インディースタジオのAURORA Gamesは4月10日、恋愛シミュレーションゲーム『TOGETHER BnB』を早期アクセス配信開始した。対応プラットフォームはPC（Steam）で、価格は1840円。ところが、その内容について賛否が分かれているようだ。
まずトレイラーを見てみよう。女性にプレゼントを渡し、親交を深めるプレイヤー。プールでの遊泳やシャワーシーンなどセクシーなカットを挟みつつ、彼女たちとの交流を期待させる。様子がおかしくなってくるのは1分を過ぎたあたりである。山道を爆走するクルマ。生い茂る針葉樹林で鳴り響く銃声、主人公の手にはハンドガン。いったい今まで仲良くしていた女性たちはどこへいってしまったのか。その後場面は室内に戻るが、プレイヤーはキッチンらしき場所でも立て続けに銃を連射している。リロード速度も優秀で、バトルロイヤルなら確実に1キルは獲っている立ち回りだ。そうこうしているうちに、映像はふたたび女性キャラクターとの交流シーンへ戻る。
何かの手違いだろうかと思っていると、カットはふたたび奇妙な場面を映し出す。なぜか池に沈み、そのまま水中でドリフトを切るSUV。さらに壁一面にライフル銃を並べた店と、その主たるスキンヘッドのたくましいミドルガイも登場する。「ライセンスがないならとっとと帰りな」とすげない対応だが、おっしゃる通りである。その後も何事もなかったかのように女性とのコミュニケーションに戻ったり、かと思えば野生の狼と拳銃で一騎討ちに挑んだり、胸やお尻に気を取られたり、木彫りの熊を大量に買いこんだり。女性とイチャつきたいのか、ワイルドライフに身を捧げているのか、主旨が何だかよくわからない。
『TOGETHER BnB』は、行方不明の兄の代わりに山中の民宿を経営する「恋愛シミュレーション」である。主人公Jamesは兄の行先を示す手がかりを追い求めつつ、民宿にいるさまざまな女性たちの要求に応えなくてはならない。交流できる女性としては、あどけない顔立ちのNana、モードな身なりのVera、大人な雰囲気のEmilyといった面々が登場するようだ。さまざまな選択肢とメッセージシステムで女性たちとの絆を深めることができるという。Unreal Engineで描かれた3Dモデルは美しく、人物表現だけでなくリアルな自然環境も見もの。ダイナミックな昼夜や天気の変化が実装されており、森の野獣と戦って、買い物をするためのお金を稼ぐこともできる。「恋愛シミュレーション」であってサバイバルシムではない。
紹介だけ見てもやや困惑する内容だが、実際にプレイしたユーザーも同様の感想を抱いているようだ。レビューでは、「ゲームの目的がいまいちわからない」「クエストの目標が曖昧」といった声が噴出。プレイヤーへのガイドがやや不親切な設計となっているようだ。いきなり狩猟用の銃を手渡され戸惑っているユーザーも。また、ゲームの一部分でパフォーマンスが落ちたり、要所要所でメニューが開けなくなったりといった不具合も散見されるという。さらに女性たちのボイスにも苦言がある。レコーディングの品質に難があり、「ウェブカムで録音したのか」「風呂場で録った？」といわしめるノイズやブラーが目立っているようだ。本稿執筆時点では、200件以上のレビューから「ほぼ不評」という厳しい反応を受けとっている。
注意したいのは、本作はまだ早期アクセス配信中だということだ。パフォーマンスやバグなどの問題は、フィードバックを受けて暫時改善されていくことだろう。ストーリーは全8チャプターを予定しており、現時点ではチャプター2までが実装されている。早期アクセス配信は約1年間を予定しており、正式アクセスまでにはキャラクターAIとアートオブジェクトの追加、対応言語の拡充、そして新たな隠しキャラクターも登場する予定だという。また4月10日のデベロッパーからの投稿にて、すでに言及されている問題については追って対応していく旨が宣言されている。
開発・販売を手がけるAURORA Gamesは過去作として、2018年にVR恋愛シム『TOGETHER VR』をリリースしている。キャラクターグラフィックや背景の作りこみに定評を受けつつ、ミニゲームの物足りなさや、プレイヤーが異常行動をとっても特に反応のない彼女の淡白ぶりから「賛否両論」とのレビューを受ける異色の作品であった。『TOGETHER BnB』もスタジオのカラーが色濃く反映された“クセの強い”恋愛シムであることは間違いないだろう。
『TOGETHER BnB』はSteamにて早期アクセス配信中。荒削りながら、謎のエネルギーに満ちた本作に触れてみてはいかがだろうか。
