『Apex Legends』開発元がチート対策強化を表明するも、プロプレイヤーが「空虚な約束」と批判し波紋を呼ぶ。国内外で「#SaveApexRanked」の声広まる

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Respawn Entertainmentは6月29日、『Apex Legends』におけるチート対策の方針を明らかにした。ツイートの内容によれば、今後「手動でのBANに注力するための人員を確保する」「DDoS攻撃を自動検知するためのツール開発を進める」「ゲームからチーターをより迅速に捕捉し、取り除くための方法を模索する」の3点において、チート対策を強化していくとのこと。Respawn Entertainmentは、チーターとともにプレイすることは非常に不快であるとして、上記の取り組みを進め、新たな方針を取り入れ次第ユーザーに続報を伝えるとしている。
  

 
『Apex Legends』におけるチート対策について、方針を改めて明示したRespawn Entertainment。しかしユーザーからは、不安の混じる声が挙がっているようだ。上記ツイートを受け、eスポーツチームNRGに所属するSweetDreams氏が声明を発表。「空虚な希望と偽りの約束。手遅れになる前に#『Apex Legends』のランクマッチを救ってください」と題し、Respawn Entertainmentの“対策”の有効性を疑問視する意見を発表した。 
 

なぜ、チーターたちの朝は早いのか 

SweetDreams氏は声明のなかで、ここ数シーズンにおけるダイヤモンド帯以上のランクマッチの状況を伝えている。同氏は、ランクマッチにおいてチートやDDoS攻撃が主要な問題になり始めてから8~9か月が経とうとしていると指摘。ストリーマーはランクマッチをプレイすることで継続的にコンテンツを生み出すことができなくなってきており、またいかなる地域でも高レベル帯でランクマッチを遊ぶプレイヤーにとってのQoLが急速に低下していると警鐘を鳴らしている。 

現状に至った過程について、SweetDreams氏は次のように説明する。およそ7か月前、日本・台湾・シンガポールおよび周辺地域におけるサーバーは、1試合につき8~12人のチーターが見られるほどチートであふれかえっていた。同地域でチーターが繁殖した原因については、毎日プレイしてチーターを通報するようなTwitch配信者がいないためであろうとSweetDreams氏は指摘している。そこで、日本を含む諸地域のプレイヤーたちは、チーターを避けるために北米サーバーへ移行を開始した。 

この動きが生じてから1か月後、チーターたちも北米サーバーに流入。ほとんどBANされる危険がない早朝帯に幅を利かせるようになった。Respawn Entertainmentのセキュリティ担当Conor Ford氏はおもに深夜帯にストリーマーからの通報を受けて精力的なBANを進めている。同氏が就寝している朝早い時間帯にチーターが集中してしまっているわけだ。この動きを受け、北米にて朝の時間帯にチーター抜きでランクマッチをプレイすることがほぼ不可能な状態になってしまったという。さらに最近の動きでいえば、セキュリティの要であるFord氏が個人的な都合で休暇をとったことも大きな影響を与えた。Ford氏によるBANの動きが止まったことで、有り体にいってゲームはほぼプレイ不可能な状態になったとSweetDreams氏は述べる。 
 

 
たった一人で闘うセキュリティの重責 

この件に関して、一部ユーザーはFord氏を非難しているものの、そうした批判は不適切であるともSweetDreams氏は指摘している。代わりにSweetDreams氏は、『Apex Legends』においてリアルタイム(あるいは事後)にチーターをBANする人員が十分に確保されていないことが問題であると提唱。『Call of Duty: Warzone』のような競合ゲームと比べて、ランクマッチにおける競争の公正さや楽しさが最底辺で放置されていることに関して疑問を呈している。 

SweetDreams氏は、ランクマッチが『Apex Legends』における屋台骨であるとしつつ、これまでRespawn Entertainmentから提示された問題対応の約束がほとんど空虚な嘘であったと批判。問題は北米・欧州にとどまらず、どの地域でもほぼ確実にチーターが試合に存在し、もしチーターが負ければすぐにDDoS攻撃される。そしてゲームをやり直せばふたたび同じチーターが試合に紛れ込んでいる……といった状況を描写し、嘆息する。 

また配信者界隈においても、毎回チーターとの遭遇が少しでも減るように祈りながらストリーミングしている現状について言及した。SweetDreams氏やほかの配信者が視聴者に何千回も尋ねたところでは、多くの視聴者はチーター被害を受ける配信者の姿を見ておられず、『Apex Legends』の配信そのものから遠ざかりつつあるという。また、実際に個々人のストリーマーのピーク視聴率は下がっているとのことだ。 

問題の改善に向けてはConor氏のような人材をより雇用する必要があるとしつつ、現状ではそのような人物が現れていないとも指摘。SweetDreams氏は、Conor氏に手助けが必要であり、同氏に全ゲームの責任を引き受けさせるべきではないとする。表舞台にたち、リアルタイムでチーターの証拠映像を受け取れる人物が、これ以上事態が悪化する前に複数地域で必要だと提言した。 
 

 
ユーザーにできること、“もうない”  

SweetDreams氏はアイデアとして、一定の評価を得て信頼のおけるストリーマーに、チーターやDDoS攻撃者をBANする権限を渡す案を提唱している。ストリーマーと協力体制を組み、リアルタイムで違反者を取り締まる人員を増やすのだ。もちろん詳細については議論する必要があるとしつつ、特定ストリーマーを信頼することを勧めている。総括として、SweetDreams氏はユーザー側でできることはやりつくしたと言及。『Apex Legends』が手遅れになってしまう前に、Respawn Entertainment側からできる手を打ってほしいとの歎願で締めくくられている。 

SweetDreams氏の声明は大きな反響を受け、本稿執筆時点で1万8000件以上のいいねと7000件以上のリツイートを獲得している。また反響は国外にとどまらず、国内Twitterでも「#SaveApexRanked(『Apex Legends』のランクマッチを救ってください」とのハッシュタグがトレンド入りを果たした。 

 
一連のSweetDreams氏に対するツイートには、Respawn Entertainmentにてコミュニティ&コミュニケーションディレクターを務めるRyan K. Rigney氏も反応。指摘を受け止め、言葉だけでなく行動に反映していくと回答した。ただし、SweetDreams氏が「追記」として記した部分には異議を唱える。SweetDreams氏が「Respawn Entertaimentがランクマッチを助ける意図についてツイートしたことにだまされないでください。私たちは何度もこの言葉を聞いてきましたが、何の結果ももたらされませんでした」と苦言を呈したのに対し、Ryan氏はコミュニケーションしようとしている努力を“だます”とレッテル付けされることに不服を唱えた。その後両者の間ではしばらく口論が続いたものの、最終的にはRigney氏が「声を聞き届けました」としている。 

また、eスポーツチームTSM FTXに所属するプロプレイヤーSnip3down氏が「対策が不足している以上、ユーザーからの言葉遣いに不平を述べることはできないはずだ」と指摘すると、Rigney氏は「実際に対策をとっているときしか意見を発表できないのであれば、事態はより悪化する」と返答。今後も、実際の対策実施に先だって積極的に方針を発信していく姿勢を明らかにした。 
 

 
Repawn Entertainmentがチーターへの対応方針を明らかにしたことで、ユーザーに蓄積された不満が大きく表出することとなった今回の一件。Repawn Entertainmentとしては、これまで以上に具体的な方策の進行を明らかにしていく必要がありそうだ。 

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