『あつまれ どうぶつの森』アプデ後から寄せられる「ムービー職人」の悲しみの声。その無害なバグは、修正されてほしくなかった

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任天堂は今月7月3日に『あつまれ どうぶつの森』更新データVer.1.3.0を配信した。同アップデートでは、海水浴をはじめとした夏に関連した新要素が導入されたほか、不具合の修正も施されている。対応されたバグの中には「カメラUIバグ」も含まれており、最近になりこのバグ修正に対し抗議する声がSNSで生まれつつある。「#saveACfilm」というハッシュタグをつけて、人々が要望を寄せているのだ。

『あつまれ どうぶつの森』においては、プレイヤーは思い思いの遊び方でゲームを楽しめる。目標を決めずのんびり過ごすもよし、借金返済に勤しむもよし、自分なりのテーマのエリアをつくるもよし。その中には、ムービー作成を楽しんでいるユーザーも存在するようだ。シリーズ最新作では家の外で自由に家具を置くことや、地形変更をすることが可能。またビジュアルもアップグレードされたことにより、グラフィックもシリーズ最高にリッチ。プレイヤーの表情も自由自在に変更可能で、「演出」をしやすい作品となっている。

こうしたゲームの特徴を利用すれば、ムービーすらも作成可能。島での様子を切り出して編集することで、小洒落たショートムービーが生み出せる。たとえば、ダークなシーンを集めることでホラームービーが作成できたり、宇宙系の家具などを集めることでSF風ムービーを作成できたり。多彩な家具や演出によって、多種多様なショートムービーを製作できるわけだ。ただし、ムービー作成は必ずしも簡単ではない。撮影スタジオやカメラモードが存在する本作であるが、ムービー作成を考慮した機能は存在しないからだ。家具などをセットアップし、住民の気まぐれな動きを見計らい、シーンを収めていく。そして、ムービー撮影においては「カメラUIバグ」が不可欠であった。


ムービー撮影においては、演出面が極めて重要になる。しかし一方で、カメラモードは、撮影の瞬間以外は、画面に“常にUIを表示させられる”仕様になっている。肝心のスクリーンショットそのものにはUIが映らないものの、カメラモードの際には常に映り続ける。UIが表示されていれば当然、没入感が削がれてしまう。しかし画面にエフェクトやフレームをかけられるといった機能面で、カメラモードはムービー撮影には必須。そこでムービークリエイターたちは「カメラUIバグ」を使用していた。カメラを起動したタイミングで+ボタンを押すことでUIを消したままカメラモードが運用できるバグだ。このテクニックの用途はムービー作成に限っておらず、凝った動画を作成したい、職人たちにとっては必須の技となっていた。しかし、このバグは7月頭のアップデートにて消失。ここにきて、『あつまれ どうぶつの森』でさまざまなショートムービーを製作してきたEvil Imp氏が声をあげたことにより、このバグ修正について嘆く声が広まりつつある。

同氏は「Save Animal Crossing Filmmaking!」と題した動画にて、7月のパッチにて「カメラUIバグ」がなくなったことを悲しんでいる。HUDを隠す“無害なバグ”が修正され、数百万のむらびとが職を失ったとコメント。役者のどうぶつたちが失意にくれていると、同氏の世界観をもって修正を嘆いている。Evil Imp氏自身のゲームでは、ムービー撮影のためにアップデートを実施していないものの、その弊害で海水浴も楽しめず、オンラインにつなげることができない、過去の世界での生活を強いられているという。嘆きながらもカメラUIについて、任天堂に今一度見直してほしいと願い、動画を締めている。

UIを非表示にするという些細なバグであるが、ムービークリエイターにとっては生命線だったようだ。彼らは、バグ自体が何か危害を加えるわけでもなく、ゲームバランスを崩すものではないと主張。無害なバグであるにも関わらず、なぜ率先して修正するのか。そうした不満が#saveACfilmのハッシュタグに乗せて寄せられているわけだ。『あつまれ どうぶつの森』を使って、さまざまなサスペンスムービーを作成し人気を博していたEvil Imp氏が苦しんでいると訴えたことにより、抗議の声が強まっているのだろう。

同様に修正されたことにより不満が呈されているバグとしては、滝抜けバグがあげられる。同バグは、段差を乗り越える仕様を利用して、滝を抜けるという不具合。単なる壁抜けではあるが、滝の裏に隠れ家を作り滝抜けバグを使用して秘密基地的な演出をすることがコミュニティでちょっとした人気を呼んでいた。このバグについても、7月頭のアップデートによって消えることとなった。こちらの対応においても、外観バグのようなユーザーにとって困る不具合はそのままにしながら、無害なバグをなぜ修正するのかという疑問が、一部ユーザーから寄せられている。

無害なバグをどうするかという点は難しい問題であるが、不具合を修正するのは任天堂としては当然の対応であるだろう。実際のところ、そのバグが本当に無害であるかはわからない。異なる部分での不正プレイにつながる可能性はあるし、さらなる不具合の糸口になり得る。カメラモード自体は、前述したように撮影時にはUIが消えるので、機能性として問題があるわけでもない。むしろ「カメラモードを使ってムービーをとる」という創造的な試みを、任天堂が予想していなかったように見える。ただし、撮影時だけでなく、カメラを構えている段階でもUIを消せるオプションが追加されれば、ムービー職人以外も喜ぶかもしれない。職人たちの声が届き、彼らがまたゲームをアップデートし、ムービー撮影できるようになる日はくるのだろうか。

【UPDATE 2020/7/30 13:55】
『あつまれ どうぶつの森』更新データ1.4.0により、カメラモード中のUI非表示が可能になった。詳しくはこちらの記事を参照。

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