『スーパーマリオメーカー』にて、極悪ステージがついにクリアされる。求められたのは750万分の1を引く強運


『スーパーマリオメーカー』コミュニティにおいて、数週間前から話題になっているとある高難易度(?)ステージ「Lucky Draw」。目前に控えた『スーパーマリオメーカー2』の発売までにクリアが出ないとまで言われていたこのステージに、先日正式なクリア者が現れた。コミュニティからハックではなく最初の本当のクリア者として認定されたJosh氏は、クリアを達成したその瞬間、ゲーム画面を見てすらいなかったという。

「Lucky Draw」は、ニュージーランドのレベルクリエイターPhenotype氏による作品だ。ピーキーな作品で知られるPhenotype氏だが、「Lucky Draw」において氏がプレイヤーに求めた能力は単純明快。そのステージ名が指し示すとおり、ただひたすらに運が良いことだ。

このステージにおいて、プレイヤーはマリオを一切操作することができない。いわゆる「オートマリオ」に分類されるステージと言ってもいいだろう。ふたつのブロックの間に挟まれて身動きがとれないまま運ばれるマリオの命運を決めるのは、ステージ中央に配置された6体のカメックである。このカメック達がハテナブロックに呪文を当てると、7種類のアイテムや敵のうちの1つにランダムに変化する(クリボー、ノコノコ緑、ノコノコ赤、トゲゾー、メット、コイン、キノコ)。カメック達の左側には、マリオの足場を消し去るスイッチと音符ブロックが配置されている。スイッチが押された瞬間にマリオの死が確定するため、このステージのクリア条件は「カメックの魔法が当たった6つのハテナブロックが全てコインに変化し、それが左ではなく右に移動する」ということになる。

このステージは一切の操作を要求しないため、いくつかの仮定のもとにクリアの確率を単純に求めることがでる。カメックの呪文が当たったハテナブロックが何に変化するか、そして変化したコインが左右どちらかに移動するかが同様に確からしい時、ハテナブロックがコインに変化して右に移動する確率は1/7 * 1/2 = 1/14と考えることができる。そして6つのカメックによるブロックの変化がそれぞれ独立した事象であるとすれば、マリオが無傷でステージをクリアする確率は(1/14)^6=1/7529536となる。750万分の1。ゲームでそうそう目にする数字ではなく、ほとんど宝くじの領域である。

いわゆる「ガチャの確率」などでお馴染みの計算ではあるが、「N回試行した時に確率Pで起こる現象が少なくとも1回でも発生する確率」は、「N回の試行全てが失敗する確率」の余事象として求めることができる。ソーシャルゲームのガチャなどでは確定枠などの概念が若干計算を複雑にしてしまうのだが、この「Lucky Draw」の場合はシンプルな計算で「どのくらい挑んだ時にどれくらいの確率でクリアできるか」を求めることができる。

手始めに一日中Wii Uをつけっぱなしにした場合のクリアの確率を求める。「Lucky Draw」1回の試行は大体7秒かかるため、1日でのトライ回数はおよそ12340回となる。この時のクリア確率は0.16%ほどだ。では何回トライすれば50%の確率でクリアできるのか?計算すると、大体5219080回トライすれば五分五分の確率でのクリアが見込めることがわかる。24時間稼働する1台のWiiUでは、422日かかる回数だ。とても新作の発売には間に合わないし、ここまでやってやっと50%だ。

そんな極限の運試しである「Lucky Draw」だが、その開き直った難易度が逆にコミュニティにとって新鮮だったのか、さまざまなプレイヤーがWii Uをフル稼働させてクリアを狙っている。はたして『スーパーマリオメーカー2』までにハックではない正式クリア者が出るのかどうかというところで、前述のJosh氏がクリアを報告したというわけだ。『スーパーマリオメーカー』を中心に活動するストリーマーのJaku氏はこのJosh氏によるクリア報告をハックやチートではないと認めており、コミュニティからも初クリアとして認識されている。Josh氏はこのステージをクリアした瞬間を見逃したというが、そもそも画面を見る必要すら全くないステージなのであって、ある意味当然と言えるだろう。

しかし、このステージへの挑戦を眺め続けている人達も少なからず存在する。Twitchの『スーパーマリオメーカー』ページでは、ただひたすらにこの「Lucky Draw」に挑戦し続ける配信が並んでいて、それなりの視聴者がついている。マリオが何度も溶岩に落とされる光景がひたすら映されているだけではあるのだが、「もしかしたら次はクリアするかも」という気持ちでなんとなく見続けてしまうのだろう。Josh氏のクリアは正式なものではあるものの録画はされていなかったため、実際のクリア映像を撮りたい、見てみたいというのもあるだろう。Jaku氏の配信画面では「この挑戦は、『スーパーマリオメーカー2』が発売されるか映像付きのクリアが提出されるまで続きます!」と書かれている。

『スーパーマリオメーカー』は発売から4年近く経つゲームだが、このゲームが引き出した人々のクリエイティビティには驚くべきものがある。あらゆる形で遊び尽くされながらもいまだに新しい発想が途絶えず、またクリエイター・プレイヤーたちの情熱もいまだに尽きていない。『スーパーマリオメーカー』コミュニティが、6月28日に発売される『スーパーマリオメーカー2』ではどのような驚くべきステージやドラマを生み出してくれるのか、これからも見逃せないだろう。