『ロックマンエグゼ ファントムオブネットワーク』非公式リメイク開発中止、権利者の求めに応じる。携帯アプリ限定配信だった幻の『エグゼ』外伝

『ロックマン エグゼ4 トーナメント ブルームーン』

Twitterアカウント@PON95988800氏は1月13日、昨年より制作していた『ロックマンエグゼ ファントムオブネットワーク』のPC版リメイクを中止することを発表した。権利者からの求めに応じるかたちだという。同氏が発表していた制作過程の画像・動画は現在すべて削除されており、再開の見込みもないという。 
 

 
『ロックマンエグゼ ファントムオブネットワーク』(以下、ロックマンエグゼ PoN)は2004年にiアプリにて配信された携帯向けRPG。カプコンのアクションRPG『ロックマンエグゼ』シリーズの外伝的作品である。本編第4作と第5作の合間の時系列に該当し、オリジナルの物語を展開。かつて倒したはずのWWWナビが出現するなど、電脳空間の異変に立ち向かうストーリーだった。携帯版ゆえにアクション・操作性の評判は芳しくなく、BGMやマップがスケールダウンしている点もご愛敬。 

しかしスピーディな連続攻撃などに軸足を置いた戦闘テンポの良さは随一との声もある。さらに「当時『ロックマンエグゼ』シリーズが好きだったが、携帯電話を持てる年齢ではなかった」というファンも少なくない。移植やリメイクが望まれているが、モバイル版ゆえハードルは高く、原典をプレイしようにもiモード自体終了している……という状況。まさしく幻のシリーズ作ともいえるのが、『ロックマンエグゼ PoN』だったのである。 
 

https://twitter.com/yumenochiharu/status/1343958839599644673

 
@PON95988800氏も、本作の復刻を願うユーザーのひとり。iアプリ版の入手が困難となってから『ロックマンエグゼ』シリーズに触れるようになったという同氏は、昨年12月より『ロックマンエグゼ PoN』の非公式リメイク制作に着手した。あくまでストーリーを追体験できるものを目標としており、ROMの改造ではなくイチからシステムを作り直し。収益化は一切おこなわず、カプコンから何らかの申し立てがあった時点で即刻企画を中止するとの宣言をしていた。以来、今年1月にかけて暫時進捗をアップデート。システム面のほかドット絵やBGMを手作業で再現するなど、当時の作品を可能な限り復刻しようという試みを発信していた。 

今回申し立てのあった相手については「権利者」としか明かされておらず、カプコンから直接コンタクトがあったかどうかは不明。ただし@PON95988800氏としては先述の宣言に該当するケースとして判断し、プロジェクトを中止する判断に至ったようだ。同氏は「創作の自由の範囲を超えて権利侵害を行ったのは私であり」「この件について権利者様を恨んだりすることのないよう」呼びかけをしている。 

本プロジェクトは、海外ファンからも注目度の高い企画であった。もともと『ロックマンエグゼ』シリーズの国外人気は高い。加えて、日本ユーザーにとってすらプレイが難しかった『ロックマンエグゼ PoN』は、海外のファンにとってまさしくファントム。その存在を知ることすら難しい超希少タイトルであった。昨年夏に、フィーチャーフォンアプリのNintendo Switch移植をおこなうG-MODEが「遊んでみたいタイトル」のアンケートをおこなうと、『ロックマンエグゼ』海外ファンポータルでの拡散もあり、海の向こうから『ロックマンエグゼ PoN』移植を要望するすさまじい爆撃が届いていた。また@PON95988800氏のもとにも翻訳協力を名乗り出るユーザーが現れており、「国内外を問わず多くの方にロックマンエグゼという作品が愛されている事を感じました」と同氏も語っている。 

一方、別の期待がかけられている案件も存在。海外の『ロックマン』ファンであるBrian氏は今年1月8日、『ロックマンエグゼ PoN』およびその続編的作品『ロックマンエグゼ レジェンドオブネットワーク』の両作がダウンロード済みのガラケー端末を入手したと発表。結果はどうなるかわからないとしながらも、現在ふたつの作品をPC用に移植するべく進行しているようだ。 
 

 
さまざまな方面から復活を望まれている『ロックマンエグゼ PoN』。しかし今回のケースからわかるように、ファンベースの動きではどうしても権利上の問題で限界があるだろう。せめて世界中の熱い思いが伝わり、公式から何らかのかたちで移植/リメイクが叶うことを願うしかなさそうだ。