押井守の『Fallout 4』通信
第4回 「気がつけば夜盗」

押井監督が『Fallout 4』のプレイ状況をお伝えする隔週連載「押井守の『Fallout 4』通信」。前回に引き続き、今回はケイト姐さんとの荒んだ生活模様が明らかに……(編集部)。
押井監督が『Fallout 4』のプレイ状況をお伝えする隔週連載「押井守の『Fallout 4』通信」。前回に引き続き、今回はケイト姐さんとの荒んだ生活模様が明らかに……(編集部)。

※本連載は押井守メールマガジン『押井守の「世界の半分を怒らせる」』にて掲載された内容を再編集したものです。

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【Twitter】@oshimaga

 


 

編集部に無断で始めた連載の第4回です(編注:メルマガ掲載時)。

しつこいようですが、あくまでオマケ(のようなもの)なのですからゲームに興味がないからといって文句を云うのは筋違いというものです。禁断の欲望を(ゲーム内で)全開にして生きてみたい、と思う方のみ読んでください。

この原稿を書いている時点でレベル82です。

鹵獲(というより強奪)したB.O.S.のパワーアーマーは50機以上。拠点の裏庭に並べた黒い装甲兵の列線はケルベロス中隊もかくやの壮観です。撃墜した輸送ヘリも20機以上になりますし、ボストン空港の司令部にも定期的に夜襲をかけ、若造のイニシエイトだろうがお姐ちゃんだろうが歩哨は情け無用のヘッドショットで頭を吹き飛ばし、パワーアーマーを強奪してファストトラベルで逃走を繰返していますが、なにしろゲームですから戦力無尽蔵のB.O.S.との戦闘はすでにして膠着状態に突入しています。上級将校ならずとも、名前を持つNPCを射殺すれば状況は大きく変わることは承知ですが、全面戦争に至れば闇討ちや襲撃の暗い愉悦も消滅してしまいますから、少なくとも裏庭を鹵獲したPAで埋め尽くすまでは現在のミッションを続けるつもりです。

B.O.S.との戦闘だけでは間が持たないので、レイダーやスーパーミュータントの巣窟への襲撃も繰返していますが、人造人間はいくら倒してもなぜか虚しく、やはり知性は限りなく低くともレイダーたちの頭を50口径で吹き飛ばし、男女を問わずパンイチに剥いて放置する快感には遠く及びません。全滅させた拠点内を回収のために徘徊していると、彼らは彼らなりに文化生活を営もうと涙ものの努力を払っていることが偲ばれて(まあ、死体やマネキンでオブジェを制作したりするだけで趣味は最悪ですが)これはこれで微笑ましいものがあるようです。

メインストーリーに関わるミッションは殆どやらないので、レベルを上げるための経験値は悪党どもに対する殺戮と略奪しかありませんが、なにしろザコ相手ではそれも知れていますから、爆発物やドラッグの生産に励むことが肝心です。その主要な原材料たる「肥料」は略奪だけでは慢性的に不足しますから、武器防具などの略奪品やドラッグを数箇所の市場で売り捌いて買い占めます。ちなみに野生動物に対する攻撃は控えていますが、モンスターはこの限りでなく、焼き肉に加工して(これもまた結構な経験値になります)同じく市場に出します。ドラッグや肥料爆弾の増産に励み、夜襲を繰返すといえば、もはや都市ゲリラというよりISやキタチョウに近いものがありますが、ああ誰か知る百尺下の水のココロ、燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや。増設した金庫には重火器、ミサイルから戦術核まで大量のストックが眠っていますし、ステルスや狙撃能力は勿論、NINJAのスキルまで上げまくって、もはやスカベンジャーどころか完璧な夜盗と化した私ですが、最後まで野良犬一匹、民兵組織やレジスタンスとも手を組むこともなく、ワンマンアーミーとして最後まで戦い続けるつもりです(最後は何と戦うんだ?)。

現在抱えている問題といえば、例のケイト姐さんでしょうか。

ヤク中から立ち直ってリハビリの農作業に励んではいますが、軍隊もかくやの武器弾薬の大量備蓄はともかく、室内に増え続けるジャンクや雑誌、フィギュアの類いが気に入らない様子で、永遠の相棒たるドッグミートとも折り合いが悪く、まるでオタク亭主を抱えた主婦の如き振る舞いです。どこかの拠点に預けちゃおうかとも考えたのですが、疲れ果てて帰宅したおり、その安らかな寝顔を眺めるとそれはそれで癒されていることも事実ではありますし、女気のない拠点は殺伐となること必定でしょう。時にはストレス発散も兼ねてミッションに連れ出すこともあるのですが、なにしろ戦術もクソもない突撃姐さんですから、明らかに隠密行動には不都合であり、後方や側面の援護から索敵まで何でもこなす万能犬のドッグミート君には遠く及びません。

無双状態に近づきつつある私も困惑あるのみです。

この愛すべき問題児を私に押しつけて厄介払いした、あのコンバットゾーンの興行師の気持ちも、いまは理解できるような気がします。これに懲りてコンパニオン志願者はグールだろうがミュータントだろうがロボットだろうが、隣町の民兵の大将に預けちゃってますけど。

ちなみに最近は投擲武器のスキルを上げて運用を開始しました。

お気に入りは野球のボールを改造した「野球ボールグレネード」です。私は装甲の下にボストン・レッドソックスのユニフォームを強装甲化して着用しているので、ファッションコーディネートの観点からしても野球ボール型手榴弾は相応しいと自負していますが、悩みの種はボール自体が入手困難な点です。野球ボールを解体するとレザーと布になるのですが、これを製造することが可能なMODは存在するのでしょうか。

御存知の方は一報ください。

次回はB.O.S.の前線基地に潜入して破壊工作を試みるつもりです。

ではまた。

Oshii Mamoru
Oshii Mamoru

1951年生まれ。映画監督。代表作に『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』劇場版「機動警察パトレイバー」2部作、『GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊』などがある。また「機動警察パトレイバー」シリーズを完全オリジナルの新作としてドラマ版+劇場版の全7章で実写映像化した「THE NEXT GENERATION パトレイバー」シリーズの総監督を務める。最新作は「GARM WARS The Last Druid」。

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