ゾンビもまばらな廃墟『Zombie Playground』

 

2014年当初、「2014年これ1本」という記事の中で、筆者はKickstarterのプロジェクト『Zombie Playground』、『Grim Dawn』、『Wasteland 2』の3つを取りあげた。これらプロジェクトで完成したゲームは、執筆時点ではゼロだ。

といっても成果もゼロというわけではなく、『Wasteland 2』は9月19日の正式リリースをアナウンスし、『Grim Dawn』は8月末にマルチプレイヤーモードに対応するアップデートを実施している。

では『Zombie Playground』は?まずは『Zombie Playground』のこれまでを説明しよう。

 


終わらないアルファ

 

『Zombie Playground』はMassive Blackが開発するcoop型TPSだ。いわゆる「ゾンビアポカリプス」後の学校を舞台として、RPG的成長要素やキャラクタごとのスキル、武器やアイテムの収拾要素などをウリに2012年5月22日にKickstarterで資金調達を開始した。このプロジェクトは期限の6月27日までに目標額の10万ドルを超える16万7590ドルを集めることに成功し、現在も開発中である。

 

 

Massive Blackは資金調達が成功した暁にはClosed alphaを実施することを約束していたが、実際に始まったのは資金調達から16か月後の2013年11月1日。それから11か月が経った現在は……いまだClosed alphaの段階である。

今年に入ってからはバッカー(backer、資金提供者)向けのニュースが4回配信されたが、どれもClosed alphaは順調だとか、テストプレイヤーからのフィードバックに満足しているといった内容であり、Closed alphaに参加していないバッカーにとっては新しい情報は絶無に等しかった。

そもそもClosed alphaに参加するためには200ドル以上の出資が条件で、参加資格を持つのはバッカー3787人のうち96人だけである。また、Closed alpha用のフォーラムは限定公開のうえ、参加者にはNDAが存在するのか、『Zombie Playground』に関する最新の動画は11か月前にMassive BlackがYouTubeにアップロードしたものである。外部からは開発状況がまったく見えない状態が10か月以上続いたのだ。

Massive Blackとバッカーとの断絶はいつまで続くのだろうか……と本記事を書いていた矢先、Massive Blackは9月9日にニュースを更新した。Massive Blackは『Zombie Playground』のプロジェクトとその知的財産権を新会社Stealth Studiosへと委譲、開発に関わるプログラマを2倍に増員し、さらに15ドル以上のバッカー全員をClosed alphaに招待する予定だという。ちなみにこのニュースのタイトルは"Undead Resurrection(ゾンビの復活)"。どうやら、自身の立場については理解できているようだ。

 


成果物、のようなもの

 

そして9月14日、ついにbacker全員にむけClosed alpha用のSteamキーが配布された。実は筆者も出資していたのでSteamキーをアクティベートしてプレイしてみた。2年以上の開発期間を経た成果はいかなるものだろうか?まずは比較のために、上でもリンクした2013年10月6日時点のビデオを見ていただこう。

 

 

次の2点は2014年9月14日時点のClosed betaのスクリーンショットだ。まずはタイトル画面。

 

タイトル画面。上の動画よりOPTIONの項目が削除されている。
タイトル画面。上の動画よりOPTIONの項目が削除されている。

 

そしてゲーム中の画面。

 

プレイ中の画面。11か月前とまるで変わっていない。
プレイ中の画面。11か月前とまるで変わっていない。

 

現状では、サバイバルモードのみがプレイできる。着色もされていない無限にわくゾンビをただ倒し続けるだけだ。ゾンビには近づいてきて殴ってくる以外の能力はないし、プレイヤーは丸鋸刃のついた棒で殴るか、二丁拳銃を撃つかくらいしかできない。ただし後者ではゾンビが近づいてくるまでに倒しきれない。

ゾンビさえいない廃墟だった『Zombie Playground』にゾンビは戻ってきた。だが、筆者は現在のClosed alpha版に1年前の動画から進化している部分を見つけられなかった。この完成度のままでは、今度はプレイヤーが去っていくのではないだろうか。

本作はリリース目標を5~7か月後としているが、現状では半年で完成を迎えられるとは到底思えない出来だ。新会社でプログラマーの人数を2倍にするといっても、開発者によるフォーラムへのポストによれば、6月時点で開発に関わっているのは4人(おそらくプログラマー以外も含む)。新会社でプログラマーが増員されるといっても開発メンバーが大幅に増えるわけではない。

次の更新はいつだろうか? 完成するのは何年後か? 後発の『Warframe』とゲーム性がかぶってないか?(しかも相手はFree to Playだ)など、本作はまだまだ不安点だらけだ。しいて言うならば「開発が続いていることが判明してひと安心」くらいしか擁護の言葉が浮かばない。バッカーの一人としては、2年以上待ち続けている身としては――そしてじつは70ドルも突っこんだ身としては――新体制を契機としたStealth Studiosが本作についてなにかしらの進展をみせてくれることを期待するほかない。