Logicool G700s vs G602 (個人の感想です)
筆者の家にあるガジェットや、新しく買ったガジェットをどうにかしてゲームに役立ててみる不定期連載です。物欲四散!
ささやかな、しかし重要な悩み
人間は悩み多き存在です。そして人間のはしくれである筆者にも悩みがあります。今回はそのひとつ、「今使っているマウスが壊れたらどうしよう」にフォーカスをあててみます。現在使用しているマウスはDRTCM01BK。使い始めて5年をこえ、このうえなく手になじんでいます。感覚としては、自分の体の一部の――つまり手のすこし先。もはやセンシとcpiがほんのわずかでもズレただけで違和感が発生します。
ただしこの製品、すでに生産を終了しており、さらに手元にあるこの個体も1度修理を依頼しております。おそらく、余命はそんなに長くないでしょう。あと3年使えればいいほう、5年はもつまい……といったところです。生産終了時に何台か購入しておけばよかったのですが、完全に失念しておりました。後悔先に立たずとはいったものです。
先日、終売品としてワゴンセールされていたDRTCM38を2台購入しましたが、これをDRTCM01BKと同じように使っていけるのかというのもあらたな悩みの種です。そして、DHARMAPOINTの新製品は2012年12月発売のDRTCM38以降、残念ながらリリースされていません。ただ、このような事態はゲーミングデバイスではそこまでめずらしいことではなく、ゲーマーの感覚すればむしろ通常運行ですらあります。「あの製品よかったのになあ」はマウスを追いもとめる者にとってはいつものことなのです。
あらたな挑戦
新製品がリリースされないDHARMAPOINTの製品を手に入れることはあきらめました。ならばつぎなるマウスを探すのです。秋葉原をかけめぐり……というわけではありませんが、マウスコーナーがある店舗にはひととおり足をはこび、いくつかのマウスを店舗でためし、気に入った2つのマウスを購入してきました。DRTCM38とは別にです。本稿の意義はさておくとしても、現在手にはいりづらいDRTCM38にフォーカスしたところで、いまさら有用な情報とはなりえないとも判断しました。
購入したのはLogicoolのG602とG700sです。結果的に他のマウスをおしのけるかたちでこれら2つのマウスを購入した理由は、実際に触れたときに"なじみ"を感じたからです。
あくまでマウスは自分の手で動かすもの、自分の手で持ったときのフィーリングは非常に重要です。手の形、動かしかた、そしてPCとの(物理的な)向きあいかたは人それぞれ。しかるに、当然ではありますが自分の感覚を信じることが肝要となります。たとえば、ほとんどのマウスの形は曲線をえがいています。それゆえに、寸法や数枚の画像だけでイメージをふくらませること、ましてや自分の感覚に合致するかどうかを判断することはほぼ不可能。購入するさいはかならず自分の手で持ってみるべきです。
Logicool G700s
まずはG700sからです。スペックについてはメーカーサイトをご参照いただくとして、そのなかでも大きなポイントをいくつか列挙します。
- 電池としてエネループが1本付属。
- M950のような切り替え式のホイール。
- 有線接続可能。
形状をG602と比較すると、若干高さがあります。手のひらの指の付け根あたりにいくらか膨らみを感じます。クリック感は「なにかを指先で握るよう」で、第一関節が動きます。電池の本数は1本ですが、ホイールの機構があるためかG602よりやや重量感を感じます。レポートレートは1000まで設定可能です。dpiの感度設定は50ずつ。
Logicool G602
次はG602です。こちらもスペックについてはメーカーサイトをご参照ください。G700sとはまた違った手ざわりで、やや平坦なフォルムです。手ざわりの部分は好みがわかれると思われます。
- 電池は普通の電池が2本付属。
- チルト機能はなし。
- 無線のみの接続。
マウス上部のロゴ周辺に吸いつくようなラバー感がありますので、最初に「ラバー系がOKかどうか」で評価が分かれそうです。手に吸いついてはくるもののゴム感はあまり強くなく、"さらり"というか、"ぬるり"としています。全体的に平たい形状で、筆者の場合はG700sで感じる膨らみの部分がすこし浮いてしまいます。しっかりと手を張りつけるようにグリップしたほうがサイドボタンを利用しやすく感じました。サイドボタン数はこちらのほうが多いため、サイドボタンを多用するものの、G600はちょっと……という方は手にとってみる価値があります。クリック感は指全体を動かす感じで指の付け根が動きます。ホイール部分が簡素なためか、重量感はあまり感じません。レポートレートは500まで。dpiの感度は250ずつ。電池持ちはこちらのほうがよいようです。
マクロ機能について
