『DOOM Eternal』が賞賛される中、「マローダーだけは許せない」との海外評価が目立つ。プレイヤーにとにかく嫌われる新たな天敵

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Bethesda Softworksより3月20日に発売された『DOOM Eternal』(国内PlayStation 4/Xbox One版は3月26日発売)。Steam版は初日に同時接続プレイヤー数が10万人を超える盛況ぶりを記録(Steam統計)。各メディアからは、爽快感あふれるシングルプレイFPSとして高評価を集める傾向にある。ただし、共通した指摘項目として、本作にて新登場する敵キャラクター「マローダー(Marauder)」に関して、疑問を呈する声が多く挙げられている。

 

新たな天敵マローダー

マローダーは、スーパーショットガンとアージャントエネルギー製のバトルアックスを構えた強敵。初回はボス戦として、その後は通常のモブ敵として登場する。近距離時には回避が困難なスーパーショットガンを、遠距離時にはバトルアックスからエネルギー波を放ち攻撃を仕掛けてくる。またプレイヤーが攻撃すると、シールドを瞬時に構えて防御。BFG-9000といったスーパーウェポンに耐性を持っているので、それらに頼ることもできない。唯一、マローダーの中距離攻撃時、目が緑色に光るタイミングでのみ、攻撃を当てられる。

このマローダーについては、攻略難度というより、戦闘のフローを止めてしまうことを残念がる声が多い。他の敵種にも弱点はあるが、マローダーのように攻略方法を制限してはいない。マローダーのみ、戦い方が指定されるのだ。攻略方法自体はゲーム内チュートリアルで説明されるので、理解するのは簡単。あとは攻撃を避けつつスイートスポットである「中距離」の範囲を掴むことになるが、至近距離でも遠距離用の攻撃を仕掛けてきたりと、行動パターンがやや安定しないことも、厄介な点となっている。

 

同作のゲームプレイにそぐわないとの指摘

*マローダー戦のサンプル動画。なおYouTubeでは、「マローダーを簡単に倒す方法」といったハウトゥー動画が多数公開されている。実際、距離感を掴むことに慣れると、マローダーを倒すこと自体はそれほど難しくない。各レビュアー、プレイヤーの意見としても、難しさというよりは、遊び方を変えねばならないことに抵抗を覚える声が多い

 

1作あたり30分~1時間のロングレビュー動画で知られるYouTubeチャンネル「Skill Up」は、『DOOM Eternal』について過去最高のFPS体験のひとつであると評しつつも、「マローダーをゲームから完全に削除するのに、遅すぎることはないんだと、id Softwareにリマインドしたい。そして僕たちは、マローダーなんて最初から存在しなかったんだと言い張るんだ。歴史家たちは困惑するだろうけど、それでいいんだ。彼らもマローダーもクソ喰らえだ」と、冗談気味にマローダーを批判。

このツイートには、TwitchストリーマーのCohn Carnage氏による「(マローダーは)正しい挙動になっているようには思えない」との返答や、YouTubeで活動しているUpper Echelon Gaming氏による同意コメントが寄せられたほか、「目が緑色に光る」タイミングで攻撃せよと言われても、色覚異常があるので色では判断できないというユーザー意見が複数確認できる。攻撃動作の始動時には、目の色だけでなくサウンドエフェクトによる合図もあり、必ずしも映像だけが頼りというわけではない。とはいえ、判断材料が減るという意見は理解できる。またYouTubeチャンネル「Cleanprincegaming」にて『DOOM Eternal』を高く評価したTyler J.も、マローダーについては拙い戦闘デザインであると問題視している。

個人レビュアーに限った傾向というわけでもない。海外メディアArs Technicaは、レビュー記事にて同作を絶賛しつつも「ひとつだけ、ペースを崩す欠点がある」としてマローダーに言及。マローダーが登場するまでにゲームが築き上げてきた「避けて撃つ」のノンストップアクションが通用せず、フェアに感じないと指摘した。マローダーがモブ敵として出現したときの「唯一の現実的な選択肢は、他の敵を全部倒すまでマローダーを完全に避け、最後に1対1で戦うこと」であり、あらゆる戦闘の中でもっとも苛立つ部分であるとも述べられている。そのほかPolygonUSgamerも、ゲーム自体を高く評価しつつ、マローダーについては例外視している。

批判される一方で、PC Gamerのようにマローダーの意図を冷静に分析するレビューも見られる。「『DOOM Eternal』は、キーボードの数字キー列に慣れ親しむことを求めるだけでなく、『DOOM』の昔ながらのアリーナバトルの最中に、プレイスタイルを変えるよう仕向けてくる。ボクシングをやめて、柔道に切り替えなさいと」。熟練のFPSプレイヤーたちが、そして歴戦の勇士であるドゥームスレイヤーが身に染み込ませてきたであろう習慣を変えねばならないのが、マローダー戦なのである。なおPC Gamerはマローダー戦について「『ダークソウル』のデュエルのような静かなる拘束」とも表現している。

