CGを学ぶなら本場のプロから。有限会社フナコシステム澤江美知氏が語る「CG BOOSTERオンライン」とは。GTMF 2017 Meet-Ups

ゲーム開発ツール&ミドルウェアの祭典「GTMF(Game Tools & Middleware Forum)」内で開催される「Meet-Ups」の登壇者にフォーカスを当てインタビューするこの企画。第五弾は、有限会社フナコシステム澤江美知氏。

ゲーム開発ツール&ミドルウェアの祭典「GTMF(Game Tools & Middleware Forum)」内で開催される「Meet-Ups」の登壇者にフォーカスを当てインタビューするこの企画。第五弾は、有限会社フナコシステム澤江美知氏。

澤江氏は「つくる女」のディレクターとして幅広い活躍を見せているが、今回はアーティストを養成する「CG BOOSTERオンライン」を紹介するために登壇した。本場のプロから指導を受けられる少人数授業について、澤江氏に語っていただいた。

――自己紹介をしていただけますか。

澤江 美知氏(以下、澤江氏):
有限会社フナコシステムの澤江美知です。「チームつくる女」のディレクターもかねてやっております。今回は「つくる女」としてというよりも、フナコシステムの澤江として登壇しました。

――では改めてフナコシステムが手がけられる「CG BOOSTERオンライン」について説明していただけますか。

澤江氏:
オンライン講座の運営をフナコがやっています。株式会社GUNCY’Sと一緒にやっているプロジェクトです。この「CG BOOSTERオンライン」を簡単に説明すると、海外で、第一線で活躍しているCG業界の方にクリエイティブの技術だったり考え方だったりを教えてもらえるというものです。ちょっと今まで日本になかったような授業体制をとっています。

――ビデオで学ぶという形なのでしょうか。

澤江氏:
リアルタイムのテレビ会議システムを使っています。講師から直接指導を受けることができて、オンラインでのチェックバックもあります。授業の中で課題が出されて、その課題をクリアしていきながら、その課題をどういう姿勢で取り組んでいくかという点も話しつつ、アップデートしていく形です。

 

――講師の方は『アナと雪の女王』では背景のモデリングを担当した糸数弘樹氏や、Blizzard Entertainmentに在籍し『Overwatch』のショートフィルムの制作に携わる小池洋平氏など、名だたるアーティストがいらっしゃいますよね。そうした方のビデオ授業を見るのではなく、実際にアドバイスやフィードバックを受けられると?

澤江氏:
受けられます。また、他の受講者を含めて「こんな考えでこういう風に課題をこなした」というようなディスカッションをすることもできます。

――それはすごいですね。画面越しの授業があって、さらに個人個人でも対応してもらえると。授業形式はどうなっているんですか。

澤江氏:
基本的には少人数制のクラスで、グループ授業を受ける形になります。講師のPCのデスクトップが共有されているので、デスクトップ上で操作しながら課題をチェックしたり、コメントしたりする感じで授業が進みます。

――少人数のグループチャットのような感じなんですね。

澤江氏:
そうです。時間になったらクラスのビデオチャットルームに集合するやり方ですね。

――第一線で活躍されているアーティストに直接アドバイスしてもらえる機会は、なかなかないですね。

澤江氏:
そうなんです。たとえば、立体を作るうえで人体の基本的な構造を学ばなくてはならないのはもちろんなのですが、見る人が「愛らしい」と思えるキャラクターや表情を作るためには、その人のセンスに加えて、特別な専門知識が必要になると思うんです。ディズニーで仕事をされているアーティストさんなら、どうやれば「愛される顔」が作れるのかを理解されているのかなと。そういった知識を持っていると、自分のスキルになりますよね。技術向上にもなりますし、作品を作っていくうえでプラスになるだろうなって思います。

