『サイバーパンク2077』Steam版のプレイヤー人口8割減は、注目に値する数字なのか。ほとんどのゲームに当てはまる現象


Steam版『サイバーパンク2077』のプレイヤー人口が、初月で約8割減ったとの報道が広まっている。同作はローンチ時、Steamにて同時接続プレイヤー数100万人という大記録を樹立。そこから1か月足らずで10〜20万人台にまで落ちたというわけだ。

人口減報道のソースとなっているのは、SteamやTwitchのデータ分析系記事を掲載している海外サイトGitHyp。同サイトが報じたのち、GameSpotVG247など複数の海外メディアが取り上げていった。Steamの同時接続プレイヤー数のデータから、人口減が事実であることは確認できる。ただ、それが何か特筆すべき数字なのかというと、そうではない。GitHypも、シングルプレイ用ゲームとしてはごく普通の現象だと補足している。


ではなぜ、そのごく普通の現象が広く報じられるのかというと、『サイバーパンク2077』という注目作と、「8割も人が減った」という一見ショッキングな情報の組み合わせによってPVが稼げるからだと思われる。実際、「プレイヤー人口◯%減」という報道は、注目作品にて多く見られる。それこそGitHypは昨年11月、『Marvel’s Avengers』Steam版のプレイヤー人口が2か月で96%減少したと報じたばかりだ。

ただ、リプレイ性が高くプレイヤー人口の維持が欠かせないマルチプレイヤーゲームはまだしも、ストーリー型のシングルプレイ用ゲームについて人口減のニュースを扱うことは、はたして意味のあることなのか。筆者個人としては疑問に思うようになってきている。書こうと思えば、新作の大半について「人口◯%減」と書けてしまうからだ。実際には、書いて読まれるゲームのみが「人口◯%減」報道の対象となる。そして、ごく一部のゲームだけが取り上げられるため、「あの作品は失敗したのだ」という印象を与えてしまう。いくら補足しようが人々の印象に残るのは「人口◯%減」というキャッチーな数字の部分だ。


では実際にSteam Chartsを参照し、シングルプレイを軸としたゲームの過去事例を見ていこう(数値はいずれも同時接続プレイヤー数)。『デス・ストランディング』は、ローンチ初日のピークが3万2000人で、1か月後は平均5200人(84%減)。『DOOM Eternal』はローンチ時8万4000人で、1か月後の平均は約7600人(90%減)。『Half-Life: Alyx』は1万6450人から2170人(87%減)。『Baldur’s Gate 3』は4万8400人から4800人(90%減)。『Star Wars ジェダイ:フォールン・オーダー』は4万6000人から5200人(89%減)。『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』は12万4000人から2万人(83%減)。

CD PROJEKT REDの過去作『ウィッチャー3 ワイルドハント』(以下、ウィッチャー3)は、ローンチ時のピークが約9万2000人。1か月後のピークは5万5000人で、平均は2万2800人ほど。『サイバーパンク2077』と比べると減少率は緩やか。ただし、クリアするまでにかかる時間や、ターゲット層の幅の違いも加味せねばならないだろう。また減少割合としては『サイバーパンク2077』の方が大きくとも、1か月経過時点でのプレイヤーの「数」は『サイバーパンク2077』が『ウィッチャー3』を大幅に上回っている。


こうやって並べていくと、『サイバーパンク2077』の人口8割減がまったく衝撃的な数字ではないことが分かる。むしろ発売から1か月経って人口が大幅に減らない方が事例として希少だ。

なおプレイヤー人口に関する異例のケースとしては、先述した『ウィッチャー3』が2020年初頭、ドラマ効果もあって人気が再加熱したことが挙げられる。同時接続プレイヤー数10万という、旧作とは思えない数字を記録。今でも平均1〜3万人台にのせており、プレイヤー人口の移り変わりとしては、『サイバーパンク2077』ではなく『ウィッチャー3』の方が異端児と言える。

もちろん、『ウィッチャー3』のように長く遊ばれ続けるタイトルになると、『サイバーパンク2077』に大きな期待を寄せていた人々が多いのも事実。その観点で考えると、1か月で8割減という「普通の数字」を出したことを注目すべき点とみなすこともできる。なんにせよ、人口8割減というのは、過半数のタイトルで起きる、ごく普通の現象。ただ、『サイバーパンク2077』は今でも平均で10万〜20万人を維持し、Steamの同時接続プレイヤー数ランキングでもトップ10内をキープ。8割減ったとはいえ、シングルプレイ用のゲームとしては多く遊ばれている部類に入る。