押井守の『Fallout4』通信
第5回「クラフトしない理由」

押井監督が『Fallout 4』のプレイ状況をお伝えする隔週連載「押井守の『Fallout 4』通信」。今回はB.O.Sの不甲斐なさを突っつく話から始まり、前回以上に大変になってしまった拠点の“景観”まで。押井監督が求める本質とは(編集部)。

押井監督が『Fallout 4』のプレイ状況をお伝えする隔週連載「押井守の『Fallout 4』通信」。今回はB.O.Sの不甲斐なさを突っつく話から始まり、前回以上に大変になってしまった拠点の“景観”まで。押井監督が求める本質とは(編集部)。

※本連載は押井守メールマガジン『押井守の「世界の半分を怒らせる」』にて掲載された内容を再編集したものです。

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この原稿を執筆中の時点でレベル92です。

相変わらずB.O.S.と個人的に戦争を継続中ですが、最近はベルチバードが頻繁に降着するポイントを発見したので、PA(パワーアーマー)鹵獲のピッチが急増しています。このゲームをやり込んでいる方なら既に御存知かもしれませんが、彼らの前線基地が存在する空港を対岸に臨む、あのかつてのリゾート地の近辺です。ファストトラベルで飛ぶ度に、ほぼ確実に飛来してPAを下ろして飛び去りますから、待ち受けていれば捕捉することは容易なのですが、困ったことにこのポイントはPAを含むレイダーの一集団が占拠しており、しかもスーパーミュータントの巣窟にも隣接しているので、激しい対空砲火を浴びることがしばしばで、さらにさらに困ったことにベルチバードはその威嚇的な外観のわりに抗堪性に難があり、目の前で撃墜されることもしばしばです。

まあ、この辺の事情はベトナムにおける米軍やアフガンのソ連軍も同様でしたが、ヘリボーンという戦術それ自体が抱える深刻な問題ではあります。

それにしても、です。

満を持して押しかけた侵攻軍のくせに、レイダーのごとき地元のヤクザな武装勢力を相手にこれだけ苦戦するなんて、B.O.S.も存外に情けない奴らです。ベルチバードが搭載するPAは通常2機、これに随伴する歩兵が同じく2名ほどであり、これが彼らの戦術単位のようですが、これを集中的に運用するならともかく、各個に単機もしくは2機程度で投入するのですから費用対効果が芳しくないのは理の当然です。彼らもまた上級幹部に人材を欠くのは帝国陸軍と同様のようですが、仮にこれを集中的に戦線に投入したとすれば、レイダーやガンナーは無論のこと、スーパーミュータントの部隊であっても殲滅されることは必至でしょうし、ウェイストランドも瞬く間に制圧されてしまいますから、ゲームバランス的にはこれが至当なのかもしれません。かく言う私がそうであるような、ステルス技能と消音銃を駆使して闇討ちを繰返す超悪質なスカベンジャーまで出没するのですから、彼らの苦労もまた偲ばれようというものです。

しかしながら、私もオニではありません。

いかにゲームとは言え、フュージョン・コアを抜き取られてPAを降車した搭乗員の頭部を10ミリ消音拳銃で背後から吹き飛ばすことに、いささかの煩悶も無しとはしません。しかもその搭乗員が姐ちゃんだったりすれば、VATSの決定ボタンを押す指に躊躇いが出ることもあります。好き好んでB.O.S.なんぞというファシスト集団に身を投じたアンタが悪いのさ、そんな己の因果を恨めと呟いて引導を渡しますが、さすがにレイダーや人造人間への膝撃ちよりも後味はよろしくない。そして、さらにさらに困るのは、地上に降り立った分隊が軍用犬を伴っているときなのです。これは本当に煩悶します。彼らには己の運命への決定権があるでなし、その本能に従って訓練された存在に過ぎないのですから、これを狙撃することは文字通り鬼畜の行いなのですが、騒がれてはことが面倒どころか、追尾捕捉撃滅鹵獲という一連の努力そのものが水泡に帰すこと必至ですから涙を呑んで馬謖を斬ります。

まあ、さすがにその肉を獲ったり焼いたりはしませんが。

地上に降りた分隊の辿るコースは常に変わらないので、敵対勢力との遭遇戦さえなければ通常でも最低1機か2機、その拠点への搬送中に再び飛来が重なって最大で5機を鹵獲することもあったりするので、拠点の裏に隠匿したB.O.S.のT60はすでに100機を超えました。最近は拠点での操作が妙にカクつくことがあるのですが、あるいはオブジェクトを置き過ぎてフレームレートが低下しているのかもしれません。PS4の演算能力にも上限がありますから、そろそろ新たな隠匿地点を探す必要があるのかもしれません。

