『あつまれ どうぶつの森』埋まらない空き地、消えた住民の怪。島民トレード市場に影を落とす「神隠し追放バグ」


『あつまれ どうぶつの森(以下、あつ森)』で深刻なバグが報告されている。その内容とは、「自分の島に勧誘した住民が永遠にやって来ない」というもの。『あつ森』ではさまざまな手段を使い、好きな住民を自分の島に引っ越しさせることができる。もっとも基本的な方法は「離島」や「キャンプサイト」に訪れたどうぶつを呼ぶことだ。どちらもランダムなキャラと出会うことができ、相手に話しかけることで島への引っ越しを促すことが可能。ほかの方法としては「amiiboカード」を使う手もある。こちらは任天堂から販売されているグッズで、ランダムでカードに描かれた住民を読み取り確実に自分の島へ移住させることができるという代物。そしてもう1つの道が、ほかのプレイヤーの島からヘッドハントするという手法だ。

島にいるどうぶつは、何らかの条件から「引っ越し」を申し出ることがある。そしてこのフラグが立つと住民は荷物をまとめて出立の準備を始め、いわゆる「段ボール状態」に入るのだ。この瞬間がスカウトのチャンスである。住民を欲しがっているプレイヤーは他プレイヤーの島へ遊びにゆき、段ボール状態の住民に話しかけることで、自分の島への移住を勧めることが可能となる。うまくゆけば、もといたプレイヤーの島から住民はいなくなり、新たに勧誘したプレイヤーの島へとどうぶつが引っ越してくるのだ。この仕組みをうまく使えば、友だちの島にいる気になるあの子を自分の島にお迎えすることができる。

そしてあの子は来なかった

ところがこの仕組みにバグが見つかった。ある条件でこの住民勧誘を行うと、うまく引っ越しが成立しないのである。引っ越しに失敗した場合の状況が悲惨だ。まず、もといた島から住民はいなくなる。そして勧誘をかけた側の島では、売りに出している土地に「ご成約」の看板が立つ。あとはこのスペースに住民がやってくるのを待つだけ……なのだが、待てど暮らせど誰も来ない。訝しんで看板を調べると奇妙なことに気がつく。そこに書かれているのは「    様 ご新居 建設予定地」の文字。名前の部分が空白になっているのだ。この状態に陥ったが最後、空き地に住民がやってくることはない。姿を消したどうぶつは帰ってこない。ただ売約済の土地だけがぽっかりと島に残されるだけだ。ネット上では、憧れの住民をお迎えし損ねたプレイヤーの悲鳴があちこちで聞こえている。

https://twitter.com/smo48876667/status/1242782185364393985

このバグはどのような条件で引き起こされるのか。海外の『どうぶつの森』情報共有サイトにて詳しいレポートが上がっている。トリガーは引っ越す住民がもといた島で「追放」を受けることにあるようだ。追放とは、「キャンプサイト/amiiboを用いた強制的な排除」だ。冒頭で述べたとおり、本作ではキャンプサイトに訪れたどうぶつやamiiboで召喚したキャラクターを島に勧誘することが可能。しかし無人島に収容できる人数は10名が限界となっている。そして島が満員のときに上記の方法で勧誘を行うと、代わりに今いる住民のなかから誰に島を出て行ってもらうか選択することになるのだ。これが今回のバグで焦点となる「追放」である。

なお、ネット上では「住民の好感度を下げることで島から追い出すことができる」との噂があるものの、今回のバグとは関係がない。 Image Credit : Engadget日本版

キャンプサイト/amiiboお迎えにより押し出される形で引っ越しを強制された住民は、ランダムイベントの引っ越し時と同様「段ボール状態」に入る。このタイミングの住民をほかのプレイヤーが勧誘してしまうと、誘った側の島で空き地バグが発生してしまうのだ。重要なのは「キャンプサイト/amiibo経由で追い出しを受ける」ことである(なお離島スカウトについては、自分の島が満員の場合はそもそも新たな住民が現れない)。もしほかのプレイヤーの島の住民を勧誘する場合でも、その住民が「自発的に引っ越しを申し出ていた」場合、バグは引き起こされないことが報じられている。

今回のバグについて、すでに国内外から任天堂へ問い合わせが寄せられている。あるユーザーの報告によれば、任天堂はすでにバグについて認知済みとのこと。先んじて報じられていた「アイテム複製バグ(関連記事)」に対しても迅速なパッチが当てられただけに、今回の不具合についても急務で修正が行われると思われる。ただし問い合わせへの返答によれば「現在、修正対応に向けた調査段階にある」とのことで、問題の改善にはやや時間がかかる見込みだ。

https://twitter.com/smo48876667/status/1244428659546456065

波紋広がる、どうぶつ「里子」マーケット

「追放・勧誘バグ」が引き起こす問題は、まずひとつには「幽霊空き地」の発生がある。前述のとおり島に受け入れることのできる住民は10名が限界だ。そこを1枠、誰も引っ越してこない土地が潰してしまうとなれば、島を賑わせたいプレイヤーにとっては大きなストレスとなるだろう。そしてもうひとつ今回の一件が深刻な被害をもたらしているのが、ネット上に存在する「島民トレード」市場である。

https://twitter.com/simp4miku/status/1242692401925324802

海外コミュニティのReddit上には“AC:NL Villager Adoptions(とび森 むらびと養子)”と称した掲示板が存在(『とび森』向けに作られたが、実態として『あつ森』で利用されている)。いくつものスレッドで「求:○○ 譲:××」とのトレード条件が提示され、好みの住民を求めるプレイヤーで溢れている。中には「譲:amiiboカード、マイル旅行券」といった物資と住民の交換も行われているようだ。こうしたやりとりはTwitter上でも見られ、ネット各所でマーケットが形成されている。そしてオンラインを介したやりとりの際、件のバグが非常に厄介な問題となってくるのだ。友だち同士でお気に入りの住民を交換するならまだしも、素性の知らない相手とデータをやりとりする場合、相手の住民が「追放」を受けたかどうか判断するのは困難。悪気がなくとも、バグを知らずに取引を成立させ、交換したのちに住民が現れずトラブルになるケースがあるようだ。現在インターネット上で島民トレードを行う際は、必ず相手に「住民が自発的に引っ越しを検討している」セリフのスクリーンショットを提示してもらうように呼びかけられている。

『あつ森』の大きな魅力は、好みの住民と一緒にスローライフを過ごせることだ。どのようなルートであれ、他人の助けで憧れのどうぶつと縁を結ぶのは現代のゲーム環境に合った新しいプレイスタイルともいえるだろう。しかし、少なくとも現状においてはトレードを用いた住民獲得は大きなリスクを伴うといえそうだ。焦らず急がず、今後の任天堂の対応を注視することが賢明な判断と思われる。願わくば、これ以上データの闇に飲まれるどうぶつが出ないことを祈りたい。

【UPDATE 2020/4/2 15:30】
任天堂は『あつまれ どうぶつの森』更新データVer. 1.1.2を配信。パッチノートには「特定の条件下で、よその島から引越しの勧誘をしたどうぶつが引越してこず、移住予定の空き地が成約済のまま残り続ける不具合を修正しました。」と記載されている。本稿にて取り扱った不具合については、修正されたと見ていいだろう。