『CS:GO』で”偽チートツール”が配られ、チーター達が泣き叫ぶ。不正行為を試み、ありとあらゆる酷い目にあう敗北者達の悲鳴


Counter-Strike: Global Offensive』(以下、CS:GO)にて、チーターに対する“制裁”が下されている。同時接続プレイヤー数が42万人を超え、Steamでもトップの人気を誇る本作。ユーザー数が多いだけに、同作のコミュニティではチーターの存在も長らくの問題となっている。彼らに力を与えているのが一部の開発者によって生み出される不正ツールだ。ネット上で配布(あるいは販売)されているソフトウェアを入手することで、チーターは全弾ヘッドショットに壁透視といった有利な能力を獲得している。そこで、このツールを利用してチーターに鉄槌を下そうと試みる人物が現れた。

YouTuber・Twitch配信者であるScriptKid氏は独自に『CS:GO』専用のプログラムを開発。チートツールとしてネット上で不特定多数に無料配布した。その際、自前でGoogleに広告費を払い、ツールを探す利用者の検索結果トップで表示されるようにする力の入れようだ。プロモーションのかいあって、ScriptKid氏のツールはまたたく間にダウンロードされた。しかしここに罠が仕組まれている。同氏が仕組んだプログラムは宣伝文句とはまったく別の、ゲームでは何の役にも立たない代物だ。それどころか逆に、ソフトを起動したチーターには思いも寄らない仕打ちが待っている。ツールはプレイヤーの制御を奪い、さまざまなかたちで罰を下すのだ。犠牲者たちの死亡シーン集は自動でScriptKid氏のもとに集積される仕組みとなっている。この旨はきちんとソフトの利用規約に記載されており、ユーザーは全員「同意済み」であるとのことだ。

チーターへのお仕置きは無数に用意されている。そのひとつが1分30秒ごろに収録された「Burning Man」だ。これはプレイヤーの真下にグレネードを投げさせ、しかもその場から動けないようにキーをバインドしてしまうというもの。炎上する兵士は唯一ジャンプすることだけ許されているため、はたから眺めると熱さに耐えかねて飛び跳ねているような愉快な姿となる。よりドッキリ的演出が好みなら、続いて紹介される「NoPlantOrDefuse」がおすすめだ。こちらは爆弾を解除しようとした際に発動し、作業が終わる数秒前でキャンセルしてしまう。一方プレイヤーの耳には解除が完了したときの偽の効果音が聞こえるため、無事に危機を回避したと思い込んだチーターには避けられない運命が待っている。

解除したはずの爆弾が炸裂するチーター。


動画の2分41秒ごろからは、フィールドの特定エリア内に入ることで作動する仕掛けトラップが見ものだ。強制的に感度を100にすることでドタバタと慌てさせたり、あるいは銃を構えるたびに武器を放り出させてしまったりと、ランダムでひどい目に遭うチーターの姿を楽しむことができる。7月頭に公開された動画は358万回以上再生され、ScriptKid氏の新たな原動力となった。もちろん、次なるフェイクツール制作に向けてである。

今月公開された続編でも使用者の動きを極端に遅くしたり、前後左右を入れ替えたりと好き放題だ。6分20秒のリプレイでは、いくら敵を撃ってもまったく当たらず気づかれることもないチーターの姿が味わい深い。ここでは彼の武器は無効化されており、あたかも銃を撃ったかのようなエフェクトと銃声の幻聴が届いているのだ。また、必ずしも実害を被る効果ばかりではない。7分5秒ごろには、なぜかドアの向こうから聞こえるノック音に怯えるチーターの姿も。こちらは使用者が開けようとした扉をロックすることで発動するかわいいイタズラだ。おののくプレイヤーがドアを破壊し、誰もいない向こう側に戸惑う姿はほっこり動物ビデオのような出来栄えである。

何といっても大がかりなのは動画冒頭でも見られる、その名も「MindControl」だろう。仕掛けエリアに入ると、チーターは閃光弾を受けたようなフラッシュに襲われ一時的に視界を奪われる。そして何も見えない間、プログラムがプレイヤーの自由を奪い思わぬ行動を引き起こすのだ。あるときは前線まっただ中で武器を放り投げてしまい、そしてあるときは自分自身の身体を投げ出してしまうことも。青空の下、摩天楼から宙に舞うチーターの姿は一種の爽快感すら感じさせる。

誰もいない扉の向こうに怯えるチーター。
協力者の名前とともに、フィナーレで飛び降りるチーター。


不正ツール対策にはいずれの対戦ゲームも頭を悩ませており、直近では『Fall Guys』の「チーター専用監獄」にまつわる試行錯誤が語られたばかり(関連記事)。各運営が手を焼く一方で、こうした草の根対策が発生するのは心強い例だ。ScriptKid氏は過去にも『PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS(PUBG)』でフェイクツールを流布させ、数々のプレイヤーを引っかけた実績がある。とはいえ甘美な復讐の数々は代償なしに成し遂げられるものではない。“釣りツール”宣伝のためGoogleを利用したことは先ほども述べたが、同氏がこれまで投資した額は2000ドルにのぼるという。正義執行には金がいる、何とも世知辛い話。やはりチーターはいないに越したことはないだろう。