――本場ならではの部分も吸収できそうです。

澤江氏:
日本ってクリエイターの地位はまだまだ低いと思うんです。アメリカではすごく大切に扱われると言ったら変ですけど、アメリカではスーパークリエーターの人たちって、スポーツ選手みたいな感じなんですよね。でも日本って、どちらかというとアニメーション業界は賃金が安いみたいな問題ばかりがニュースになったりするじゃないですか。「クリエイターはもっと評価されるべきだし、若い人たちが将来の選択肢としてクリエイターを選べる教育の場も提供したい」「プロの人たちも、仕事をこなすだけの単なる作業員じゃなく、アーティストとして表現を追求する姿勢を持ち続けて欲しい」といった糸数さんの思いに、うち(フナコシステム)の社長とGUNCY’Sの社長が意気投合して、日本でもそういうことが教えられる環境を作っていきましょうという話になった。それこそもう何年もかけて仕組みを作って、このプロジェクトでやっていこうという形で動き出しました。

――美術的な観点での完成度を高めるというのももちろんですけど、商業的に受け入れられるためにどうすればいいかといったアドバイスもしていただけそうですね。

澤江氏:
してもらえると思います。いま開講している糸数さんのクラスは中級レベルなので、まったくの初心者だと受けるのは難しいですね。小池さんや原島さんのアニメーションクラスも、レベル2の場合は自分の作品を提出しなければいけないんですよ。アニメーション基礎とは言えレベル1の課題も難しいのですが、スキル的にレベル1をクリアしていないとレベル2はさらに難しいので。実力を精査し、そのラインに合わせて授業するという形でやっています。

――予備校のなかでも、細かいレベル分けを重要視されているとこもありますよね。

澤江氏:
重要だと思います。少人数制を取っているのは、きちんと課題をチェックバックしたりケアができる受講者の数は限られますし、限られた授業の中で満足してもらうには、そういった取り組みが必要だと思います。

――募集人数定員はどうなっていますか。

澤江氏:
8名から10名ですね。

――思ったより少ないですね。でも、少人数だからこそしっかり見てもらえそうです。募集人数が300名とかなら、首を傾げていると思います。

澤江氏:
(笑)

――カリキュラムなども緻密に組まれていそうですね。

澤江氏:
受けた授業の映像は録画してアーカイブされているので、生徒さんは後で見直せるようになっています。たとえば、数週間とか経ったら忘れちゃうこともあるじゃないですか。生徒さんは忘れないように、ついノートにメモをすることに夢中になってしまうことがあると思うんですけど、アーカイブに保存されるので、メモするよりも講師の人たちといっぱい話したほう得られるものが大きいと思うんですよね。だからノートよりも、沢山話そうという方向性になっています。

クリエイターは、自分で向上するということが絶対条件になりますよね。授業のことを思い出したり、アーカイブを見ながら振り返るのが一番いい勉強法になるんじゃないかと思います。

――商業的に成功しているアーティストに教えてもらう機会はなかなかないですよね。

澤江氏:
そうですね。パリコレのモデルウォーキングに教えてもらうのか、なんかその辺の読者モデルに教えてもらうのかという差はありますよね。考え方も取り組む姿勢も良い方向に変わっていきますね。

――受講していたらモチベーションが上がりそうですよね。

澤江氏:
だってそれこそもう!「アナ雪」を作った人に授業教えてもらうってすごくないですか?

――ネームバリューだけではダメですけど、説得力ありますし自信にもなりますよね。

澤江氏:
私がCG作る人だったら、ちょっと習いたいと思う。

――ちょっとなんですね。(笑)ありがとうございました。

[聞き手: Minoru Umise]

[写真: Shinji Sawa]

GTMF
GTMF(Game Tools & Middleware Forum)はアプリ・ゲーム開発・運営に関わるソリューションが一堂に会するイベント。2003年にスタートし、今年で15年目。大阪会場は2017年6月30日、東京会場(事前登録受付中)は7月14日に開催。

 

Ayuo Kawase
Ayuo Kawase

国内外全般ニュースを担当。コミュニティが好きです。コミュニティが生み出す文化はもっと好きです。AUTOMATON編集長(Editor-in-chief)

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