それにしても、です。

B.O.S.の奴らって本当に頭が悪いなあ。

同一地点で、これだけの数がM.I.Aになってるのに戦術を見直すこともなく、相も変わらぬ戦術単位の各個分散投入を繰返すんだから、兵隊が哀れとしか言い様がありません。「上がバカだから戦えない」のは帝国陸軍や某球団だけのことではありません。パンイチの屍体こそ時間経過で消滅しますが、彼らが落とした自動火器で降着ポイント近辺は賽の河原と化しており、相棒のドッグミートが走る度にレーザーライフルが弾け跳び、戦場とはかくの如きか奢れるB.O.S.久しからず、といった有り様です。こんな殺伐としたプレイが止められないのですから、『Fallout4』もつくづく因果なゲームなのでしょう。

というところで、クラフトのお話です。

『DQB』にハマっていた時にも、拠点の要塞化以外に殆ど興味がなく、せいぜいが愛人の部屋に絨毯を敷く程度で内装は無きに等しく、他のプレイヤー諸氏が城や市街の造営に励む姿を横目に眺めながら、ひたすら大土木工事に励んで「景観の創出」に全ての情熱を注ぎ込んでいたことは、当メルマガの読者ならば御案内の通り。ましてや廃品で汚らしいバラックしか造れない『Fallout4』でクラフトに励む道理も無いと、つい先日まで思い込んでいたのですが、実はそうではなかった。拠点の裏庭に隠匿した大量の鹵獲PAがそれなのです。

これをいかに配置し、拠点を含む景観の一部とするかに情熱を注いでいる自分の姿に気づいたのが、つい三日前のことです。

私は拠点に定めたGSに可能な限り手を加えない方針なのですが、その周囲を囲むように三重に配置したT60の列線が実に美しい。古代の重装歩兵かケルベロスか、黒い甲冑と機関砲のタレットで構成されたバリケードを遠目に、あるいは近傍の高地から眺めては溜息を洩らし、その列線の乱れを修正すべく、あるいはこれに微妙な曲線を加えようと奔走する日々がすでに始まっています。国道から眺めれば朽ち果てたガソリンスタンド、裏へ回れば黒い甲冑と銀色に輝くタレットで構成された難攻不落の要塞。この極端なギャップが生み出す暗い愉悦に満ちた構成には、『DQB』の廃墟造成とはまた異なる快感原則が存在するようです。

「建築」ではなく「景観」にこそ私が求める本質がある。

いまさらのようですが、こんな事実を発見できるのも、『Fallout4』が自由度に満ちた秀逸なゲームなればこそでしょう。開発者に感謝多謝。ちなみにボブルヘッドは全て収集し、スキル雑誌も残るところ僅かにあと一冊。例の、マス・フュージョンビルなんですけどね。

B.O.S.が消滅してしまっては元も子もないので決戦はこれを望まず、その前提となるインスティチュート壊滅作戦にも手を染めていません。当面は拠点外郭に延翼したPAの列線で外堀を造営し、周囲の景観を一変させることが目標であり、本来が兵器であるPAはもはや景観を創出するための資産に過ぎませんが、ここから先はPS4の演算能力との戦いとなりそうです。

私のゲームにエンディングはない。竜王との最終決戦で全てを喪った『DQB』の轍は踏みません。

それにしても、メインミッションはこれを担わず、サブクエと襲撃と焼肉ポイントだけで、薬物はもちろん裏技にも頼らずにレベル100超えに迫った自分自身の情熱にただ感嘆あるのみ。

まあ、ただのバカだと言えばその通りですけど。
DLCは手つかずだし、地獄のサバイバルモードもあります。
お楽しみはこれからですが、それにしても仕事はいつ始まるんだ。

では、次回はレベル100超で御案内〜。

Oshii Mamoru
Oshii Mamoru

1951年生まれ。映画監督。代表作に『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』劇場版「機動警察パトレイバー」2部作、『GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊』などがある。また「機動警察パトレイバー」シリーズを完全オリジナルの新作としてドラマ版+劇場版の全7章で実写映像化した「THE NEXT GENERATION パトレイバー」シリーズの総監督を務める。最新作は「GARM WARS The Last Druid」。

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