PS1向けの未発売アクションRPG『マジックキャッスル』が20年の時を経てリリース。オリジナル開発者と有志が力を合わせる

 

初代PlayStation向けに開発されながら未完成となっていた、『マジックキャッスル(Magic Castle)』と呼ばれるアクションRPG作品が、昨年12月24日にフルバージョンとして配布開始された。もともと1998年に日本の開発者チームが手がけていた作品で、その後有志によって開発が継続。22年の時を経てリリースに至った。

*開発中バージョンのプレゼンテーション映像

『マジックキャッスル』は、『ソニックウィングス』シリーズなどで知られる開発会社ビデオシステムに所属していた、ぴろを氏と松並桂一氏によって制作されていた。両氏へのインタビューによると、ソニー・コンピュータエンタテインメント(現SIE)がPS1の開発キットを「ネットやろうぜ」として一般向けに販売したことをきっかけに、ふたりは会社を辞めてKAIGAというインディースタジオを設立。オリジナル作品として『マジックキャッスル』の開発に着手し、約8か月かけてデモを制作したという。

その時点では未完成だったが、デモは本作のゲームコンセプトを十分に表現できていたため、両氏はSCEを含め日本の大手メーカー数社にプレゼンすることにした。その結果、SCEからは好意的な反応があったものの、同社が抱える別のプロジェクトへの参加を依頼される。ただ両氏は、作りたいゲームを作るために会社を辞めたこともあり、その依頼は断ったそうだ。

一方、別の大手ゲーム会社からは『マジックキャッスル』のための開発費を出してもらえることに。しかし、開発スタッフを十分に集めることができず、これでは作品を完成できないと会社に判断されてしまった。そして、両氏はお金もなく精神的にも限界だったため、チームを解散して別々の道を歩むことになったという。なお、松並氏は現在セガにてプロデューサーなどを務めており、ぴろを氏は素性を明かしていないが、同じく今もゲーム開発者として活躍しているとのこと。


世に出ぬまま長い時が経っていた『マジックキャッスル』だったが、2020年3月になって、ぴろを氏がそのソースコードを古いPCから発掘し、「ネットやろうぜ」の環境があれば動作するはずだとSNSに投稿した。これをきっかけに、スペインの有志チームGOBOUSEIが開発を受け継ぐことになり、昨年12月24日についに完成版が公開された。現時点では、4人プレイモードと日本語対応が未実装となっているが、フルにプレイ可能な状態だという。

『マジックキャッスル』は、プレイするたびに構造の変わる城を舞台にする3DファンタジーアクションRPG。それぞれ異なる武器やアビリティを持つ騎士・魔法使い・戦士・射手からプレイヤーキャラクターを選択し、モンスターを倒しながらボスを目指す。サイドクエストや収集要素なども用意されているとのこと。また、UIの位置を自由に変更できたり、部屋ごとにBGMの雰囲気がダイナミックに変化する工夫も見て取れる。


PS1向け『マジックキャッスル』は、Internet Archiveを通じて配付中。プレイできる環境のある方は、ダウンロードしてみてはいかがだろうか。


国内外のゲームニュースを好物としています。購入するゲームとプレイできる時間のバランス感覚が悪く、積みゲーを崩しつつさらに積んでいく日々。