては、作り直し的なところはあったのですか。

立石氏:
そうですね、Nintendo Switch移植に向けて直すところは直しています。

――コンソール間の移植は任せて、と。

立石氏:
そうです、そうです。

――コンソール移植は難しい業務だと思いますが、どれくらいの規模であればできるのでしょうか。

立石氏:
あまりにも大きいプロジェクトになると難しいです。ただUnreal Engineとかになってくると、結局もともと動いていたものがあるので、ゲームのベース部分が動いていれば、移植に関しては、言い方は悪いですが移植するだけで済みます。そういう意味では、最適化しかしないです。Unreal EngineやUnityで動いているものを移植するのであれば、早ければ2か月から3か月で出せます。もとが違うエンジンであったり手づくりであったりすると、半年から1年という話にはなってきます。

――ちなみにHSPはどうですか。

立石氏:
HSPはDLLを呼び出したり複雑なことをしていなければ、いけると思います。

――Unreal Engineタイトルだけを受け持っているわけではないのですね。

立石氏:
はい、Unreal Engineに特化しているわけではなく、ひとつの手段として使わせてもらっています。Unreal Engine製も、OpenGLで書かれたiOSアプリの移植もします。もともとはOpenGLで書かれたiOSアプリを自分でつくっていた時期があるので、大体の移植はできます。ただ、3Dとかになってくるとまた話は変わってきます。あとはノベルゲームのツール系でエフェクトの種類が膨大にあるものだと、そのエンジンの機能をつくっていく必要があるので難しくなります。DXライブラリみたいなミドルウェアというか外部のライブラリであれば、半年前後での仕上がりになります。

――GameMaker Studioといった特殊なものは厳しいですか。

立石氏:
もちろん、その場合はきちんとつくり直すことになりますね。

――イメージとしては、インディーゲームの移植は幅広く対応できるということですね。

立石氏:
はい、そこは大きくやらせてもらっています。

――インディー系で今進行中のタイトルはありますか。

立石氏:
はい、まだ言えないタイトルのものがあります。

――たとえば、PCのUnreal Engine製タイトルをNintendo Switchに移植するといった相談もウェルカムでしょうか。

立石氏:
そうですね、ただ機材とか環境とかは会社ごとにお話させていただくことになるかなと思います。

――ちなみに、この規模のプロジェクトは無理だなと思ったものはありますか。

立石氏:
規模の問題ではないですが、やっぱり自社エンジン系ですね。

――それはもう、誰でも厳しいですよね(笑)。

立石氏:
あと、長くプログラマーをやってきているので、アセンブラなどもできます。その辺も読み書きできるので、アセンブラの仕事とかも実はやっています。パチスロの仕事で使う機会が多かったということも影響しています。

――何でも対応できるがゆえに、いろんなところにまわされてしまいやすいのですね。

立石氏:
そうですね、“何でも屋”力は高めですね。

――相談する分には、いろんな方向からウェルカムであると。

立石氏:
ご相談いただければ、思ったよりはお返しできることはあるのかなと思います。

――まずは社内と相談してみます(笑)。ありがとうございました。

 

 

[聞き手/写真:Minoru Umise]
[編集:Ryuki Ishii]

GTMF
GTMF(Game Tools & Middleware Forum)はアプリ・ゲーム開発・運営に関わるソリューションが一堂に会するイベント。2003年にスタートし、今年で16年目。大阪会場は2018年6月27日に開催されており、東京会場は7月13日に開催される。
 
Ayuo Kawase
Ayuo Kawase

国内外全般ニュースを担当。コミュニティが好きです。コミュニティが生み出す文化はもっと好きです。AUTOMATON編集長(Editor-in-chief)

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