Amazonの人気MMO『New World』で「ギルドリーダーが200人からの寄付金を持ち逃げした」と訴えるプレイヤー出現。裏切りと欲望渦巻く人間ドラマ


Steamにて9月29日に配信開始されたAmazonのMMO『New World』。リリース直後から破竹の勢いでプレイヤー数を伸ばし、現在Steam全体でも上位に入るプレイヤー人口を誇っている。そんな本作において、システムを悪用した行為の発生をプレイヤーが報告しているようだ。PCGamerが報じている。

『New World』はAmazon Games Orange Countyが開発するMMORPGだ。本作はリリース後すさまじい勢いでプレイヤーを獲得し、一時はSteamにおける同時接続者数90万人を記録。プレイヤー数の面で好調を保っている一方で、過大なトラフィックに由来する問題が発生しており、現在も対処を進めている(関連記事)。今回、あるプレイヤーが海外掲示板Redditでの投稿で伝えたのは、本作のシステムゆえに発生した大規模な“詐欺ドラマ”だった。
 

 
RedditユーザーParadoggs氏は10月6日、Redditの『New World』コミュニティである/r/newworldgameにゲーム内での出来事を伝えるスレッドを立てた。このユーザーは、自分の所属していた組織のトップが、構成員からゲーム内通貨であるCoinの献金を募ったうえで、そのCoinを持ち逃げして派閥を寝返ったというのだ。

今回の一件について伝える前に、まず『New World』の社会システムについて解説したい。本作においては、ゲーム側で定められた3つの派閥(Faction)が存在する。プレイヤーはCovenant・Marauders・Syndicateいずれかの派閥に所属し、自分が所属する勢力の成長を目指していくのだ。さらに下部組織としては、ほかのMMO作品でのギルドにあたるCompanyが存在する。今回、Coinを持ち逃げしたとされるのはこのCompanyの長だ。

続いて、本作の経済システムについて。本作には品物を安定して供給するベンダーNPCは基本的に存在しない。多くのアイテムやリソースをプレイヤー自身が採取し、または加工しトレードする仕組みになっているのだ。上述のCoinはトレードに出された物品の購入のほか、トレード税や加工税としても消費され、支払われた税はその拠点を占拠しているCompanyの収入となる。Coinは敵の討伐やミッションの遂行で入手できるほか、汗水たらして作り上げた製品を売って収入を得る生産職的なプレイスタイルもある。すなわち、本作におけるCoinはプレイヤーと組織にとって重要資産であり、ほかのMMOにおける通貨と比して精神的に“重みが強め”なのだ。
 

 
Coinには上述のトレードや加工のほかにも用途があり、そのひとつが「Companyによる未占拠状態にある土地の占拠」だ。『New World』の各地域には砦が点在しており、砦の占拠をもってCompanyおよび派閥はその砦に所属する土地の占有権を得る。ほかの派閥が占拠している場合は戦争によって奪わなければならないものの、サービス開始間もない本作においては多くの土地がCoinによって購入できる未占拠状態にあったのだ。この状況が、悲劇を呼んだ。

Paradoggs氏による投稿によれば、同氏が所属するCompanyは拠点を争奪する戦争に破れ、購入可能な最後の未占拠地域であるReekwaterを占拠しようにも購入資金が足りない状況だったそうだ。Companyのリーダーはこの状況にひどく怒り、所属派閥であるSyndicateのファクションチャットにて他メンバーへの批難を口にしていたという。続けてこのリーダーは、Reekwakerの購入のために同派閥のメンバーに対して寄付を募った。そしてあろうことか、リーダーは200名ほどから寄付され集まった約6万Coinを丸ごと持ち逃げしたというのだ。

しかも、リーダーとその友人たちは資金を移動した上で新キャラクターを作成し、サーバー内でSyndicateよりも大きな勢力を持つMarauders派閥に寝返ったという。約90名を数えるCompanyメンバーは突然の裏切りに途方にくれ、勢力として小さいこともあり「侵略を受けて泣きながら死んでいくことしかできない」状況とのことだ。あくまでもいちプレイヤーによる証言であり、誇張や嘘を含む可能性はある。しかし事実であれば、奇妙な現実味もあり同情を禁じえない悲劇だ。

この投稿は約3000件のUpvote(高評価)を集めているほか、「類似の出来事がほかのサーバーでも起こった」という別ユーザーからの証言も寄せられている。また、Paradoggs氏に同情を示しつつ「『New World』ではシステム上“ピラミッド商法”や詐欺も働けてしまう」と指摘する投稿も見られる。一方で、ゲームのシステム上仕方ないとする意見や、今回の騒動を喜劇的と見なす声も散見される状況だ。
 

 
Paradoggs氏の投稿が話題となった後、本日10月9日には“資金を持ち逃げしたリーダー”本人だと主張するユーザーがRedditに自身の視点からの状況説明を投稿している。かなりの長文で思いを書き綴った同投稿を要約すると、「私も騙された被害者であり、責任は別の悪質ユーザーにある。派閥を離れたのはその悪質ユーザーと同じ派閥に居たくなかったからだ」という主張だ。また、同投稿者は我が物とした6万Coinのうちメンバーからの寄付金については一部に過ぎないと主張。その寄付金についても、土地の購入資金として詐取したのではなく、離反を後押しするメンバーからの善意の寄付だったと主張している。

こちらの投稿も真偽はあくまでも不明なものの、“悪質ユーザー”とのやりとりとするDiscordでの会話ログもアップロードしており、投稿には一定の信憑性を感じる。しかし、主張はあやふやな面もあり責任を逃れきれていない印象だ。いずれにせよ、システムとプレイヤー同士の複雑な思惑に起因する、何らかの巨大な人間ドラマが『New World』のなかで発生してしまったのは事実のようだ。

『New World』に限らず、感情を持つ人間が関わり合うオンラインゲームにドラマはつきものだ。特にMMOにおいては、多様な営みがゲーム内でおこなわれる性質上さまざまな出来事がおこる。本作のような経済・社会システムを備えた作品ではなおさらであり、ある程度のトラブルや衝突もコンテンツの一部という側面はあるだろう。一方で、あまりに無法な世界ではユーザーが疲れてしまうのも事実だ。『New World』は今後どのような世界をプレイヤーに提供していくのだろうか。

『New World』はSteamにて現在配信中だ。