『FFXIV:漆黒のヴィランズ』吉田Pはメディアツアーで、海外メディアに対し何を語っているか?


発売を7月2日に控える『ファイナルファンタジーXIV:漆黒のヴィランズ』の、メディアツアー記事が29日22時に各メディアより一斉公開された。3日間にも渡るメディアツアーの情報量はまさに膨大だが、今回の記事ではその中でも特に海外メディア・インフルエンサーによって行われた吉田直樹P/Dへのインタビュー内容をいくつかピックアップさせて頂く。海外メディアの情報にまで手が回っていないという『FFXIV』ファンの助けになれば幸いである。

MMORPGのインタビュー記事では、「ロード・オブ・ヴァーミニオン」「モブハント」について触れられている。こういった古めのコンテンツのアップデート予定はあるのかという質問であったが、「どちらかというと、さらに多くの人が楽しめるような新規コンテンツに注力していて、昔のコンテンツのアップデートは優先度が低い」とのこと。「ギルドリーヴ」のような古いコンテンツのクオリティが満足できるレベルにないのは開発も認識しているし、ぜひとも作り直したいとは思っているが、しばらくは後回しになるようだ。モブハントに関しては現在のシステムでほぼ完成しているとの認識だが、近々(内容は秘密だが)アップデートは予定しているとのこと。

Gamerescapeのインタビューでは、タンクと機工士の変更についての質問に答えている。タンクの「簡略化」とも呼べる変更について、吉田Pはタンクプレイヤーのフィードバックを反映した結果だと述べている。タンクプレイヤーのほとんどは、タンクとしての役割をこなしつつも最大限のダメージを叩き出すことを望んでいる傾向がある。敵視を稼ぐために防御スタンスをオンにすることで、DPSを落としてしまうことをタンクプレイヤーは嫌がる。開発の当初の意図では、戦闘中に必要に応じて巧みに攻撃スタンスと防御スタンスを切り替えることがタンクの「腕の見せ所」になるはずだと考えていたが、このシステムはタンクプレイヤーにはストレスとなってしまっていたようだ。防御スタンスのダメージペナルティをなくし、攻撃スタンスをなくすことでスタンスの切り替えそのものを不要にすることで、熟練タンクプレイヤーのフィードバックに応えつつも新規やタンク初心者にもとっつきやすくなったのではないか、と考えているようだ。

機工士の変更については、まずは4.0のヒートゲージというシステムのいびつさについて語られた。吉田Pによると、ヒートゲージの「高くもなく低くもない状態をなるべく維持して、適切なタイミングでオーバーヒートさせる」という仕様は非常に直感的に分かりづらく、とっつきづらいものであった。機工士に限らず、全ジョブにおいてゲージはあればあるだけ良いという方向性で調整を施したとのこと。また、単純に「機工士はプレイしていて面白くない」という意見が多かったようで、開発が蒼天から紅蓮にかけて持っていた「機工士は銃をスタイリッシュに撃つジョブ」というイメージを根本的に見直す必要を感じたという。漆黒では「機工士」という名前に立ち戻り、さまざまな機械や(銃を含む)武器を自在に使いこなすジョブデザインに変更したのだという。

タンクと機工士の変更について質問しているメディアは日本・海外を問わず多く、コミュニティからの注目度の高さが伺えた。

CGMのインタビュー記事では、漆黒のBGM/サントラについての質問がされていた。蒼天のBGMはパイプオルガン等を多用した宗教的な雰囲気を漂わせるものが多く、また紅蓮のBGMは全体的にアジア風であった。漆黒のメインテーマには「ロック調」を指定しており、少しファイナルファンタジーっぽくないものになった。漆黒では、各エリアにそれぞれ独特のモチーフと楽器郡を設定し、新しいエリアを探検するごとに新鮮な感覚を味わえるようにした、とのこと。