本製品にはマクロ機能が搭載されています。マウス自身のメモリに入力する「オンボードメモリ」と、PC内で入力する「自動ゲーム検出」です。自動ゲーム検出の場合、PCにインストールされているゲームをスキャンしプリセットされた機能を入力することができます。アサインは非常にシンプルで、左のコマンドからボタンのところに機能をドラッグするだけ。準備されていない機能は自分である程度設定できます。このあたりのインターフェイスはDHARMAPOINTのものよりも扱いやすいですが、マクロ機能そのものの細かい設定についてはDHARMAPOINTのほうが一歩リードしています。
ちなみにマクロの仕様ですが、DHARMAPOINTはマクロ実行中にほかのマクロキーを押すと、さきに実行しているマクロは中断されます。Logicoolではキャンセルされず、両方が実行されます。また、DHARMAPOINTはESCキーでマクロを強制的にキャンセルすることができますが、Logicoolでは実行したマクロのボタンを押す必要があります。
こういった仕様のちがいはありますが、筆者が必要だと思った機能をほとんど設定することができました。筆者のばあい、キーを組みあわせるというよりは、キーをそれぞれのボタンに割りあてることをメインにしているため、これは当然のことです。複雑なマクロを組んでいるかたは、仕様をよく調査してから購入したほうがいいでしょう。なにはともあれ、マウスをクリックしっぱなしにするという指のダメージが大きな行為から解放されるのはすばらしいことです。ちなみに、どちらのマウスでもレポートレート変更ボタンに機能を割りあてることができます。
齋藤 宏一のジャッジ
何時間かゲームをしたのち結論しました。諸要素を総合的にかんがみ、筆者はG700sを選びます。G602が駄目なマウスというわけではありません。弊誌ライターにもG602を使用している者がいるのがその証左です。ただ、「筆者の手によりなじむのがG700sだった」それだけのことです。この点だけは誤解なきようご注意ください。なお、筆者のケースではチルトホイールの有無、ボタンの押しやすさ、持ったときのフィーリングが決め手となりました。気になる点は重量と電池の持ち。左クリック横のボタンが押しづらいことです。
ボタンの押しやすさやホールドの感触は属人的な部分があり、一概に断じることはできません。ただ、4つあるサイドボタンの上部はマウスのほうへ押しこむのではなく、上に持ちあげるようにボタンを押すことができます。この上に持ちあげる動作は思いのほか快適で、逆に押しこもうとすると若干やりづらく感じます。Logicool製品はたまにこういったギミックがあり、その製品を使い続けようと思ってしまいます。たとえばMX-Revolutionのサイドボタンとホイール。このふたつのギミックは、仕事で使うのであれば最高のものだと手放した今も思っています。
そして、G602との大きなちがいとしてチルトホイールの有無があげられます。筆者はチルトホイールを頻繁に使っています。ただしデフォルト動作の左右への移動ではなく、ボタンを割りあててゲームに使用しています。
ほかの指で押すサイドボタンの場合、保持している親指か薬指でボタンを押すことになるため、マウスが大きくブレることがあります。チルトホイールは人差し指で即座に押すことができ、マウスをホールドしたまま押すことが可能なのです。中指と同時に押そうとすると押しづらいため、FPSなどでスコープをのぞきながら押すには向きません。どのようなケースで利用するボタンかを吟味する必要があります。
G700sのチルトホイールは非常に軽快です。このチルトホイールの軽さは、そこだけにピックアップしても非常に好感のもてる品質であり、指の負担は他のマウスと比較しても軽いと推測されます。同じようなホイールをもつマウスとしてM950を使用していますが、M950よりも高さがあり、押した時のカチッという音により押したかどうかがわかりやすくなっています。人差し指を引っかけて押せる左側よりも、指の動きとして押しづらい右側のほうが軽くなっているという親切ぶりです。
電池の持ちは、この2つをくらべれば電池が1本であるぶん、当然ながらG700sのほうが劣ります。ただ、どうしても困るのであれば有線接続すればよいというのもメリットのひとつです。そのぶん重くなってしまいますが、完璧なマウスなどありません。かぎられた制約のなかで、最適な製品を選択していく必要があります。
ゲーマーにとってマウスを探すことは非常に手間のかかる、しかし重要な買い物です。何日もかけて何度も悩みます。ゲーム経験の長い方ほど、失敗した経験もあるでしょう。本当によい製品にめぐりあうには、まずみずから探さなければなりません。Web上の情報やスペックのみでは、自分の手のなかでどう動くか予想できないのですから。すこしでも実際に使ってみることが重要です。