「ソニーさん、イベント出展中止見直して」新型コロナウイルスを理由にPAX Eastへの出展を中止したSIEに対しボストン市長がお願い


ソニー・インタラクティブエンタテインメントは、アメリカ・ボストンにて2月27日から開催予定のゲームイベントPAX Eastについて、出展を取りやめると発表した。当初参加を表明していたものの、2月20日になり一転して出展見送りを発表している。これについてボストン市長のMarty Walsh氏が、同社に考えを改めるよう求めているようだ。地元テレビ局WCVB-TVなどが報じている。

PAX Eastは、あらゆるゲームを対象にしたイベントPAX(Penny Arcade Expo)のひとつとして毎年ボストンで開催。ファンに開かれたイベントとして随一の規模を誇り、大手パブリッシャーからインディーデベロッパーまで数多くのブースが並ぶ。今年のPAX Eastでは、SIEは数多くの新作ゲームに加え、『The Last of Us Part II』を初めてプレイアブル出展するとして話題になっていた。しかし、世界各地で感染拡大が続く新型コロナウイルス(COVID-19)の状況を鑑み、世界中から集まる従業員の健康と安全を考慮した結果、出展を取りやめると発表した。

これを受けてボストン市長Marty Walsh氏は2月22日、ソニー代表執行役社長兼CEOの吉田憲一郎氏に宛てて書簡を送付。その中では、まずボストンおよびマサチューセッツ州での新型コロナウイルスの感染リスクは極めて低いとしたうえで、ウイルスへの恐怖心は情報の欠如や混乱によって高まると述べる。また、そうした恐怖心はアジア人に対する偏見を生み、自らを閉鎖的にし、この国際都市がもたらす機会やコネクションを失わせることに繋がるとして、ボストン市は有害で見当違いの恐怖心を払拭するよう団結しているとコメント。

その上でソニーに対して、巨大な国際的企業として(PAX Eastは)良い手本を示す機会であると指摘。テクノロジー業界のリーダーであれば、恐怖心ではなく事実に基づいて行動することができるはず、またゲーム業界のリーダーであれば、人々からの隔離ではなく繋がりを信じるべきだろうとし、PAX Eastへの出展中止を見直すよう要請した。ソニーは、これまでのところ市長の公開書簡に対して回答していない。

ボストンでは、新型コロナウイルスの発生源だとされる中国・武漢市から帰国した20代の学生が、ウイルスへの陽性反応が出たため自宅にて経過観察しているという。事例としては極めて少ないため、市長が言うように基本的には感染のリスクは低いのかもしれない。ただ、PAX Eastのようなイベントには世界中から多くの企業とゲームファンが集まり会場に密集するため、不安要素が残るというのがソニーの判断なのだろう。そもそも、現地市長がイベントのいち企業に参加取りやめを撤回するよう求める例は珍しい。それほどSIEの存在は重要で、イベントの盛り上がりや現地経済の活性化にとって不可欠だと考えたのかもしれない。

ソニーは、本日2月24日からスペインで開催予定だった携帯通信関連イベントMWCへの出展も、今回と同じ理由で先に取りやめており、PAX Eastへの不参加はこれに倣った判断だったようだ。またスクウェア・エニックスも、PAX Eastへの『ファイナルファンタジーXIV』開発スタッフの参加を取りやめ、現地でのファンイベントを中止した。ほかにも、中国での開催が予定されていた複数のeスポーツイベントの延期や開催地変更などがおこなわれており、ゲーム業界にも新型コロナウイルスの影響は現れ始めている。

ちなみに、MWCではほかにも出展中止する企業が相次いだため、イベント自体が開催中止となった。PAX Eastについては、現時点ではそれほど不参加の動きは広がっておらず、予定どおり開催されるものと思われる。数多くの新作ゲームがプレイアブル出展されるほか、新情報の発表も相次ぐことだろう。