任天堂の『ドンキーコング64』では、開発当初“やたらリアルなショットガン”が実装されていた。宮本茂氏を困らせ仕様変更

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NINTENDO64にて発売された『ドンキーコング64』。Rare社が開発した3Dアクションアドベンチャーゲームである同作は、大作ながら賛否両論の多い作品でもある。というのも、なかなかに尖った作品として開発されていたからだ。広大なステージに、複雑な地形。膨大な収集要素に、手強い敵。終始、プレイヤーを不安にさせるダークな雰囲気。奥行きととっつきづらさと併せ持つ『ドンキーコング64』は、作り込まれた、尖ったゲームと表現して差し支えないだろう。そんな同作においては、ゲーム内容に勝るとも劣らない、尖ったエピソードが存在しているようだ。具体的には、ゲームの開発中に、ドンキーコングにショットガンを装備させており、宮本茂氏を困らせたというものだ。同作のクリエイティブディレクターであるGeorge Andreas氏が、GamesRader+に語っている。
【UPDATE 2019/12/11 14:55】
タイトルを「任天堂の『ドンキーコング64』では、開発当初“やたらリアルなショットガン”が実装されていた。宮本茂氏が失笑したことにより仕様変更」から、「任天堂の『ドンキーコング64』では、開発当初“やたらリアルなショットガン”が実装されていた。宮本茂氏を困らせ仕様変更」に変更しました。

イギリスのRareにて開発されていた『ドンキーコング64』。本社の上層部である宮本茂氏やHAL研究所の岩田聡氏、そして当時の米任天堂社長がスタジオに視察にくることがあったという。Andreas氏ら開発スタッフは、すぐにゲームを起動、同作の開発で力を入れていた“ラップ”を幹部らに披露し、ドンキーコングを選択しプレイ。ドンキーコングが木に登ったりバナナを集める姿を見せると、宮本氏は笑顔を見せていたそうだ。しかしながら、ボタンを押し武器を装備したところから話がややこしくなり始めた。というのも、ドンキーコングはリアルなショットガンを突如として構えたからだ。

『ドンキーコング64』では、それぞれのキャラごとに射撃武器が用意されている。ドンキーコングのココナッツ・キャノンは、そのうちのひとつ。その名のとおり、ココナッツを射出する武器である。しかしながら、開発中ということもあり、ショットガンを実装していたそうだ。単にテクスチャがつけられただけの銃ではなく、鈍い銃声が鳴り響くリアルなショットガン。偉い人々がいるにも関わらず、開発中に仕込んだリアルなガンを見せてしまったわけだ。ビーバーなど敵キャラをショットガンで撃つなどしていくと、笑顔だった宮本氏の表情は徐々に曇り、恐ろしい顔になったそうだ。この仕様に耐えきれなくなったのか、氏はまたしても笑顔を見せながらも、すぐさま紙とペンをとり、ココナッツ・ガンのイラストを書いて見せたという。Andreas氏は、すぐさまこの提案を快諾し、結局リアル・ショットガンはココナッツ・ガンに置き換えられたそうだ。

当時宮本茂氏が暴力表現を嫌っていたという話は有名で、『ゴールデンアイ 007』にて殺人を除こうとしていたというエピソードも飛び出している。同じくRareで開発されていた『ゴールデンアイ 007』は、銃撃し敵を倒していく作品。開発当初に実装されていた“血の噴水”のような表現は除かれたが、それでも宮本氏は暴力表現が気になっていたようで、「ゲームが終われば病院に行って、敵全員と握手するようなゲームにするのはどうか」という提案をされていたと、プロデューサーとディレクターと務めていたMartin Hollis氏が明かしていた(関連記事)。

家庭に愛される、暴力の少ないゲームづくりを目指してきた宮本氏にとっては、会社のアイコンのひとつであるドンキーコングが、リアルなショットガンを携えるというシチュエーションは受け入れ難かったのだろう。当時の宮本氏のゲームづくりの哲学が、如実に反映されたエピソードのひとつであるといえそうだ。そうした哲学は、今の任天堂のゲームづくりにも引き継がれているかもしれない。

なお同情報を掲載するGamesRader+のGeorge Andreas氏へのインタビューでは、前出のラップについてなど、『ドンキーコング64』における裏話が数多く語られている。全文英語であるが、興味のある人は読んでみるといいかもしれない。

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