他には、コンパニオンアプリのアップデートについての質問もあった。吉田Pによると、漆黒のアプデはシステムにも大きく手を加えているため、コンパニオンアプリはまずそれに対応させる作業が必要だという。ただし、近い将来のアップデートとしてコンパニオンアプリからリテイナーベンチャーをできるようにする予定はあり、漆黒への対応が終わり次第、そちらの開発に手を付ける予定のようだ。また、実際のゲームクライアントからはできないような、コンパニオンアプリ独自の機能を追加する予定もあるとコメントしている。

Mogtalkのメディアツアーカバレージでは『FFXIV』の最難コンテンツである「絶」についての質問があった。まず、5.0になっても「絶バハムート」「絶アルテマ」のILシンク等の制限は解除されず、称号の価値は維持されるようだ。ただ、インタビューでは触れられていないが、戦闘システムの変更やレベル70シンクにおける各ジョブのスキルセットの変更による実質的な難易度の変化は存在するだろう。こればかりは実際に5.0になってみないと分からない部分だ。

吉田Pには5.Xの絶シリーズの予定についても回答した。5.Xにおいても絶シリーズは予定されているが、個数まではまだ決まっていない。4.Xの絶も当初は3つ実装する予定だったが、絶バハムートのレイドレースからフィードバックを受けて急遽3つめを中止した。絶アルテマ実装時にはレイドプレイヤーの元気が戻っており、「3つめも是非実装してくれ」という声が多かったが、バルデシオンアーセナルと漆黒の開発に集中できたので中止してよかったと思っているという。5.Xの絶は3つか2つかでまだ悩んでいるが、1つめをリリースした時の反応を見て決めると思うとコメント。絶の開発は大変で、あのレベルの戦闘コンテンツを作れるのは『FFXIV』のチームにも3人しかいないので、クオリティを落とさないようにするためにも慎重になっているとのことだ。

続いて、『FFXIV』コミュニティで活躍するインフルエンサー達のインタビューからピックアップしていく。レイドレースの配信でも有名なMrhappy氏のインタビュー報告動画では5.0でのヒーラー負担について述べられている。Mrhappy氏はメディアツアーでダンジョンをプレイしている時に、タンクへの攻撃と全体攻撃、どちらも紅蓮時代に比べてやや激しいと感じた。これについて吉田Pに聞いてみたところ、開発チームは紅蓮時代のヒーラーはアビリティでヒールをいくつか投げた後はダメージを出すことに集中できるような、やや生ぬるい状況にあったと考えたそうだ。結果として、漆黒ではダメージを引き上げてヒールの必要性を高める傾向の調整はされているという。ただ、ヒーラーはヒールのみに専念するべきという信念のもとされている調整だと勘違いされる可能性があることや。ヒーラー達が「5.0のヒールは大変らしい」と身構えてしまうのも本意ではないため、開発としてはあまり強調したい調整方針でもないとのこと。ピュアヒーラーの代表でもある白魔道士であっても、「ブラッドリリー」というジョブ固有システムによって強力な攻撃を撃てるようになっている。ヒーラーにはヒールと攻撃でうまくバランスを取りつつも、紅蓮時代よりはヒールに重きを置く必要がある調整となっているようだ。

Mrhappy氏は最後に零式4層ボスについても訪ねている。4.Xの零式4層ボスはどれも「2フェーズ形式」と取っており、例外なく前座となるボスが用意されていた。このシステムは、演出面では好評だったものの、攻略にかかる時間を無駄に引き伸ばしている側面や毎週倒さないといけないことの面倒臭さが指摘されてもいた。5.Xの零式4層ボスは、このような方式を取る予定はないようだ。吉田Pが具体的なことを語ることはなかったが、「4層ボスは、今までにないような方式を用意している」そうだと、Mrhappy氏は説明した。

