押井守の『Fallout4』通信 第2回
「気がつけばテロリスト」
※本連載は押井守メールマガジン『押井守の「世界の半分を怒らせる」』にて掲載された内容を再編集したものです。
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メルマガ編集部に無断で、自分勝手に始めた自主連載の2回目です。
あくまでゲームに興味のある方のみ、御笑覧ください。
ゲーム好きの方で、なおかつオープンワールドと呼ばれる型式のゲームが大好きな方なら先刻承知のことでしょうが、核戦争後に無政府状態に陥った世界には、必ず複数の組織が存在します。
我が「連邦(ウェイストランド)」もその例外ではありません。
『Fallout4』というゲームのプレイヤーは、最終的にこのいずれかの組織に接触し、その一員となることでゲームのエンディングへ導かれることになるのですが、私がいかなる組織とも友好的関係を持たずに生きることをもってプレイの大方針としていることは、この連載の読者ならご承知の通りです。B.O.S.だろうがミニッツメンだろうがレイルロードだろうが、大義名分を振りかざして他者を恫喝するような連中に手を貸すくらいなら、デスクロー先生に殴り殺されたり、スーパーミュータントに撲殺されたり射殺したりを繰り返し、レイダーのアジトに襲撃をかけて略奪したりして、その日暮らしを続けた方が楽しいし、思想的節操を守れるというものです。まあ、RPGなのですから別人格を演じても良いのですが、なぜか私はゲームに実人生を持ち込んでしまう悪癖があるのです。
で、道で擦れ違っても挨拶すらしないように心掛けていたのですが、そうも言っていられない事態が出来(しゅったい、と読みます)してしまいました。
ついに登場しましたB.O.S.の空中戦艦(実際には司令部機能を備えた前線補給艦)です。いつものようにレイダーの巣くうビルの地下で銃撃戦を演じ、地上に出てみれば頭上を、それこそ宮さんが描いたような空中戦艦がゴンゴンと侵攻してきたのでした。
蛇穴を出てみれば周の天下なり――じゃありませんが、ウェイストランドの政治状況はプレイヤーの思想的節操など無視して刻々と変化しているようです。他人と関わりたくないくせに好奇心だけは旺盛な性分なので、早速彼らの前線基地を偵察に出掛けてみれば、ゲートには威圧的な黒いパワーアーマーを装着した歩哨の姿がありました。
「民間人は立ち入り禁止だ」という恫喝に始まって「B.O.S.以外はゴミ同然だ」等の差別発言悪口雑言ヘイトスピーチの嵐です。他人の縄張りに勝手に入り込んできたくせに、数と力を背景に優越意識剥き出しの言いたい放題です。
私の大嫌いな恫喝人間どもです。
治安の回復を口実にしてはいますが、その内実が勢力圏拡大を狙った侵攻作戦であることは明白でしょう。血が逆流しましたが、ここで下っ端の頭を吹き飛ばせば寄ってたかって穴だらけにされるのは必至です。その場で戦端こそ開きませんでしたが、それ以来、廃墟で連中の偵察部隊を見掛けたらストーキングで背後から接近して愛用の50口径で狙撃。証拠を残さぬように皆殺し。身ぐるみ剥いでパンイチで転がすことに決めました。相手は侵略者なのですから、容赦は無用です。いまのレベルで敵対するのは得策でないので、あくまでゲリラ行動に徹していますが、すでにベルチバードを二機撃墜。パワーアーマーは必ず鹵獲し、戦利品として拠点に持ち帰って並べています。
いずれは前線基地にも夜襲をかけることになるでしょう。
もはや完全なテロリストです。
俄然、面白くなってきました。
一匹狼のスカベンジャーが軍隊を相手に単独でどこまで戦えるか、今後の展開が楽しみです。
というわけで、これ以降の行動方針が定まりました。
2)拠点では積極的に地雷の増産に励み、それを以て経験値の獲得にも努める。
3)前線基地に夜襲を敢行し、施設を破壊する一方で物資を略奪する。ロケットランチャーや備蓄した戦術核の使用も躊躇しない。
4)暫定的最終目標を前線補給艦の撃沈に定める。
5)B.O.S.との戦争が一定の決着を見るまで、他の組織とは中立関係を維持し、メインストーリーは放棄する。
うわあ楽しいなあ。
スカベンジャー変じてテロリストとなる。
今度は戦争だ!