“アメリカ陸軍製”FPS、20年の歴史を経てサービス終了へ。米国民の賛否を呼んだ問題作に幕引き

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米陸軍『America’s Army』開発チームは現地時間2月4日、FPSゲーム『America’s Army: Proving Grounds』のサポートとサーバー運営を現地時間5月5日をもって打ち切ると発表した。海外メディアPC Gamerなどが報じている。
 

 
『America’s Army』シリーズは、アメリカ陸軍(United States Army)主導で制作された無料マルチプレイFPSゲームだ。本作が米陸軍によって制作された理由としては、新兵のリクルートと、ある程度の訓練内容を周知させる目的があった。そのため、内容としても実際のトレーニング内容などを本格的に盛り込んでおり、「基礎訓練」が終わるまではマルチプレイにも参加できないシステムとなっている。2002年にリリースされた初作『America’s Army』は、軍隊がゲームを作るとの目新しさもありゲーマーたちの注目を集めた。以降、バージョンアップおよびタイトルやエンジンを改めての刷新などを重ねつつ、2015年にはベータ期間を経た『America’s Army: Proving Grounds』を正式リリース。約20年にわたり運営されてきた、長寿FPSシリーズなのだ。

そして開発元は現地時間2月4日、同シリーズ公式フォーラムにて同作のサービス終了を発表した。「『America’s Army: Proving Grounds』ミッション成功、撤退する」と書き出された発表では、今後の同作の予定について簡潔に述べられている。まず、現地時間5月5日をもってサポートおよび公式サーバー提供は終了。関連オンラインサービスについても全面的に終了するとのこと。それに伴い、PlayStation 4版(日本国内展開はなし)については、ストアページからも消え、オンライン要素は利用不可能になる。そして、Steam版については、ユーザーのプライベートサーバーなどでのオンラインプレイは5月5日以降も利用できるとのこと。また、オフライン要素についてはいずれのプラットフォームでも動作する見込みとしている。
 

 
『America’s Army』については、初作のリリース時からアメリカ国内にて議論を呼んでいた。とはいっても、ゲームの出来の良し悪しに関してではない。「米陸軍主導プロジェクトである」との出自ゆえに、軍の予算を利用してゲームを制作している点や、新兵を募るプロパガンダにゲームを利用することの是非について、多くの意見が寄せられていたのだ。一方で2010年には、広報面では一定の効果があったと示唆する研究結果が、マサチューセッツ工科大学の研究者により示されるなどの一幕もあった。本作を取り巻き続けた難しい環境も、サービス終了の一因となったかもしれない。とはいえ前述の公式発表には、本作を支持していたユーザーから悲しみのコメントも投稿されている。

そして、気になるのは続編の行方だ。約3年前とはなるものの、『America’s Army』開発者が「次回作開発のごく初期段階である」との旨を公式フォーラムにて伝えていたのだ。今回のサービス終了発表では、今後の『America’s Army』シリーズの展開については明らかにされていない。しかしながら、同シリーズは実質上単一のタイトルとして運営されてきた歴史もある。「撤退」を強く打ち出した内容は、シリーズそのものの終わりを示唆する内容と見られる。

長き戦いを経て、ついに全面撤退を始めた『America’s Army』。賛否もあったものの、「軍隊公式ゲーム」なる異色の存在は、これからもゲーマーたちの記憶に残り続けていくだろう。『America’s Army: Proving Grounds』はPC(Steam)向けに配信中。現地時間5月5日サービス終了予定だ。

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