『Battlefield 2042』のデザインチームトップが開発元DICEを退社へ。本作の発売を区切りに新天地に

 

今年11月19日に発売されたElectronic Artsの『Battlefield 2042』。Steam版の同時接続プレイヤー数はローンチ時に10万人を超え、その後もSteam全体でトップ10に入るプレイヤー数を維持しており人気のようだ。一方で、バグやバランス調整の問題などにより、Steamでのユーザーレビューステータスは現時点で「やや不評」と苦しい状況にある。そんななか、本作のデザインチームを統括する立場にあるFawzi Mesmar氏が、今週中にも開発元DICEを去ることが明らかになった。海外メディアVGCが報じている。
 

 
Fawzi Mesmar氏は、中東のスタジオにてゲームデザイナーとしての実績を積み、2014年からは日本の株式会社enishにてクリエイティブディレクターを担当。その後、Activision Blizzard傘下のKingにてスタジオディレクターなどを務め、2019年9月にDICEへ移籍している。DICEでは、クリエイティブディレクターやゲームデザイナー、レベルデザイナーなど、80人以上からなるデザインチーム全体を率いるHead of Designという立場として、『Battlefield 2042』や『Battlefield V』『Star Wars バトルフロント II』などを手がけてきた。DICEの首脳陣のひとりでもある人物だ。

海外メディアVGCは11月25日、Mesmar氏がDICEのスタッフに送ったとされるメールの内容を報道。それによると、同氏は『Battlefield 2042』の発売後にDICEを退社すると伝えていたという。またEAは同メディアに対し、Mesmar氏は現地時間11月26日をもってDICEを退職する予定であることを認めている。
 

https://twitter.com/FawziMesmar/status/1443899927969636359

*『Battlefield 2042』のARアプリを楽しむFawzi Mesmar氏。

 
Mesmar氏のメールによると、DICEと同じくスウェーデン・ストックホルムに拠点を置くとある会社から、同氏を迎え入れたいとオファーを受けていたとのこと。そして、同氏としては断ることのできないオファーであったことから、DICE退社を決めたという。ちなみにストックホルムに所在するゲームスタジオというと、同氏の古巣Kingや『マインクラフト』のMojang、THQ Nordicなどを抱えるEmbracer Group、Paradox Interactiveなどがある。

このメールの正確な送信時期は不明だが、『Battlefield 2042』の発売前であることは確かなようだ。そのため同氏は、スタッフに退社することを伝えると同時に、今は本作の完成に全力を尽くすとも述べている。また、DICEのゼネラルマネジャーOskar Gabrielson氏とは後釜となる人選も進めていたが、その議論も本作の発売後まで一旦停止することを選んだという。
 

 
なお、冒頭で触れたように、『Battlefield 2042』は現在多数の問題を抱えており、プレイヤーからは厳しい声が寄せられている。これを受けてDICEは、2つのアップデートを計画。まず海外時間11月25日に緊急性の高い問題の修正を実施し、次のアップデートではさらに広範な改善・修正がおこなわれる予定だ。これらのアップデート以降も継続的に改善がおこなわれ、またシリーズの過去作に存在しながら本作にて削除された機能の復活についても、慎重に検討していくとされている(関連記事)。

ローンチ直後から課題山積となった本作について、コミュニティ内ではDICEの現職あるいは元スタッフの発言に注目が集まっているようだ。たとえば、DICEの元CEO Patrick Söderlund氏は『Battlefield 3』当時に、さまざまな対戦人数を試したが128人対戦は楽しくなかったとし、64人以上に拡張する考えはないとコメント。また、従業員が匿名で自社をレビューできるウェブサイトGlassdoorには、DICEではトップダウンで意思決定がおこなわれる一方で、上層部はネガティブなフィードバックを聞きたがらないなどの告発がおこなわれ、同スタジオにかつてあった魅力はなくなったと指摘されている(ResetEra)。

今回のFawzi Mesmar氏退社は、こうした『Battlefield 2042』やDICE内部の問題とは直接関係ないかもしれない。ただGlassdoorでは、最近になってリーダークラスの世代交代が進んでいるが、新たにトップに立った人たちはゲーム開発において、ほかを犠牲にしてでも自らのビジョンに執着する傾向にあるとも述べられている。そうした意味では、いずれ発表されるであろうMesmar氏の後任は誰になるのか、そして『Battlefield 2042』の改善をどのように指揮していくのかが注目されそうだ。

UPDATE 2021/11/15 17:15】
記事初版のタイトルは、「『Battlefield 2042』のデザインチームトップが開発スタジオを退社へ。内部スタッフの不満も漏れ出るなど正念場のDICE」としておりましたが、Mesmar氏の退社と内部事情の関連性がないとの指摘を受けて、「『Battlefield 2042』のデザインチームトップが開発元DICEを退社へ。本作の発売を区切りに新天地に」へと修正いたしました。