モバイル向けMMORPG『FFXI R』が開発中止に。製作発表から6年経つも『FFXI』のリブートならず


ネクソンとスクウェア・エニックスが共同開発を行っていたスマートフォン向けMMORPG『ファイナルファンタジーXI R(以下、『FFXI R』)』の開発プロジェクトが中止となっていたことが明らかになった。2020年12月に韓国メディアMTNが報じ、2月9日に行われたネクソンの第4四半期決算の質疑応答にて代表取締役社長のオーウェン・マホニー氏が認めている。 

『FFXI R』は2000年代初期のMMORPG黎明期に流行した『ファイナルファンタジーXI(以下、『FFXI』)』のモバイル版として、2015年に開発が発表されていた。本家『FFXI』は2002年の正式サービス開始から18年以上も運営が続けられており、2021年となった現在も継続的にアップデートが行われている。長く続いてきた『FFXI』のモバイル版として注目が集まっていた『FFXI R』だったが、残念ながら開発は頓挫してしまったようだ。 
 

 
韓国メディアMTNは2020年12月、『FFXI R』が開発中止となったことを報道。ソースが「ネクソン関係者」とぼかされていたため信憑性が高い情報とはいえなかったものの、2015年の発表から長く音沙汰がなかった『FFXI R』の開発中止というセンセーショナルな報道は多くの関係者を騒がせた。 

2月9日に行われたネクソンの投資家向けイベント「2020年12月期 第4四半期決算電話会議」の質疑応答では、この報道を受けて開発中止についての質問が投げかけられた。コメントを求められた代表取締役社長のオーウェン・マホニー氏は「『FFXI R』がクリエイティビティの観点から、プレイヤーのファイナルファンタジーシリーズに対する期待水準に達していないと判断いたしました」と回答。開発中止を公式に認めるかたちとなった(2020年12月期第4四半期決算電話会議 質疑応答要約(『FFXI R』についての回答は6ページ目) )。

質疑応答では、プロジェクト中止によって開発人員が他のプロジェクトに再配置されたことも言及された。再配置先はネクソンの自社IPのようで、現在開発中である『テイルズウィーバーM』や『Project NGR』などであると見られる。また、これらのコメントが上述のMTNの報道内容とも一致することから、2020年12月時点ではソースの弱い情報であったMTNの報道が真実味を帯びてきたようにも思える。 

MTNが取材した「ネクソン関係者」によると、当初2016年のリリースを目指していた『FFXI R』はかなり開発に難航していたようだ。2018年にはネクソン傘下のスタジオであるOneStudioに開発を移管して2019年後半のリリースを目指して開発を進めていったものの、直後にネクソン内部の開発方針が変更。新たな開発方針に沿って社内プロジェクトの再評価が行われ、審査に難航した『FFXI R』はさらなる延期を重ねることとなる。 

しかし、IPを保有しているスクウェア・エニックスとの関係や、『FF』シリーズ、ひいては『FFXI』の人気を考えれば、そう簡単にプロジェクトを終了することはできなかったようだ。2019年に副社長に就任したキム・デフォン氏は、開発のジェネラルディレクターにシム・ギフン氏を任命。シム・ギフン氏はかつて『テイルズウィーバー』で開発本部開発2室の室長を務め、ネクソンレッド在籍中はモバイルMMORPG『AxE』のジェネラルディレクターだった人物だ。シム・ギフン氏の加入後には開発は1年近く続き、RPGとTCGを組み合わせたゲーム性に再構成が試みられた。 

開発実績のある虎の子の登用で巻き返しを狙ったネクソンであったが、2020年の社会情勢が追い打ちをかける。新型コロナウイルスの流行によってスクウェア・エニックス側が全面的な在宅勤務に移行したものの、両社は共同開発環境の構築に難航。結果、プロジェクトは中止となり、『FFXI R』の開発は終了してしまったようだ。 
 

 
質疑応答でネクソン代表取締役社長のオーウェン・マホニー氏は、「当社はスクウェア・エニックスに多大な敬意を抱いております。クリエイティブチームにも多大な敬意をいただいており、緊密な関係にありますが、今回はスクウェア・エニックスのIPの価値を守り、私たちの持つリソースをより価値を生み出せるチームに再配置することが重要であると考えました。(原文ママ)」と回答している。『FFXI』の看板を担うタイトルであればこそ、半端なクオリティのものは出せないという判断もあったようだ。 

MMORPG黎明期であった2000年代、『FFXI』はその筆頭タイトルであった。修行めいたレベリングやシビアなデスペナルティ。現代のMMORPGでは味わえない当時の雰囲気をもう一度、あるいは初めてモバイルで感じたかったプレイヤーも多かったことだろう。開発が終了してしまったことは非常に残念であるが、本家『FFXI』の運営は続いている。MMORPG『FFXI』はPCにて発売中だ。 


ポストアポカリプスとドット絵に心惹かれます。AUTOMATONではFF14をメインに担当します。