 

プレイヤーがオビ=ワンなら、マローダーはダース・モール

もちろん、マローダーとの戦闘が他のデーモン戦と明確に異なるのは、開発陣の意図どおりであろう。同作のクリエイティブ・ディレクターであるHugo Martin氏は、NoClipのデーモン解説動画にてマローダーのことを、「黒帯レベルに達したプレイヤーの前に現れる、もうひとりの黒帯」「あなたはオビ=ワンで、マローダーはあなたにとってのダース・モール」「チェス盤におけるクイーン」と表現している。マローダーが出現した際には、「良いブルース・リー映画のように、まわりの白帯を倒してから名人と対峙する」攻め方が推奨されている。先述したArs Technicaのように、1対1に持ち込むことしか現実的な選択肢がないと苦言を呈する意見もあるが、それこそが開発陣が望んでいた対処方法なのだ。

ゲーム内で提示されるキャラクター設定としても、マローダーは主人公ドゥームスレイヤーの戦闘スタイルを熟知していることが示唆されている。強固な盾であらゆる攻撃を防ぎ、距離を詰めてきたらスーパーショットガンをお見舞いするというのは、攻撃こそ最大の防御を体現したドゥームスレイヤーのカウンター戦法として正しいだろう。多くのプレイヤーがマローダーを煙たがっているのは、ドゥームスレイヤーの天敵としての役目を果たせている証拠でもある。プレイヤーが熟知したドゥームスレイヤー流の戦い方では倒せない異色の存在なのだ。

戦い方については、初戦闘時のチュートリアルやコーデックスにて説明される

ただし開発陣の狙いが、プレイヤーとして面白い、もしくはやりがいのあるものとして受け入れられるとは限らない。それでも自身のビジョンを貫くのか、それとも批判的なプレイヤーからのフィードバックを受けて妥協点を探るのか。その選択は開発者次第である。

 

新しいドゥームスタイルを受け入れられるかどうか

*『DOOM Eternal』ローンチトレイラー

『DOOM Eternal』は、2016年に発売された新生『DOOM』の直接の続編として、id Softwareが開発したFPSシリーズ最新作。前作の出来事の後、地球に帰還したドゥームスレイヤーは、地獄の軍勢に侵略され変貌した惑星を目の当たりに。人類の破滅を食い止めるべく、復讐心に燃えたドゥームスレイヤーの新たな冒険が始まる。同作では主人公のバックストーリーが掘り下げられるほか、読物アイテムのコーデックスを通じて本シリーズの世界観が広がりを見せる。

戦闘面では、高速ダッシュによるドゥームスレイヤーの機動力向上にあわせて、敵の行動もスピーディーになり、全体的な戦闘体験が高速化している。チェーンソーキルによる弾薬補充、グローリーキル(敵にトドメを刺す近接攻撃)による体力回復、そして火炎放射器(フレイムベルチ)によるアーマー回復。攻撃とリソース補充の一体化が前作以上に顕著となり、リソースをうまく管理すれば、ドライヴ感を維持しての継戦が可能に。マップを飛び回りながらの熾烈なデーモン狩りを堪能できる。

ただ速いだけでなく、敵の弱点に応じた武器の使い分け、成長要素である「武器MOD、スーツ、ルーン」のアップグレードを通じた戦術・プレイスタイル選択の幅もあり。戦闘外では、ダッシュとダブルジャンプを駆使する移動アクションパートを強化。探究心をくすぐるマップデザインおよび探索・収集要素も醍醐味のひとつとなっている。『DOOM』らしいゴア表現や、前作に続きMick Gordon氏がコンポーザーを担当したサウンドトラックも健在だ。

前作からの変化を良しとするレビューが多数である一方で、嫌われ者としての共通認識が醸成されつつあるマローダーや、マップデザインの一部など、短所として指摘される箇所もある。前作からの方向性変更や、パズル・移動アクションの多用を歓迎しない声もあり、2016年の『DOOM』を好んだプレイヤー全員が楽しめるわけではない。前作からの変化を受け入れられるかどうかが、評価を分けるポイントだろう。そしてマローダーは、開発陣が変化を望んでいることを顕著に示す新キャラと言える。部分的な指摘はあれど、緊張感・爽快感あふれるFPSとして概ね高く評価されている『DOOM Eternal』。PC版(Bethesda.net/Steam)はすでに配信中、国内PlayStation 4/Xbox One版は3月26日発売予定だ。

【UPDATE 2020/03/24 0:00】
最終段落が言葉不足であったため加筆。

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