『Fallout 4』がシリーズファンから批判される理由をディレクターも認める、「賛否両論はありがたい」

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ゲームとして高い評価を得ている一方で、その一変したゲーム性や演出から、シリーズ続編としては批判的な声も寄せられているBethesda Game Studios開発の最新作『Fallout 4』。こうした賛否両論の状況を開発側も真摯に受け止めているようで、海外メディアのインタビューに対してゲームディレクター自らが一部の失敗を認めている。そんな発言内容からは、新たな試みが失敗したことを単に悔いるのではなく、否定的なフィードバックを積極的に受け入れて次に生かそうとする姿勢がうかがえる。

 

賛否両論だからこそ向上できる

今年はじめ、『Fallout 4』がシリーズファンから批判される3つの理由を伝えたように、本作はシリーズを通してカルト的な人気を誇る一方で、従来のファンからは“Fallout”にあらずと揶揄する声も少なくない。その主な原因は、前作から一変してシューター要素を強調し過ぎたことにある。加えて、一新されたスキルシステムと簡略化された会話パートによって、プレイヤーが最も望んでいたロールプレイ要素が欠如してしまったのだ。アクション性の比重が増したことは必ずしも減点対象とはいえないにしても、ダイアログを4つの短いキーフレーズから選択するリング形式に変更した影響は特に大きい。中でも、キャラクターの能力に応じたスピーチオプションが極端に減ったことに加えて、選択肢の内容も言葉遣いや態度が変わるだけで、意思表示は基本的に「イエス」か「ノー」の2つしかない点にファンの不満が集中した。

クリエイティブディレクターTodd Howard氏
クリエイティブディレクターTodd Howard氏

この件に関して、『Fallout 4』のクリエイティブディレクターを務めるTodd Howard氏は、先日の「E3 2016」で行われたGameSpotのインタビューで、会話パートの試みが失敗に終わったことをあっさり認めている。本作をRPGというよりシューターと感じるユーザーが多いことについて聞かれ、賛否両論のフィードバックに対する胸の内を明かした。「私たちは新しいことに挑戦したいんだと、ファンもそのうち分かってくれると思います。一定の成功は得られるでしょう。実際、Fallout 4のシューター要素は本当にいい出来だと思います。明らかに会話パートの仕組みは上手くいきませんでしたが。ゲーム内の他の部分とくらべて成功とは言えませんが、インタラクティブな会話にしたかったという想いは確かなものです。(中略)こうしたフィードバックは我々にとって実にありがたいものです。確かに賛否両論でしょう。それはいいことだと思います」。否定的なフィードバックを積極的に受け入れる発言に、コミュニティフォーラムではロールプレイ要素の欠如に失望したファンからも、大きな賞賛の声が上がっている。

一方で、次回作からは主人公の台詞をフルボイスにしないでほしいという意見もある。声の演出はキャラクターの感情や性格をあらかじめ固定してしまうというデメリットを持つ。特に本作では、主人公のバックグラウンドがすでに設定されていることに拍車を掛けて、フルボイスの演出がロールプレイを希薄にする要因になっているといえる。会話の選択肢が短いフレーズやキーワードでしか表示されないために、自分が思い描くリアクションとは全く異なるトーンで主人公が喋り出すこともしばしば。何色にも染まらない無垢な少年少女が主人公だった『Fallout 3』や、ひょんなことから頭を撃ち抜かれるも一命を取りとめた過去なき運び屋になりきる『Fallout: New Vegas』とは、明らかにゲーム性が異なるのだ。自分の分身を演じるロールプレイというよりは、既存のキャラクターに感情移入するだけの演出技法に留まっている。『Fallout: New Vegas』の時のように、「Intelligence」を1にしても“頭の悪い子”は演じられないし、「Strength」を最大値まで上げても“筋肉交渉”はできない。箱庭ゲームの醍醐味といえるロールプレイ要素を、いかにインタラクティブなゲームデザインに組み込んでいくかが、今後の課題となりそうだ。

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