『Gathering Sky』鳥の群れを眺め、クラシック音楽でリラックス。“アート系”全開のアドベンチャー
One Coin Gamerは、1コインつまりは定価500円以下で購入できるゲーム(ただしモバイル向けを除く)を紹介する連載企画。サクッとプレイできる良いゲームを求めている人、奇天烈なゲームを求めている人、とにかくお金を節約したい人たちに向け、魑魅魍魎の低価格帯ゲームを実際にプレイし、面白い面白くないに関わらず紹介してゆく。
第12回で紹介する『Gathering Sky』は、空を飛ぶ鳥の群れをクラシック音楽とともに見て楽しむアドベンチャーゲーム。開発を手がけたのは、小さなゲーム開発スタジオA Stranger Gravity。Steamでの価格は498円。とても平和なゲームであり、誰かを撃ち殺すこともなければ、何かを盗むこともしない。幻想的な空を、ただ飛び続けるだけである。もちろんゴールは用意されているが、目的の達成を目指して遊ぶというものではない。
プレイヤーは、空を飛ぶ鳥の群れをマウスで操る。現実世界と同じように、鳥は気流に乗ってスピードを上げ快適に空を飛ぶ。気流に乗ればあとは放置しておくだけでいい。手を忙しく動かすこともなく、Crystal Ngai氏が描くやわらかいタッチの世界を目で楽しみ、ステージによって変化するクラシック音楽を耳で味わうのだ。
『Gathering Sky』は、鳥をテーマにした無声ミュージカルのようである。曲ごとにステージが変化し、曲調がそのステージを見事に表現している。ほかの鳥との出会いがあったり別れがあったり、文字でストーリーが語られることがなくとも心で感じることができるだろう。
ゲームとしてはどうだろうと考えると、正直なところいまいちである。たとえ“アート系”であったとしても、ゲームである以上、面白いかどうかは重要だろう。たしかに、ビジュアルとサウンドには癒される。しかし、目を閉じて音だけを聞いても同じように癒される。また、開始時は1羽だが、旅を続けるうちに群れをなしていくという仕組みは容易に想像できるものである。ゲーム内で起こることは、実際に鳥の群れを見たことがあるという人からすれば刺激的ではなく、ほぼ想定内のことばかりである。曲とともに流れるようにシーンが変化する点は見事だが、それでも「良い意味での裏切り」などはなかった。
『Gathering Sky』は見事なまでのアート系であり、「楽しい」とか「面白い」なんてことを深く考えてはいけないのかもしれない。最初から最後まで数回だけマウスを操作し、あとはほとんど音楽に身をゆだねるだけである。もちろん、隠された何かを探したり、気流に逆らって飛んでみたり、アドベンチャーゲームらしい遊び方をしてもいい。クリアまでにかかる時間は40分ほどだろうか。ゲームとしては万人に受け入れられるものでないことは確かだが、洋の東西、時の古今を問わず、人間は癒しを求めているはずだ。心身ともにリラックスしたい、『The Graveyard』の次を探している、そんな人であれば本作を好きになれるかもしれない。