Very Merri氏の動画では、情報解禁以降コミュニティでも話題になっている新ジョブ「ガンブレイカー」の無敵スキルについて触れられている。ガンブレイカーの無敵スキル「ボーライド」はほぼ同じ用途で用意されているナイトの「インビンシブル」と同じリキャストを持ちながらも効果時間が2秒短く、また発動時に自身のHPが1になるというデメリットが存在する。インビンシブルの劣化としか言いようのないこのスキルは流石に弱いのではないか、とVery氏は尋ねている。吉田Pによる返答は、まずボーライドは決して弱いスキルではないということ。タンクロールの無敵スキルのスタンダードとしてはむしろボーライドの方が適切であり、インビンシブルが現状ではちょっと強すぎる性能をしている。長らく変更されておらず、ナイトの代表技ともなっているインビンシブルを弱体化した場合はコミュニティの大きな反発が予想できるため慎重になっているが、開発の認識としてインビンシビルの性能は少し行き過ぎているようだ。吉田Pは明言しなかったようだが、近い内に弱体化される可能性はありそうだ。

また、Very氏の動画では一部で噂されている「ブリッツボールの追加」について触れられている。Very氏のブリッツボールに関する質問に、吉田Pはかなり答えづらそうにしていたが、どうにも開発内でもブリッツボールをどういう形で実装するべきかという点において意見が別れているようだ。FF10に忠実なシステムにするのか、よりFF14的な、もしくはアクションゲーム的なアプローチを取るべきか、決めかねたまま開発が止まっているという。ただし、ゴールドソーサーの新しいアトラクションについては考えており、もしかしたらスノーボードの実装はそのうちあるかもしれない、とのことだ。

最後に仏メディアJeux Onlineのインタビュー記事にMMORPGというジャンルそのものについて非常に興味深い質問があったので紹介する。Jeux Onlineによる質問は「第一世代/第二世代MMORPGのユーザーは高齢化しており、新しい世代はあまりMMORPGに興味がなさそうですが、MMORPGというジャンルの未来についてどう考えますか?」というもの。吉田Pによる回答を翻訳/要約するとこうだ。

『FFXIV』は、『World of Warcraft』から始まった第二世代MMORPG達の、最後に位置するゲームだと思っている。『FFXIV』は第二世代MMORPGの中では最新のゲームだと思っているが、同時にこの第二世代そのものが終わりに近づいているとも考えている。今あるようなMMORPGの、大型新作が出ることはもうないだろう。そして、たとえ『FFXIV』
がこのまま3つ4つとさらに拡張を重ねていっても、第三世代のMMORPGへと進化することはないと考えている。『FFXIV』はあくまで第二世代のMMORPGとして完璧な形を目指していくのみだ。第三世代の誕生には、今までのMMORPGのデザインとは根本的に違ったアプローチが必要だろう。

世界に色々なエンタメやスマートデバイスが溢れている今、「腰を据えてじっくり遊ぶ」時間を確保することが難しいというのはどの世代のプレイヤーにも共通する。世界的に人気なMOBAジャンルやバトルロイヤルゲームは、すぐ遊べてすぐ辞められるという点で優れているし、現代のゲーミングスタイルにも適している。新世代のMMORPGが意識しなければいけない点はここだろう。(翻訳ここまで)

『FFXIV』は「新規プレイヤーの追いつきやすさ」が徹底的に整備されているゲームだ。パッチごとにスタートラインが揃えられているため、どのタイミングで始めたプレイヤーでも(MMORPGとしては)比較的苦労なく最前線のコンテンツや装備に触れることができる。休止したプレイヤーであっても同様だ。パッチ直後に新コンテンツを存分に楽しみ、少し離れて他のゲームで遊び、新しく始めたフレンドに付き合うために戻ってきて、また少し休止して、パッチ前に復帰する。そんな「小刻みな楽しみ方」を許してくれるシステムが用意されている。吉田Pは『FFXIV』は新世代のMMORPGになることはないと語ったが、氏が新世代MMORPGの必要条件として語った「現代的な時間の使い方に適したゲームデザイン」の考えは、『FFXIV』の中で確かに息づいていると感じられる。時間の関係や、他のゲームに触れていてしばらく『FFXIV』から離れていた方も、今回の拡張を機にこれからも進化していくエオルゼアの世界に舞い戻ってみてはいかがだろうか。