『マインクラフト』の中で『マインクラフト』を遊ぶプレイヤー現る。謎の技術


風変わりなチャレンジャーには事欠かない『マインクラフト』(以下、『マイクラ』)だが、奇妙な方法で本作をプレイする猛者が注目を集めている。『マイクラ』の中で『マイクラ』を遊ぶプレイヤーが現れたのだ。

どういうことか。映像を見ると、そこには見慣れた青い空のワールドが映し出されている。しかしどこかがおかしい。景色がガビガビして何だかぎこちない様子なのだ。違和感を感じていると画面が切り替わり、状況がよくわかるようになる。低画質な画面だと思っていたものは、巨大な『マイクラ』の空間上に“ブロックで再現された”モニターだったのだ。そして『マイクラ』の世界に設置されたモニターの中で、入れ子状に『マイクラ』が作動しているのである。この不思議なマトリョーシカを作り出した張本人は、YouTuberのFundy氏だ。


『マイクラ』内で作動する『マイクラ』ではワールドを歩き回るだけでなく、インベントリを見ることも可能だ。もっとも低解像度のため、所持ブロックの種類を見分けることはいささか困難。カーソルを合わせたときのキャプションはほぼモザイクと化して判読不能となっている。しかしながら、アイテムを選択すればしっかり取り出して使用することができる。重要なのは『マイクラ』がきちんと作動しているということだ。

ここまで「『マイクラ』の中で『マイクラ』を遊んでいる」と表現していたが、実際に行われているのはもっと込み入ったギミックだ。動画でFundy氏が画面をズームアウトしていくと、『マイクラ』内『マイクラ』の外側にもピクセルが描かれていることがわかる。左側に整列した“何か”の配置を見れば、それが何だかすぐにピンとくるだろう。これはWindowsのデスクトップ画面だ。つまり正確にいうとFundy氏は、『マイクラ』の内部で「Windowsを」動かしているのである。


すなわち、『マイクラ』の中で動かせるのは『マイクラ』だけではない。デスクトップからYouTubeを立ち上げ、動画を見ることだってできる。さらにFundy氏は、ウェブカメラのアプリケーションを『マイクラ』内で立ち上げることも試みる。まさしくそれは成功した。『マイクラ』内部のモニターにFundy氏自身の姿が映し出され、リアルタイムで動いているのだ。色味は多少おかしくなっているものの、同氏のジェスチャーや視線の向きまで明瞭に確認することができる。巨大なモニターにFundy氏が映し出され、その目の前に『マイクラ』のプレイヤーキャラクターが突っ立っている光景はなかなかにシュールだ。

モニターがあるサーバーには他のプレイヤーを招待することも可能。動画内ではストリーマーの氏を呼び出し、巨大な配信画面の上を歩かせてサプライズしている。このほか、お絵かきをしたり『テトリス』をしたりと、とにかく『マイクラ』の中で何でもできることがアピールされた。


本作の仕組みについて、詳しい技術は語られていない。しかしざっくりいうと次のようなプログラムで動いているようだ。Fundy氏はPCのモニターに映るすべてのピクセルを録画し、ひとつひとつをRGBに変換できるようにした。さらにRGB情報となったピクセルを、『マイクラ』内のブロックと比較する。そしてもっとも近しい色のブロックとピクセルが対応するようにしたのだ。あとはその対応データを『マイクラ』の内部へ送りこみ、実際にモニターと同じ配色でブロックが配置されるように出力する。リアルタイムでブロックが変化する仕組みは不明だが、実際のブラウジング画面に合わせてブロックが出力され続けているようだ。ブロックの個数的にどうしても画質が荒くなることや、肌色を表現することが苦手(Fundy氏の顔は一部がピンクに変色していた)といった問題点はあるものの、ほぼ完全に『マイクラ』内で動作するPCの画面が再現されている。

『マイクラ』内で『マイクラ』を遊ぶ試みには先例も存在する。2019年にはYouTuberのBandi氏がModで実現していたほか、類似のプロジェクトとして「チェストの中で『マイクラ』をプレイする」というSethBling氏の動画もよく知られている。Fundy氏の挑戦はこうした流れを汲みつつ、『マイクラ』だけでなくPC上の動作すべてを『マイクラ』内に取り入れた点で独自性が際立つといえるだろう。今後も高度な“技術の無駄遣い”が輝くことに期待していきたいところだ。