『Apex Legends』開発者、「合コンで使えるAPEX用語集」に“NO”を発信。日本国内コミュニティもモラル見直す


Apex Legends』コミュニティといえば、特に海外にて開発者とユーザーの距離が近いことが特徴だ。Redditの掲示板では日夜ゲームにまつわる議論や雑談で運営チームとの交流が盛ん。時には白熱のあまり攻撃的になるユーザーもいるが、開発スタッフ側が過度な批判に対する苦しみを吐露し、コミュニティ全体で開発者との関わりが見直される珍しいケースも起きている(関連記事)。こうした様子は主に英語圏にて色濃く見られるが、中には日本の『Apex Legends』コミュニティと関係を結ぶ開発者も存在。今月末にかけて見られた動きでは、開発者の声を受けて日本の『Apex Legends』コミュニティがモラルを見直す一幕があった。 

発端は、あるTwitterアカウントが発信した投稿だ。アカウント主(ユーザー名記載は自粛)は「合コンで使えるAPEX用語集」として、いくつかの『Apex Legends』用語を“隠語”として利用する用例を紹介。たとえば仕事の疲れを癒してくれる“生ビール”は、ヘルス・シールドを全回復できるアイテムになぞらえて「フェニックスキット」。飲みすぎて潰れてしまった人は、ゲーム内で力つきたプレイヤーの痕跡を指す「デスボックス」など。飲み屋で見られる光景を『Apex Legends』の単語になぞらえ、一部の人々をクスリと笑わせていた。 

ところがこうしたジョークの一部が、倫理的に問題があるとして批判を受けた。例を挙げると、“女性を一気飲みさせた状態”を指して「アーマー割った」。本来、ゲーム中では相手のシールドを削りキル寸前まで迫った様子を指すが、ここでは女性を酩酊させ“お持ち帰り”するチャンスとして表現されている。また、ヘルスが激しく低下した状態を指す「激ロー」については、“酔いがすっかり回り、いつでもお持ち帰りできそうな状態”と記載。いずれの用例も、女性を泥酔させた上で連れ帰り、あわよくば性行為に至ろうとする意図を示唆する表現となっている。 
 

 
発信元となったツイートに対しては、上記表現に抗議する反応が多数寄せられた。泥酔した状態の相手は判断力を失っており、性行為に対し「同意」を表明できない状態だ。同意なき行為は強姦と同義である。上記のツイートは、そうした性犯罪を助長するものとして批判されたのだ。対して一部ユーザーからは、明らかにジョークを意図した発言でありインモラルな行為を支持するものではない、との声も浮上。あくまでブラックユーモアとして捉えるユーザーと、冗談としても容認できないユーザーとで対立が生まれていた。 

こうした状況で声を上げたのが、『Apex Legends』の開発元Respawn Entertainmentにてリードデザイナーを務めるChin Xiang Chong氏だ。初代『タイタンフォール』からスタジオに在籍する古株で、『Apex Legends』ではランクシステム実装における主要デザインや、キングスキャニオンの改修などにも携わるゲームデザイナー。同氏は英語ユーザーながら、中国語および日本語も駆使するトリリンガル。これまでにも日本語を使い、国内ユーザーにリプライを送るなど交流を図ってきた。そのChong氏から、該当ツイートに対する引用RTというかたちで「やめてください。弊社にとっても迷惑です。」とのメッセージを発信したのである。この反応を受け、発信源だった投稿者は元ツイートを削除。軽率な発言だったと伝え、不快な気分を抱いたユーザーに対する謝罪の意を表明している。 
  

 
もともとChong氏は、持ち前の語学力を使って日本のユーザーとも積極的にやりとりしてきた人物。国内ユーザーによる『Apex Legends』ファンアートをリツイートしたり、Respawn Entertainment作品に関する話題にリプライを送ったり、国内ファンに対するケアを長年惜しまなかった人物だ。日ごろユーザーの温かな反応に触れてきただけあって、今回の対立には心を痛めていたことだろう。日本コミュニティとしても、国内動静を見守っている開発者がいることを認識したことで、改めてモラルある言動に引き締めようという動きが強まっているようだ。意外にいろんな人が、見ているのだろう。 
 

 
なお、相手を泥酔させ性的暴行におよぶ行為は、準強制性交等罪として起訴されたケースが数多く存在する。心理的・物理的に抵抗が著しく困難な「抗拒不能」状態の相手に性行為を迫ることは絶対にあってはならない行為だ。『Apex Legends』は日本時間で2月3日よりシーズン8が開幕予定。世界中のプレイヤーに恥じないよう、国内でもコミュニティを盛り上げていきたいところである。