『Apex Legends』のレヴナントにはもともと、「敵を永遠にマークできる能力」が備わっていた。あまりにも強すぎてボツに

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昨年2月にサービスが開始され、現在に至るまで数多くのアップデートが重ねられてきた『Apex Legends』。配信1周年を迎えた先月5日には、シーズン4が開幕。新たなロケーションや武器、そして新レジェンド「レヴナント」の追加などにより、ゲーム内の環境は大きく変化した。そして今回、実際にレヴナントが実装されるまでの裏話が開発者により語られたようだ。海外メディアDot Esportsが報じている。

無機質な外骨格。頭から首にかけて巻かれた赤いフード。冷酷さを漂わせる鋭い目つき。レヴナントは、Hammond Robotics社への復讐を誓う暗殺ロボットだ。実際のゲームプレイにおいては、トリッキーなアビリティを所持。敵の能力を封じるデバイスを投てきしたり、自身・味方を死から守るトーテムを呼び出したりと、機略に富んだ動きで敵プレイヤーを翻弄させる。また移動に特化したパッシブによる、素早い動きも特徴的だ。そんなレヴナントについて、開発段階ではまた別のアビリティが付与されていたようだ。

今回Dot Esportsとのインタビューにて、『Apex Legends』のデザインディレクターであるJason McCord氏は、実装前にボツとなったレヴナントの能力について語っている。そのアビリティの名は「Marked for Death」(戦術枠)。内容としては、敵をマークできる特殊な弾を腕から放つといったもの。具体的には、弾を当てたプレイヤーに特殊なアイコンを付与することで、敵位置の把握ができる能力であったようだ。さらにこのアイコンは、チーム全体に共有されるうえ、試合終了時まで表示される仕様だったという。

こうしたアビリティをレヴナントに所有させようと試みた背景には、同レジェンドのキャラクター性が深く関わっているという。レヴナントといえば、その登場過程も特徴的であった。シーズン4開幕前にして、新レジェンドとして参戦予定であったフォージを暗殺。その後公開されたトレイラーでは、冷酷なアサシンとして人々を虐殺するシーンが収められていた。そうしたレヴナントの凶暴性をゲームプレイに落とし込むにあたり、「Marked for Death」の採用が適していると開発陣は考えていたようだ。

しかし一方で、アビリティの実装においては、ゲームバランス面も考慮しなければならない。そうした点を踏まえると、時間無制限に敵をマークできる「Marked for Death」は、あまりにも強すぎると開発陣は判断したという。こうしたプロセスを経て、最終的にレヴナントの戦術アビリティ枠には、10秒間敵の能力を無効にする「サイレンス」が採用されることとなったようだ。

またほかにもレヴナントの性能については、しゃがみ時のアニメーションも今と異なるものが開発段階では用意されていたという。現在実装されているレヴナントは、しゃがみ移動により素早い動きが可能となる。そして開発段階ではこの際に、蜘蛛のように変形する特殊なモーションも実装されていたようだ。さらにそのまま、四つん這いになって駆け回ることもできたとのこと。しかし、こうしたしゃがみ時の変形アニメーションは、ストーカーパッシブの有用性を潰しかねないとして最終的に取り払う形となったようだ。くわえて四足歩行による移動は、ヒットボックスの調整を困難にさせるとも考えたよう。ヒットボックスについては、度々ユーザーからその大きさの適切性について指摘されてきた側面もある(関連記事)。後に必要となるかもしれない当たり判定の修正をよりスムーズにおこなうため、複雑なモーションは取り入れないことにしたのだろう。

ちなみにレヴナントの性能とはまた異なる話題だが、今回のインタビューにて『Apex Legends』でデザイナーを担当するRayme Vinson氏は、なぜレヴナント実装前にフォージを登場させたのか、その理由について述べている。これには、データマイナーの目を本当の新レジェンド(レヴナント)から背けさせる意図があったようだ。Vinson氏は、フォージ登場から暗殺までの流れを「新レジェンドの発表を台無しにしてきた、データマイナーへの対策として始めたもの」と明かしている。また同氏は「偽(フォージ)のコンセプトアートやデータを、パッチを通じて意図的に流した」とも述べており、データマイナーに手を焼く傍ら、ユーザーにサプライズを届けるために、対策を講じてきたようだ。

またフォージに付随してMcCord氏は、同レジェンドの死亡を疑う、また復活を予想するデータマイナーやユーザーがいることを受け、「フォージは完全に死んだ」と改めて主張。フォージについては、そもそもモデルさえ作成していないとのこと。『Apex Legends』は人気タイトルゆえに、さまざまリーク情報や噂が飛び交っている側面もある。安易にこうした情報を発信することは、開発者の意図を無碍にしかねない。前述したVinson氏の発言は、データマイナーやリーカーへの対策内容であると同時に、警鐘とも捉えられるだろう。

ボツとなったレヴナントのアビリティや、フォージ暗殺の“舞台裏”が明かされた今回のインタビュー。『Apex Legends』に限った話ではないが、開発過程においてプレイヤーの目に触れることなく役目を終える要素は沢山あるのだろう。一方で、質の高いコンテンツは、さまざまなテストや試みを通じてこそ生み出されるのかもしれない。今回のMcCord氏およびVinson氏による発言からは、改めてゲームづくりの奥深さや難しさを考えさせられる。

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